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第25話 VSメタルスライム―後編―

 メタルスライムが再びこちらに近付いてくる。

 また盾で受け止めようかと思ったがメタルスライムの姿を見て止めた。


「チッ」


 舌打ちと共に放った炎の弾丸が体をトゲトゲにしたメタルスライムを吹き飛ばす。

 高い防御力によってダメージを受けることはないみたいだが、衝撃波を受けてしまうようで吹き飛ばすことには成功した。


「防御力が高いっていうことは、そのまま攻撃力も高いっていうことだよな」


 おそらくメタルスライムの高い防御力は金属化することによって得られたものだろう。

 さらに、その金属の硬度は既存の金属とは比べ物にならない。


「金属化が厄介だな」


 どういうわけか金属化させていても速く動くことはできるみたいだ。

 そんな硬い物体とぶつかれば無事では済まされない。


「金属化……」


 ショウが自分の手を見つめながらブツブツと言っている。


「って……!」


 仲間のことを気にしているような場合ではない。


 トゲトゲした状態では走り辛いのかプルプルと動く液体状に戻ると敵と見做した俺の方へ向かってくる。


 動くメタルスライムに対応できるよう武器を手甲へと変える。

 メタルスライムへ攻撃するようなことはせず、体当たりをしてきたメタルスライムの体を右腕の手甲で受け止める。


「痛ってぇ!」


 右手にへばり付いた状態のままトゲを体から生やしたメタルスライムに手甲を貫いて俺の手に突き刺さる。


 このまま左手で潰してやろうかと考えていると、


「そのまま掴んでいてくれ!」


 メタルスライムの後ろに回り込んだショウに声を掛けられた。


 痛いのを我慢するだけだ。

 右手だけでなく左手も使ってスライムの体を掴むと左手の方にもトゲを突き刺して来た。


 だけど、それが何だ?

 仲間から頼まれた仕事ぐらいは完璧に遂げてやる。


「捕まえたぞ」


 ここからどうするのかは聞いていない。

 後はショウに任せるしかない。


「錬金!」


 メタルスライムの体に触れながら魔法を発動させる。

 その魔法は金属の形を変える魔法。


 金属――メタルスライムの体にも有効だ。


 果たして、錬金魔法を受けた金属の体を持つスライムは直方体の置物へと圧縮させられ自分では体を動かせないように固定させられてしまった。


「これで、自分で動くことはできなくなっただろ」


 倒せない相手でもこうして動きを封じてしまえば対処は可能となる。


「こいつはどうする?」

「放置しよう。僕たちは止めを差す方法が分からない」

「そうだな」


 いずれステータスを上げた時に用事があれば倒すのもいいかもしれない。


「もう、帰りましょう……」


 結局、魔法陣を手に入れることはできなかったが、スライムの核という収穫は得られた。


「こいつは収納したらどれぐらい強くなれるんだろう」


 考えるものの倒す手段がないので止めた。

 動けないメタルスライムの横をハルナとレイを連れて通り過ぎる。


「ひっ!」


 突然、ハルナが悲鳴を上げた。


「なんか動いた」


 動けないはずのメタルスライムが動いた。


「やっぱり動いている」

「俺には動いているように見えないけど」


 その場でただ固まっているだけだ。


「そっちからじゃ分からないわよ」


 ハルナに言われて正面? へと移動する。


 そこではたしかにメタルスライムが動いていた。


 というよりも……


「何かを伝えようとしている?」


 メタルスライムは体の一部を必死に動かして文字を浮かび上がらせようとしているようだった。

 喋れないだけに独自に得たコミュニケーション能力かもしれない。


「君に敵意はある?」


 ショウが尋ねると体の一部を浮かび上がらせると横に何度も動かす。

 敵対するつもりはないみたいだ。


「分かった。君の体を元に戻すけど、いきなり襲ってくるようなことはしないでね」


 再びメタルスライムに触れて錬金魔法を解除する。

 体の自由を取り戻したメタルスライムがショウの周りを動き回る。

 なんというかスライムなんだけど犬みたいな奴だな。


「それで、何を言いたかったのかな?」


 自分の用事を思い出したメタルスライムが体を大きくして板状になると先ほどよりも文字を連ねて行く。


 要約するとメタルスライムの出生に関する話だった。

 メタルスライムは本に描かれていたように錬金術師の造り出した最高傑作の作品だった。

 だが、その作品の完成させる為に培養槽にスライムを入れて改造を施したところで完成を見届ける前に寿命が尽きて死んでしまった。


 培養槽の中にいた頃から自我があったらしく完成を見届けることができなかった主の無念そうな顔が頭から離れなかったらしい。


 自分は最強のスライムだ。

 志半ばに倒れてしまった主の為にもその事を証明しようと思った。


 しかし、外に出ることは怖かった。

 メタルスライムの自我は培養槽に入れられたところからしかなかった。それ以前はどこで何をしていたのか全く覚えていない。


 だから盗み目的で館へとやって来た人々に戦いを挑んだ。

 幸い、誰も寄り付かなくなった館にやって来る相手はそれなりの戦闘力を備えている者ばかりで相手に苦労することはなかった。


 どうやら、それは他のスライムたちも同じみたいで防衛目的で戦っているのではなく自分の強さを証明する為に戦いを挑んでいるのだということが分かった。


「君の造られた理由は分かった。それで、僕たちに何をして欲しいのかな?」


 ――連れてって。


 一人で館の外へ行くのは怖いが、自分を負かした相手となら一緒に行けると思ったらしい。

 キラキラした目線をショウへと向けている。

 ステータス的には俺の方が善戦していたが、メタルスライムにとって止めを差したのはショウということで主にショウを選んだみたいだ。


「どうしよう……」


 だから困ったような目でこっちを見ないでほしい。

 俺は母子家庭だからペットなんて飼ったことがない。


「あの……たしか街中にも魔物の姿がありましたよね?」

「ああ、調教師(テイマー)調教(テイム)した魔物だな」


 人を襲う魔物だが、魔物の中には稀ではあるが人と心を通わせてペットのように付き従う魔物がいる。

 そういった魔物は、街に入る時に従魔として登録すれば街に入ることができると話に聞いた覚えがある。


 メタルスライムも従魔として連れて行こうということなんだろうけど……


「銀色のスライムとか目立たないか?」


 今は薄暗い屋内だから分かりにくいかもしれないが、光を反射して迷惑になるかもしれない。

 そんな事を考えているとメタルスライムが怒り出した。


「悪かったよ」


 謝ると満足したのか動かしていた体を鎮める。

 本当に魔物のくせに喜怒哀楽がはっきりしているな。


「飼い主にはショウを指名しているみたいだし、お前がしっかりと飼うことができるって言うなら連れて行けよ」

「じゃあ、一緒に行こう」


 メタルスライムはよほど嬉しいのか体を左右に動かすとショウの右腕に飛び付く。


「うわっ!」


 突然の事態にメタルスライムを払い落とそうとするが、メタルスライムはすぐにショウの手首に巻き付くと腕輪の形になる。

 元の質量がどこに行ったのかというレベルの変化だが、これがファンタジーということだろう。


「もしかして普段は目立つからこの姿になっているっていうこと?」


 メタルスライムから肯定の返事が返って来る。


 しかし、これは魔法陣以上にいい物を手に入れた。


 ショウもそれが分かっているのか早速錬金魔法を使用する。


「剣」


 腕輪だったメタルスライムが剣へと姿を変える。

 その後、槍、斧、ガントレット、盾へと自在に形を変化させることができた。


「これは凄いな」


 メタルスライムの性能に感心するが、否定の返事が返って来る。


 話を要約するとメタルスライム単独ではトゲを生やしたりするのが精一杯で複雑な形への変化は無理だったらしい。

 錬金魔法と組み合わさることによってメタルスライムは自在に形を変える能力を手に入れた。


 最強のスライムを目指すスライムは新しい能力を手に入れたことに大喜びしていた。


 そして、新しい能力を手に入れたのはショウも同じだ。

 メタルスライムの形態変化は普通の金属を変化させるよりも速くすることができるみたいで戦闘において自在に形を変えられる武器を手に入れた。


以上ショウのパワーアップイベントでした。

次回からレアアイテム獲得の為に動き出します。

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― 新着の感想 ―
[一言] このスライムの知能高い! 凄くいい相棒を得ましたね。 問題は、やる気も試行錯誤もしない女二人。。。
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