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第21話 魔法陣

 収納魔法の魔法陣を見せただけでバルガさんがなぜそこまで驚いているのか分からない。


「そこまで驚くようなことですか?」


 俺たちも全員が持っているアイテムボックス。

 アイテムボックスはおそらく収納魔法の魔法陣が付与された魔法道具だろう。数も多くあるみたいだし、収納魔法の魔法陣はありふれた物なのだろう。


 だが、現実は全く違った。


「収納魔法の付与ができる錬金術師はほとんどいないんだ」

「どうしてですか?」

「まず、収納魔法の魔法陣を出せた奴が何百年も前に1人いただけなんだ。で、そいつが死ぬ前に魔法陣の知識を譲り受けた錬金術師が知識を独占しちまった」


 アイテムボックスから得られる利益は莫大だ。

 知識の独占ができたなら利益の独占も可能となる。


 その錬金術師は、収納魔法の魔法陣についてはたった1人の弟子にしか知識を授けなかったらしく、今でもアイテムボックスの作製ができるのはたった数人の錬金術師だけらしい。


 アイテムボックスはありふれた物だったが、収納魔法の魔法陣について非常に価値のある物だった。


「どうして魔法陣を使える人が何百年もの間いなかったんですか?」

「色々と可能性は考えられるが、最も有力なのは収納魔法の使い手のレベルが低いことだ」


 収納魔法に戦闘能力はない。

 そのため雑魚を倒してある程度までレベルを上げることは可能でも強い魔物を倒せなければ至れないレベルまで上げることはできない。


 ただし、レベルの低さは関係ない。

 なぜなら魔法陣を出せるようになった俺のレベルは未だに3だ。

 どちらかと言うとレベルよりもステータスの方が影響しているのだろう。


「これを譲れば……いや、まずはショウのテストをしてみましょう」

「おう、そうだな」


 そこまで価値のある物なら魔法陣を譲ればバルガさんの知っている魔法陣をいくつか譲ってもらうことができないかと思ったが、あることが気になってしまったので止めた。


「覚えると言っても凄まじく複雑なんだけど……」


 魔法陣を出す時にイメージしたりする必要がないので記憶することを考えていなかったが、ショウが言うように魔法陣の幾何模様は複雑で俺の魔法陣は円の内側に見たこともない文字で7列描かれていた。

 はっきり言って魔法陣を出せる俺でも覚えろと言われても無理だ。


「はは、魔法陣を記憶するなんて無理な話だ。しかもその魔法陣はかなり高度だ。俺にだって記憶するのは不可能だ」

「じゃあ、どうするんですか?」

「錬金魔法を魔法陣に向かって使ってみろ」

「こう……?」


 俺の翳した魔法陣に触れながら錬金魔法に必要な魔力を流す。

 すると魔法陣が触れていた手に吸い込まれるように消えて行く。


「わっ……!」


 急に自分の手に吸収されたことに驚いて声を上げた。

 特に変わった様子もお互いにないし、危険性はないだろう。


「それで、お前の錬金魔法は魔法陣を習得した」

「い、今ので?」

「試しに今目にした魔法陣をイメージしながら錬金魔法を使ってみろ」

「はい……」


 手を正面に掲げて錬金魔法を使ってみると正面に魔法陣が出現した。

 たぶん、俺と同じ魔法陣だ。

 魔法陣が複雑すぎて同じだと断言できない。


「錬金術師が出した魔法陣だとそのまま魔法を使うことはできないが、それを道具に付与することができれば魔法陣に込められた魔法が使えるようになる。ただし、錬金術師の技量や相性のせいで元々よりは劣化してしまうのが欠点だな」


 収納魔法の場合は、俺がそのまま使った時ほど拡張されていないとかそんなところかな?


「さ、さっき俺がやったみたいに魔法陣を自分の造った腕輪に当ててみろ」


 ショウが掲げていた手をゆっくり動かして魔法陣を腕輪の方へと持って行く。

 腕輪と魔法陣が重なり合うと最初は拒絶するようにバチッと弾かれたような感覚があったが、ショウが力を込めると押し込まれるように魔法陣が腕輪の中に消えて行った。


 どうやら成功したみたいだ。


「最初に弾かれたのは金属の性質的に受け入れなかったからなんだが、魔力を多く消費すると受け入れてくれるのか?」


 バルガさんの今の光景に対して呟きながら考えていた。


 たしかに魔力量も影響しているのかもしれないが、俺は1つの可能性に思い当っていた。


 異世界から召喚されたことによって得た俺の収納魔法はあまりに特殊過ぎる。

 同じように異世界から召喚されたことで得られた錬金魔法が特殊な可能性がある。正確に知る為には色々とテストをしなければならないが、今は可能性があるというだけで十分だ。


「う~ん……本当に収納魔法が付与されたのかな?」

「なら、試しに収納してみればいいだろ」

「それもそうですね」


 俺の懸念を確かめる意味でもちょうどいい。


 レッドドラゴンの爪を収納から取り出してショウの造った腕輪に収納させることにした。

 腕輪を装着しながら魔力を流すとレッドドラゴンの爪が消えた。

 どうやら腕輪の中に亜空間が形成されており、きちんと収納されたみたいだ。


「どうやら本当にアイテムボックスを造ることができたみたいだな」


 腕輪型の収納魔法が付与された魔法道具でも性能的には同じに見えるからアイテムボックスと呼んでも問題ないらしい。


 ただ、本当に性能が同じか確認しなくてはならない。


「ステータスを確認できるか?」

「え、あれ……?」


 ステータスを確認させてみるとやっぱり上昇しているみたいだ。

 そして、その事実を口にすることがどれほど危険なことなのか分かったみたいで口を噤んでくれた。


「本当にアイテムボックスを造れるみたいだし、俺にもその魔法陣を譲ってくれないか? 魔法陣は教える側が許可しないと転写されない仕組みになっているから許可をもらう必要があるんだ」


 それなら力尽くで奪われる心配もなさそうだ。


「残念ですけど、この収納魔法を流通させるのはあまりに危険すぎます」

「……危険?」


 収納容量の限界が分からないからどこまでステータスを上げることができるのか分からないが、素材を収納して装備するだけで簡単にステータスを上げることのできる魔法道具。

 こんな物を造ることができると知られるだけで狙われることになるのは目に見えている。

 バルガさんの為にも造れないようにしておいた方がいい。


「なるほどな。そんな危険な代物なら俺も知らない方がいい」

「けれど、こいつが造れたことは僕たちにはプラスになる」


 俺もそれは考えていた。

 同じようにレッドドラゴンの鱗を渡して腕輪に変形してもらうと俺の収納魔法が付与されたアイテムボックスへと変化させ、そのままレッドドラゴンの爪を収納させる。


「ハルナ、レイ!」

「え……」


 部屋の隅で本を読んでいた2人にアイテムボックスを投げ渡す。

 突然投げ渡されたことに驚いて落としそうになる2人だったが、どうにか掴むと自分の左腕に填める。


「うそ……」

「これ、本当にわたしたちのステータスですか?」


 異世界から召喚された影響で一般よりも上昇値が高いおかげで高めのステータスだったが、それを大きく上回るステータスを手に入れていた。


「劣化している影響で俺が収納した時ほどステータスが上昇していないけど、全てのステータスが500も上昇していれば十分だろ」


 ステータス的にはベテランのゼンさんたちと変わらない。

 さすがにドラゴンのような例外的な力を持っている相手には及ばないが、大抵の相手には渡り合えるだけの力を手に入れた。あとは、手に入れた力を制御する術を身に付けてもらう必要があるが、それは追々身に付けてもらう。


「ははっ、レベル3でそれだけの力を持っている奴もいないぞ」

「レッドドラゴンを倒したことで一気にレベルの方も上がっていればそれなりに箔が付いたんですけどね」


 素材を次々に収納して行ったせいで経験値が少なくなってしまったのか俺のレベルは上がらなかった。

 とはいえ、経験値を得て普通にレベルを上げる以上の成果があったのだから問題視していない。


「さすがに収納魔法の魔法陣を譲ることはできませんが、なにか新しい魔法陣を手に入れる方法はありませんか?」


 今のままだと収納魔法が付与された魔法道具しか造れない。


「俺もさすがに無償でポンポン貴重な知識を渡すわけにはいかないから渡すことはできないが、ありそうな場所を教えてやる」

「本当ですか!」


 強くなれるかもしれないと知ったショウが声を上げる。


 メテカルから南東へ行った場所にある村。その外れに大きな屋敷があり、1年前まではある錬金術師が住んでいたが、今は誰も住んでいないので放置された屋敷があるとのことだ。

 誰も住んでいないが、魔法陣は書物に記された物からでも得ることができるので錬金術師が遺した本があるかもしれないとのことだ。


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― 新着の感想 ―
「誰も住んでいないが、魔法陣は書物に記された物からでも得ることができるので錬金術師が遺した本があるかもしれないとのことだ」 そんな本が残っているかもしれないのに、誰も探しに行かないってことは無いよね…
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