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第34話 無限複製

 俺の【収納魔法】は特別らしく、段階を経て様々な能力を獲得した。


 第1段階――能力反映。

 第2段階――非物質収納。

 第3段階――間接収納。

 第4段階――遠隔収納。


 どれも既存の【収納魔法】にはない能力らしい。

 その辺りは異世界から召喚されて得たスキルだ、ということが影響しているのだろう。


 せっかく手に入れた力は使いこなさなければ意味がない。

 この特殊な力を使って元の世界へ戻る。


 そして、行き着いた到達点が――


「第5段階――無限複製」


 【収納魔法】の魔法陣が空中に浮かび上がり、ガトリング砲が魔法陣から砲身だけを晒す。

 戦艦に搭載されていたリアルなガトリング砲で毎分3000~4500発(1秒間で50~75発)を撃つことが可能だ。


 たった一つでも強力な兵器。

 それが10個も姿を現す。


「おいおい、これって……」


 工藤先輩が顔を強張らせながらガトリング砲を見ている。

 異世界人たちは姿を現した兵器がガトリング砲だとは分からず、空中に浮いた奇妙な兵器に目を奪われていた。

 対してガトリング砲を知っている人たちは姿を現した凶悪な兵器がこれから巻き起こす悲劇を想像して顔を引きつらせていた。


「では、パーティーを始めましょうか」


 空中に浮いた魔法陣が移動してガトリング砲が俺の正面に整列する。

 こうして魔法陣ごと移動させてしまえば重量の観点から方向の変更が難しい兵器も簡単に扱うことができる。


「――ファイア」


 ガトリング砲から一斉に弾丸が放たれる。

 1秒間に500発以上の弾丸が放たれているため、こちらへ向かって来ていた眷属たちは為す術もなく肉の塊……細切れにされて地面に落とされている。

 整列させて撃っているため逃げ場などどこにもない。


 本来ならばガトリング砲の後ろなど薬莢が飛び出すなどして危険なのだが、そういった危険性は全て収納の中で行われている。外側のこちらには薬莢どころか衝撃すら到達していない。


 1分、2分と撃ち続ける。


「チッ、どれだけいるんだよ」


 ちぎり飛ばされた人を踏み越えて新たな眷属が森から飛び出してきた。


 ――グオオオォォォォォン!


 現れたのは牛の頭を持つ魔物――ミノタウロス。かなりの巨体で人の3倍以上もあるおかげで迫力が満点だ。

 ちょっと角度と向きを調整して蜂の巣にしよう。


 気付いたらミノタウロスは消えていなくなっていた。

 おそらく眷属化して強力になっていたのだろうが、銃弾の前では意味のない強化だった。


「おい!」


 後ろで工藤先輩が叫んだ。

 衝撃は来ないけど、銃弾を撃つ音までは消していなかったから話をする為には大声を出す必要がある。


「何ですか!?」

「何発用意しているんだよ!」


 何発……?


「1発だけですよ」

「いやいや……! さっきから何万発撃っているんだよ!?」


 必要性を感じなかったため持って来る時は、銃弾を1発とガトリング砲を1門しか拝借してこなかった。


「これが俺の【収納魔法】の到達点――【無限複製】の能力です」

「無限、複製……」

「効果は、収納してある物を消費して複製すること」


 もちろん複製する度に魔力を消費する。

 普通の【収納魔法】の使い手はステータスが低く、たとえ【無限複製】を何らかの方法で手にしたとしても、あっという間に魔力切れを起こしてしまう。


 だが、俺はステータスが人間離れしている。

 それに収納してある聖剣などから魔力を引き出すことができる。


 無限に使い放題な魔力を消費して弾丸と砲門を無限に複製することができる。


「――悪いな。こっちは無限に弾丸を撃ち続けることができるんだよ」


 ミンチになっていく眷属たち。

 その時、業を煮やしたのかミノタウロスの5体が固まって飛び出してきた。


「引き千切れな」


 弾丸の集中砲火を浴びて1体がミンチになる。

 さすがにミノタウロスは硬いのか貫通することはなく、ミンチにされてしまったミノタウロスを盾にして進んできた。


「じゃあ、次はこれ」


 ミサイルが飛び出す。

 最後まで盾として使うミノタウロスだったが、盾にされたミノタウロスとミサイルが衝突した瞬間、周囲に爆発をまき散らしてミノタウロスの半身を焼いていた。


 その時、森の奥の方で一つの影が飛び出してきた。


「……ん、ドラゴンか」


 飛び出してきたのは水色の鱗を持つドラゴン。

 水色の鱗を持つドラゴンは、空を飛ぶことに長けたスカイドラゴンだと聞いたことがある。


「ドラゴンと言えどミサイルには敵わないんだよ」


 寄り道したところでドラゴンと遭遇し、ミサイルの集中砲火を浴びせたところ悲鳴を上げるだけで死んでいったドラゴンたち。


 同じようにミサイルを発射する。

 だが、スカイドラゴンに到達する直前に見えない壁に押し戻されたように速さを失って地面へと落ちていく。


「マ、マズイ……!」


 ミサイルの威力を十分に分かっている工藤先輩が逃げ出そうとしている。

 あのまま地面に落ちるようなことがあれば大惨事を引き起こしかねない。


「大丈夫ですよ」


 落ちる先に魔法陣を出現させてミサイルを回収する。

 一度でも魔法陣を出入りした物なら離れた場所からでも収納することが可能だ。


「さて、ミサイルが届かないとなると面倒だな」


 空を自由に飛び回るドラゴン。

 ミサイルの方が速いので捉えるのは簡単なのだが、風の障壁に押し戻されて当てるのは難しい。


 ――ギャアァァァァァ!


 雄叫びと共に翼を動かすと鋭い斬撃が地上へ向けて放たれる。


「か、回避……!」


 セルゲイが指示を出して逃れようとしているけど、とてもじゃないけど間に合うような距離じゃない。


「それも貰おうか」


 斬撃の先に魔法陣を出す。

 それだけで全ての遠距離攻撃は無力化することができる。


「普通はどうやって飛び回っているドラゴンを討伐するんですか?」

「あ、ああ……そうだな。弓矢や魔法によってダメージを蓄積させ、地上へ下りてきたところを一気に攻撃する。それぐらいだ」


 セルゲイに訊ねたところ随分と単純な攻略方法が聞けた。

 ダメージを翼に与えることで空を飛び続けることをできなくする。


 ……有効な方法だな。


「じゃあ、俺もその方法に倣うことにするか」

「え……」


 セルゲイが呆然としている間に魔法陣をすぐ横に出現させる。

 少しばかり傾けて上空にいるスカイドラゴンへ照準を合わせる。


 直後、光の線が迸るとスカイドラゴンの翼を貫く。

 とある国で開発されていたレーザー兵器だ。残念ながらエネルギー面でのコストと本体が大きくなってしまったため今のところは実用に至っていないのだが、コストや運用問題の全てを【収納魔法】で解決させてもらった。


 片翼を失ったスカイドラゴンが落ちてきたので弾丸を雨のように浴びせる。翼を失ってしまったことによる動揺から風が弱まっていたおかげでガトリング砲で仕留めることができた。


「しっかし……いつまで攻撃していればいいんだ」


 ガトリング砲を撃ちながら前進する。

 正面にあるガトリング砲も一緒に移動する。さすがにガトリング砲の前に出るような真似はしない。


 ダダダダダダダダダダッ――!


 撃ち続けていると奇妙な影が目に映る。

 それは、銃弾を回避しながら間を縫うように駆け抜けていた。


「き、きさま……!」


 誰であろう四天王のビルツだ。


 吸血鬼であるビルツの身体能力は眷属とは比べ物にならない。銃弾の間を駆け抜けることも難しくない。

 それに多少掠ったり、何発か貫通したところですぐに再生してしまう。


 俺の姿がはっきり見えるところまで接近したところでビルツが飛び掛かってくる。

 ガトリング砲の操作を止め、拳を突き出すとお互いの拳が衝突する。


「むぅ……」


 唸るビルツ。

 自分の攻撃に自信があったのだろう。


 そうこうしている間にビルツの顔面へ空いていた拳を叩き込む。


「へ、ぶぅ、ぐふぅ……」


 何度もバウンドしながら離れていく。


「吸血鬼って言うのはこの程度の実力なのか?」

「なんだと!?」

「だとしたら楽に倒せそうだ」


 わざとらしく肩を回して余裕があるところを見せる。

 それがビルツの怒りを買ってしまったらしい。


「ふん。吸血鬼が最も強くなるのは夜だ。こんな真昼間ではない」


 むしろ太陽が昇っている真昼間に動ける方がこちらのイメージ的にはあり得ない。


「――夜が来る(ナイト)


 瞬間、太陽の光は闇によって閉ざされ、月明かりが満ちるようになる。

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