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第3話 装備確認

 冒険者ギルドで冒険者登録を済ませて簡単な説明を受けている内に時間はいつの間にか夕方になっていた。

 夕方になる頃には、依頼を受けて外に出ていた多くの冒険者がギルドに帰って来て成果の報告をし、報酬を受け取っていた。

 これからの時間は混む、ということで受付嬢――シャーリィさんにお勧めの宿を聞いてからギルドを後にする。


 10分ほど歩いてオススメの宿に着いた。


「ここが新人冒険者の懐事情にも優しい宿屋?」

「みたいだな」


 後ろでハルナとショウが宿屋を見上げながら言っていた。

 オススメの宿屋は、ボロいわけではないのだが日本のホテルのような宿泊施設に比べるとグレードが下がる。ホテルというよりは、民宿に近い。


「どうする? もっといい場所に行くことはできるけど」


 シャーリィさんは田舎から出てきたばかりであるはずの俺たちの懐事情を考慮して安い宿屋を紹介してくれたのだろうが、俺たちには世間体を気にしなければ使えるお金があった。

 ただ、収入以上の宿屋に泊まり続けるのは目立つ。


「……大丈夫です」

「まあ、そう言うなら」


 扉を開けるとカウンターにいたおばさんが出迎えてくれた。


「いらっしゃい。食事かい? それとも宿泊かい?」

「宿泊でお願いします」

「部屋はどうする?」

「そうですね――」


 なんとなく俺が先頭にいたから交渉をしていたが、部屋割りなどについては特に決めていなかったことを思い出した。

 だけど、さすがに男女が同じ部屋で寝泊まりするのは問題だろう。


「2人部屋を2つ――」

「4人部屋を1つお願いします」

「――え?」


 俺の話に割り込んで来たのは大人しいレイだ。


「4人部屋を1つだね。それなら朝食と夕食付きで1人あたり銀貨2枚だね」


 収納に入っていた銀貨を8枚取り出して俺が全員分の宿泊代を支払う。

 いや、自分たちの宿泊代だからそれぞれ自分の分を支払ってもらってもよかったんだけど、俺が渡していたお金は金貨だ。さすがに銀貨の100倍の価値を持つ金貨で4人ともが支払いをするのはお釣りを考えて躊躇われた。


「あたしは宿の女将をしているリナだ。これからよろしくね」


 宿泊代を支払うと部屋まで案内されて部屋の鍵を受け取る。


「疲れた~」


 部屋には簡素なベッドが4つ置かれていた。

 誰がどのベッドを使うのか決めたわけではないが、適当にベッドに座る。


 ショウはベッドに座ると制服の上着を脱ぎ捨てており、ハルナはベッドに倒れ込んで足を伸ばしていた。その体勢だとスカートの中身とかが見えそうになるから止めてほしいんだけど。で、4人部屋を提案したレイは呆然としていた。


「本当に4人部屋で良かったの?」

「さすがに1人部屋にいるのは怖いですし、2人部屋でハルナにいつまでも頼っているのも悪いです。それに4人でこれからは行動するなら一緒にいた方がいいのでは?」


 たしかにその通りではあるのだが、同じ宿屋にいるのだからどちらかの部屋に集まるだけでも十分なはずだった。

 それに気になるのはレイの瞳だ。

 どうにも信頼されすぎている気がする。

 異世界なんて場所に連れて来られて帰る方法もない。帰りたい彼女にとっては俺という存在が唯一の頼れる存在なのかもしれない。


「しばらくは収入も少ないことだし、これでいいか」


 目立ちたくない俺たちとしては私生活から気を付けなくてはならない。


「それで、これから具体的にどうするの?」


 冒険者としての身分は手に入れた。


「とりあえず当面の目標としてはランクアップだ」


 情報を集めるにしてもそれなりの信頼がなければ伝手を手に入れることすら難しい。

 冒険者で信頼のある者と言えば、やはり実績を評価されてランクを上げた冒険者だ。当然のようにランクの高い者ほど難易度の高い依頼を斡旋される。逆にランクが低ければ誰でもできるような雑務しかない。


「とはいえ、明日は服の調達から始めよう」

「服?」


 ショウたちが自分の服装を見る。

 というか男女で分かれているものの、制服なんだから全員が同じ物を着ている。

 はっきり言って異世界では目立つ。


「必要経費だから金は俺が出すよ」

「いいの?」

「大丈夫だろ」


 宝物庫から貰って来た金貨はまだ大量にあるため多少の投資は問題なかった。


「それから装備品だな」


 あらためて3人に支給された装備品を確認する。

 ショウには槍。

 ハルナには短剣とナイフ。

 レイにはハンマー。

 しかも品質はそれほど良くない。せいぜい倒せてもスライムが限界だろう。


「武器については今のままでいいか?」

「武器も買うのか?」

「それでもいいけど……」


 部屋の中央にはテーブルが置かれていた。おそらく部屋の中で食事をする時の為に4人で使用しても狭くならないよう大きめの物が用意されていたのだろう。

 おかげで収納していた槍を何本も出しても問題ない。


「これは……?」

「宝物庫にあった物だ」


 武器の良し悪しなんて分からない。

 なので、適当に何本か貰って来た槍だ。


「どれか使いたい物でもあるか?」

「本当にもらってもいいの?」


 ショウの言葉に頷く。

 俺が収納していても肥やしにするか売るかの二択しかない。

 装備なんてメインに使用する物と予備にいくつか持っていれば十分だ。


 俺の場合は、宝物庫にあった扱いやすそうなロングソード1本をメインに剣を何本か持っていればいい。後は、負担にもなっていないので異なる武器が1つずつあればいい。普通は、重たくて持ち運べないのだろうが、収納魔法があるおかげでいくつ持っていても問題なかった。


 ショウが何本もの槍を前にして悩んでいる。

 やがて銀色の槍を手に取ると部屋の中なので自重して軽く回すだけに留める。


「うん。これかな」

「だったら、それはやるよ」


 銀色の槍を受け取ると自分の使っていたベッドの横に立て掛ける。

 元々支給された槍は予備として使ってもらえばいいだろう。


 収納から出した槍を回収すると同じように短剣やナイフを取り出す。


「……これ!」


 ショウが自分の武器を選ぶ姿を見ていたハルナは、自分も気に入った武器を選んでいいのだと取り出された短剣の中から一目で気に入った短剣を手に取っていた。

 ハルナが選んだ短剣は、柄が金色で先端には蒼い宝石が取り付けられた短剣だった。他は地味な物が多いので目立つ物を選んだ、という感じだ。


「いいのか、それで?」

「使ってみないとなんとも言えないかな」


 ハルナの言う通りだ。


「問題はハンマーの方なんだよな……」


 短剣をしまうと手の中に巨大なハンマーを出現させる。


「え……?」


 人の頭よりも大きなハンマーを見てレイが言葉を失っていた。

 自分がこれを使うのか?

 他にはないのか?


「実は、宝物庫の中には今見せた以外にもたくさんの武具があったんだけど……」


 色々と見ながら気になった物を手に取って行く感じだったため全てを持ってきたわけではない。

 中でもハンマーそのものが宝物庫には少なかったため持ってきたのは巨大なハンマーのみだった。同行することになるレイがハンマーを扱うと分かっていればもっと違うハンマーも持ってきた。


「これ、扱えるか?」


 異世界に召喚されたことによってステータスを持ち、筋力も増強されたおかげで巨大なハンマーも持てるが今のステータスでは扱えると言えるほどではない。

 それに冒険者ギルドで見せてもらったレイのステータスは筋力が一番低かった。巨大なハンマーを持たせるのは酷だろう。


「他に私でも扱えそうな武器はありますか?」

「そうだな……」


 槍や短剣以外で様々な武器を見せる。

 剣、弓、杖、ハルバート、ガントレット……中には刀なんて物まであった。おそらく過去に日本から召喚された勇者が広めた物だろう。


 色々と取り出してレイが手に取った物が、


「これにします」


 メイスだった。

 先端が鈍器となっており、相手に叩き付けることで粉々にする。


「気に入ったならプレゼントするよ」


 取り出した様々な武器を回収する。


 と、全ての武器を収納したところで部屋のドアがノックされた。


「夕食の準備ができたよ。食べたければ1階の食堂に下りておいで」


 扉の向こうからリナさんの声が聞こえる。

 お互いの顔を見ると食事をする為に1階へと下りて行く。


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