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Runner  作者: 如月 羽藺葉
10/10

~第10走~

 中学三年間を通して歩きなれた帰り道の途中、夕焼けを背にこちらに向かいながら歩いてくる一人の青年がいた。その見た目は身長は目測でおおよそ170cm、服の上から分かるほどの細身でありながら決して不健康には見えず、むしろ鍛えられているようにさえ見えた。その上、その歩き方には無駄がなく洗礼された動きそのものであった。職業病に近い陸上部特有の他人の肉体観察は、その青年が運動部であることだけでなく同業者、すなわち陸上関係者であることを認識させていた。

 おそらく向こうも同じことを感じ取ったのだろう、お互いに視線を交わしながら歩道の上ですれ違う、その瞬間その青年は

 「森が丘高校2年生の陸上部長距離選手の三芳 夢さん」とつぶやいた

流石にこちらの名前を出されて反応しないのはおかしな話ですれ違いざまに青年の方に振り向き

 「お前誰だ?」と問いかける

 「そんな警戒しないでください」

とその青年は少し可笑しそうに顔に微笑を浮かべながらこちらを見る

 「初めまして、来年度から光陵高校に転校する悠木 優斗です。お察しの通り夢さんと同じで陸上部の長距離です。」

 「高校生の一線級の選手に覚えてもらえるなんて光栄やな」

 「もしかして僕のことご存じなんですか?」

 「そりゃあ、自分今年度の総体で大会記録更新して優勝したんやろ、知らんはずがないやん」

 「それもそうですね」

 「なんや、腹立つな」

 「そうですか、失礼しました。」

 「なんで、わざわざ俺に声かけたんや?なんか用か?」

 「いえ、新しく住む町を見て回ってたら見かけたので。」

 「そうか、なら俺は行くで」

 「来年度の総体期待期待していますね。こう見えても夢先輩のこと高く評価してるんで」

 「宣戦布告ってことやな」

 「ええまあ」

 「舞華、帰るで」

 「う、うん」

 「失望させないでくださいね」ボソッ

少しの気味の悪さと、悠木選手に対する対抗心を覚えつつその場を去る。そして彼が放った最後の言葉も聞き逃しはしなかった。

 

 そして、その日の夜先日と同様に俺の部屋で、今後の計画を練りながら宣戦布告してきた悠木選手について話をしていた。

 「篠部高校一年長距離 悠木 優斗選手、高校総体一年で初出場で初優勝、そして何より大会記録を23年ぶりに更新。」

 「こいつ、関東の選手やから本選まで出てこやんと思ってたけど、こっちに引っ越してくるんか」

 「まだ、4か月ほどあるけどでも来年度の総体は関西は荒れるよね」

 「ああ、ある意味本選出場枠が一つつぶれたようなもんやからな」

 「でもまあ、あんなに挑発されたんだ勝ちにいくしかねえ」

 「だよね」

そうして今日も日が暮れていく。

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