200文字話集『イルカ帝国』
200文字六作目です。
イルカ帝国
収録
01.イルカ帝国
02.戦争はありません
03.人喰病
04.戦車洗車
05.海豚野郎
06.最下層民
07.廃棄カツ
08.人生のワンタイムパスワード
09.がんうつじさつ
10.イルカ人間
01.イルカ帝国
昔、蘇我入鹿という人がいたらしい。
詳しくは知らないけど、歴史の授業で習っただけだから。
ただ、なんでも天皇家を凌ぐほどの権力を持っていて色々と好き勝手にしたために、殺されたらしい。しかも天皇の御前で殺されたらしい。
で、
おそらく、現代に生きる人は、皆この人の事を悪い奴だと思っているんだろう。
でも、
結果的に、この人のおかげで大化の改新とかが出来たわけで、それが今現在の世界まで続いているわけだから・・・。
02.戦争はありません
第三次世界大戦が始まった。
しかし、とある国は「わが国に戦争はありません」と言った。
世界が戦争をするのにそんな事を言えば、格好の標的になるというのに、その国はそう言った。
それが戦争を放棄した我が国民の総意だから、と。
案の定、戦争が始まると、その国の領土はどんどんと他国に奪われた。
労働力として捕虜にもなった。慰安婦にもされた。
兵器の実験台にもされた。
ただ、それでも、その国は最後まで戦争を行わなかった。
03.人喰病
エボラ熱もデング熱もジカ熱も含めて、全ての病気がこの世の中から駆逐された。
その年『何もかもに効く薬』というのが開発されて、その開発者がノーベル化学賞を受賞した為だ。
そのため、世界はその分だけ平和になった。
全てとはいかないが、でも人々に笑顔が増えた。
しかし、
その薬には、副作用があった。
誰かを愛すると、その相手を食べたくなってしまうという副作用。
全ての人が、その薬を飲んでいた。
一人残らず、全ての人が。
04.戦車洗車
「いい天気だなあ」
ガソリンスタンドでバイトしている僕が、暇にかまけて空なんぞを眺めていると、
キュロロロロロ、
という音がして、見ると場内に戦車が入ってくるところだった。
「おーい」
戦車の上の所が開き、そこから男の人が出てきて僕の事を呼んだ。
「はい」
「戦車、洗車できる?」
戦車の人が聞いた。
「できますよ」
僕は答えた。
「さすが大洗市のガススタだな」
男の人は言った。
まあ、ガルパンの経済効果っていうやつですよ。
05.海豚野郎
R-18の分野において、プレイの際、相手の事を『豚野郎』って言う事がある。
あと調教したりされたりした後、調教した側が、鳴け、って言って、調教された側が、ぶひぶひって言ったりすることがある。
で、
そろそろ、飽きてきた。
だからその日は「海豚野郎って呼んでください」ってお願いした。
そしたら、すごかった。
快楽が。
マジで。
鳴けっていわれて、キュウキュウ鳴いたんだけど、それも良かった。
エクスタシーがすごかった。
06.最下層民
ある所に最下層民がいた。
最下層民はいつも蔑まれて、人々から嫌われていた。
ただ最下層民は、何があっても別に何も感じていないようだった。それに表情の変化が乏しくて、誰も最下層民が何を考えているのか分からなかった。
でも、
最下層民の内部はマグマのように燃え滾っていた。
最下層民は最下層民だから、何時死んだってかまわなかった。
だからきっと、どれほど残酷な事でも、やるとなったら最下層民は躊躇なんてしないだろう。
07.廃棄カツ
最近、廃棄カツの再利用のニュースが流行っている。
世間でも結構騒いでいる。
「何してくれてんだこの野郎!豚野郎!!」
ってな具合で騒いでいる。
まあ、そうだろう。わかる。
ただ、不思議なのは、
その問題が発覚してから、
「お腹痛い」
って言う人が増えた事だ。
そのニュースが流れる前は、別に誰もお腹の痛みなんて訴えなかった気がする。
でもそう考えると、そのニュースが、人々のお腹を痛めつけているという事になるのではない?
08.人生のワンタイムパスワード
「死ぬう!」
男は道の真ん中で叫んでいました。
なぜなら、その男に向かって暴走ダンプカーが迫って来ていたからです。
「死んじゃうう!」
すると突然、男の目の前に天使が現れました。
天使は言いました。
「ワンタイムパスワード使う?」
って。
「・・・」
「使う?」
意味が分かりませんでしたが、男は、
「使う!」
と叫んでいました。
すると、男の脇をダンプが通過していきました。
でも、反対側から来たタンクローリーに轢かれました。
09.がんうつじさつ
パチンコ屋に行くと、その日スロットエリアのジャグラーの台の横に、見慣れぬ機体があった。
「ここへどうぞ」
店員に案内されるまま、俺はそこに座ってその機体で打った。
その台は、左から、
「癌」
「欝」
「自殺」
と鳴った。
俺は気分が悪くなって、違う台に移ろうとしたが、店員が俺の事を他の台に移らせないようにしてきた。
「何をする貴様」
俺は叫んだ。
「でも、お客様は生活保護で打ってるんですよね?」
店員は笑ってそう言った。
10.イルカ人間
イルカを食べないという文化が世界の共通認識になったため、イルカは増えて、やがて海にはイルカしかいなくなった。
そうなるとイルカは賢いので、人間型に進化して、海から陸に上がり、イルカを食べないようにしてきた人間達を殺し始めた。
「ばーかばーか」
言いながらイルカ人間は老若男女関係なく殺していった。
ただ、そんなイルカ人間にも弱点はあった。
和歌山県人だ。
結局、イルカ人間は最後まで和歌山県には侵略できなかった。
※ちなみにタイトル、並びに空白は文字数には含みません。
最後の話は、本当にそうなればいいのにって思います。




