捕獲してクエスト
「おい聞いたかよ?
なんでもラプラスの連中と朱の冒険者が
例のヤバいやつの捕獲に挑戦するみたいなんだってさ。」
二級冒険者パーティー『サイリスタ』のリーダーを務めているその男の耳は、先ほどギルドホールから帰ってきた仲間の何気ない与太話をシッカリと聞き取ってしまった。
「おい、ジミー。
ヤバいやつってーと、あの60層で確認されたっつーコカトリスのことか?
その情報はついさっき仕入れてきた情報なのか?」
「あ、兄貴。お疲れっす!
いやね、丁度俺が頼まれてたチャターリングの材料集めの依頼を受注してきたところだったんですけどね、
そんとき来てたんですよ、例の赤いのが。
気になって暫く様子を見てたんすけどね、するとどういう訳かあのいけ好かない連中が彼奴に話しかけたんですよ。」
ジミーは話したくてウズウズしていたのか、えらく饒舌になって話をまくしたてる。
「それでコレは何か一波乱起きるに違いない!
と思ってたら案の定奴ら、あろう事かあの朱のイカレ野郎に例の捕獲を持ちかけやがった。
信じられねえ!
持ちかけたあいつらもイカレてやがるぜ!!」
「それで、あの野郎はその話受けたのか?」
「それはもう、二つ返事で『かしこまりー』って言ってたんすよ。
ふざけやがって・・・あのまま奴らも飲まれちまえや良いんだ!」
「おい、トミー達をそう言う風に言うのはやめろ。
彼奴らは勇敢だった。
ただ願わくば、飲まれちまったのがあいつらじゃ無くて最初からあのクソ連中だったら少しはこの溜飲も下がってくれただろう。」
「ちげえねえっす!」
俺はこの街で生まれて、育ち、此処に墓を建てるその日までこの場所で暮らしていくつもりだが、だからこの街のことは誰よりも知っているし、この街を愛している。
偶にはくだら無いイザコザが起こって馬鹿をやる連中もいるがそれでも慣れ親しんだ空気は俺を強く縛り付けるように離れがたい安心感を感じさせている。
誰だって馬鹿をしてそのうち成長して大きくなっていくんだ。
俺だって昔は馬鹿やって街の連中にドヤされたこともあるが、今じゃ立派な二級冒険者様だ。
ご近所連中にはこの街の顔役として親しまれてきた。
助け合いの精神でお互い支え合ってこの街を大きくしてきたんだ、
持ちつ持たれつってやつよ。
だから馬鹿をやってもいい。
お前が馬鹿をやるのも成長をする為の一つの表現だと笑って許してやる。
勿論ちゃんと悪さはいけねぇと叱ってやるのが大人の務めだが、一度くらいは大失敗してその身に中身のある信念を持って貰えればなと思う。
たから一度だけならこの俺が大目に見てやるから、二回目は無いようにシッカリと学習させてやるのさ。
少し馬鹿っぽしところが目立つかもしれ無いが、それでも俺たちはその中でかけがえの無いモノを確かに掴み取ってきたんだ。
例えば、そうだな。
俺の仲間も昔は馬鹿やってよく喧嘩して競い合って罵り合って仲直りしてまた酒場で殴り合って。
それでも此処までちゃんと来れたのは一重に俺たち全員が居たからだと思っている。
俺たちは一人じゃ何もでき無い馬鹿の集まりかもしれ無いが、全員いれば困難が待ち受ける危険なダンジョンにだって臆すること無く入ることが出来るんだ。
俺ができ無いことが出来るスゲェ仲間がいる。
街の連中が出来ねぇ事が出来るスゲェ俺たちがいる。
でも街には俺たちが作る事ができない、うまい酒が飲めてメシがうまい、
夜でも明るく賑やかな場所があって、俺たちが作れない強力な装備を作って俺たちの冒険を支えてくれる連中がいる。
だから、なんて言うかな?
俺たちはスゲェがそれほどでも無い。
俺たちぐらいスゲェ街の連中と酒が待っているから俺たちもスゲェ感じになれるんだよ。
だから、分かるか?
実はこの街全体がスゲェ所で、
俺たちはそのスゲェ所を作る事のできるちっぽけな一人の人間でしか無いんだよ?
あ、難しくてよくわから無い??
俺もだよチクショー!!
ああ、酒だ酒!
アンジー、お代わり持って来てくれ!
― 丁度ホームのカウンターで何かしらをグラスに注いでいた小柄の女性に酒を要求する。
「ああもう、リーダーそれ明日みんなで飲む予定のお酒じゃ無いですか。
ズルいですよ。」
「構わん構わん、明日の分はさっきジミーの奴に取り寄せてもらったからな!
お前も味見して行くか?」
「もう・・・あんまり飲み過ぎて二日酔いになっても知りませんからね!」
ああ畜生、これが飲まずにやっていられるか!
お前たちはこんなにも付き合いがいのある連中なのに、
近頃はこの街にもいけ好か無い余所者連中が幅を利かせ始めてきた。
朱の冒険者はいつかこの街から出て行って貰うとして、更に気に入らない連中も出てきたな。
奴らは最近力をつけていたラプラスとかいうグループ。
実力もそうだかまだまだ青いガキが先人の教えを守らず抜け抜けと昇級しているのが気に入らねえ。
ダンジョンってのは挑戦の場所なんだよ。
挑むも結構
慎重に進んで先を拝むだけでもいい。
到達地点なんて自分がどのように一歩を踏み出してどうなったかの積み重ねでしかないんだ。
はっきり言ってギルドで得る数字なんてものはお飾りに過ぎねぇのさ。
先を急いで数字だけ稼いだ所で、
それまでに積み上げてきた密度が違うんじゃお話にならねぇ。
そうやって無駄に飛び出てくる杭は普通は自然にポッキリ折れて、
運が良ければそこからもう一回のチャンスが天から与えられて、
今度はシッカリと太く大きく育つ事が出来るんだ。
だと言うのに奴らときたら、今まで力任せに強引に、最低限のルールだけを守って昇級して俺たちの隣に並んできた。
だがそんなモノに意味は無いんだよ。
ギルドの等級なんてモノはたかが数字でしかないがな、その数字は本来確かな経験と技術、知識から裏付けされた実力を表す偏差値みたいなものだ。
決して自分の力を過信してはいけない。
その結果の中で正しい実力と己の成長としてその数値が生きてくるんだ。
良い子のお勉強みたいな中身のない点数だけになっちまったら何の意味を持た無いんだよ。
だからお前たちは先に進めない。
今までは運が良かっただけじゃねえか。
その証拠に、キチンと分かってる冒険者ならあの朱の冒険者を捕獲なんぞに誘ったりしねぇぞ?
朱の野郎も大概だが、それでも最低限の道理を分かっている。
むしろ今俺の腸を煮え繰り返しているのはてめぇらだよ、ラプラス。
道理が分かっていながら、それでも
真っ赤に染まっちまったあいつを招き入れる。
そんなお花畑のおつむなら、てめぇらの運は尽きたぜ、ラプラス。
経験もねえのに、知識もねえのに。
たいした実力もねえのに粋がって、のさばって、
勝手にくたばる馬鹿野郎が近頃は多すぎる。
これじゃあいつが、
あまりにも報われなさすぎる・・・
『サイリスタ』のリーダーを務める大男、ロルフ・シュナイダーは黄色い昼の陽光差し込む窓辺の
ディスプレイキャビネットに飾られた額縁を見やる
「あれから丁度一年になる。
だと言うのに、まだ少しも変える事ができねえよ、俺は・・・」
― 額縁の中で穏やかな微笑みを浮かべているであろう彼女の面差しは
のどかな初夏の一陣の風で翻ったカーテンに隠されている。
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―――――――――
―――
日が明けた次の日の事・・・
「えーと、第60層未調査区画『イの一番』の分かれ道より先で発見されたコカトリスの捕獲の依頼を
引き受けますパーティはラプラスの3名と加入前の1名・・・」
リーダー 2級冒険者 シオン=アルマーク
補佐官 2級冒険者 セシル=クラッド
及び 2級冒険者 イオン=アルマーク
未所属 3級冒険者 ドルフ・サイヴァリア
― 手元の契約書兼承諾書の内容から顔を上げ、受付嬢はその一言で確認を取る。
「以上の4名でお間違いないですね?」
軽装に身を包んだ青年、シオン=アルマークは思わず驚きの声を上げた。
「え、君って実は三級冒険者だったの?!
二つ名持ちだからてっきり一級ぐらいなのかと思っちゃったよ。」
デスヨネ~
なんだよ~、俺が三級だったらイケナイのかよぉ・・・
人様を勝手に値踏みしてるだなんてイヤな人たちねン。
ワシが三級がイカンのか?
「えっ、もしかして一級の冒険者に寄生するつもりだったの?
うわ~・・・ショックダワー。
ソンナ『コシヌケ』ノヨウナ真似ヲスル人タチダッタナンテ・・・
ゲンメツシチャウナー」
少しばかし心に傷を負った俺はそうつぶやき、
その言葉を否定するように首を横に振り、意外そうな顔を浮かべていた彼女は語る。
「違うわよ。
なんて言うのかしら、意外?というか・・・
あれだけ早くイオンちゃんを地上に送り届けられるんだから、
経験豊富な一級クラスでもおかしくないかな?って。」
ローブを纏って如何にも魔女といった如何のセシル=クラッドの言葉に、
兄よりもさらに身軽な軽装をし、動きやすさを重視した服装の妹もコクコクと頷いている。
まあ無理もないであろう。
この町では大よそ2000人を切っている程度にはいる三級程度の冒険者で
二級からも噂の種になる様な冒険者はそうはいないだろう。
実際に3級で50層以降まで到達できうる人材もそう多くないしな。
ましてや、俺は背中が痒くなるような二つ名持ち。
誰が言い始めたかは知らないその名は様々な憶測や畏怖、事実に基づいて意味のある言葉で形作られた。
尚『回帰する朱の冒険者』の異名には『コシヌケである』といった別称も付属するとかしないとか。
ええと、なんでも何でも・・・
― 朱の冒険者だって?バカバカしい。
どうせどっかの貴族のボンボンが酔狂で冒険者の真似事をして武勇伝を語っているに違いない。
大方、ヤツが上級の冒険者たちに依頼をしてお守りをしてもらっているんだろう。
よくある話じゃないか。下らねぇ ―
といった声や
― 回帰する朱ね。
なんでも停滞期の危険なダンジョンの奥深くに潜っていっても
必ずまた冒険者ギルドの受付ホールで顔を合わせるっていう噂の。
大方、潜ったふりして10層のビルバーグの酒場辺りで遊んでるだけなんじゃない?
といった声も上がっている。
そんな疑惑満載なワタクシめをこのまま本当に60層なんかに連れてっても大丈夫でしょうかね?
もう行く気満々ですけども。
「まあ改めて言うのもなんだけど自己紹介しとくわ。
春は曙だか朱の冒険者だかよくわからない仇名で呼ばれたくないお年頃・・・
三級冒険者のドルフ・サイヴァリアっつーケチなもので~す。
あんまし期待しないで下さ~い。
でも足は引っ張らないつもりなんでその辺は心配しなくてもよろしくてよ?」
「うーん、まあ君が言うんなら大丈夫なんだろう。
それに身に着けてる装備も中々のもんだしね。」
あ、やっぱりぃー?
分かっちゃう?わかっちゃうかHAHA!
何を隠そう、今俺が纏っている装備一式は52層以上の階層で採れた最新技術満載の最先端。
裏地に『ベルトーロの玉繭』を解いて紡績された、なめらかで肌触りが良く
それでいて保温性、速乾性、透湿性、耐久性に優れた最高品質の素材を使用。
表地には防火性、防汚性、耐衝撃性、撥水性や靭性などなどに富んだ『ゴルゴーンの皮』を用いて製作されたレザーアーマーを着用している。
上から着込んだフード付きマントも一級品で、これらの装備には最新技術を持ち込んだ珍しいギミック満載なのだが、説明が長くなるので端折る。
気になるヤツは製作所に張り付けてあるチラシでも見てきな坊や。
ちょっと癖がある装具なのだが、軽くて重宝なのよ~
高いお金を払って作ってもらったのよ、製作所に~高いお金を払ってね。
うらやましい?ねぇねぇ羨ましい?
「そうは言っても今から私たちは60層なんてとても深いところに向かうのよ?
大丈夫??」
まあまんて言ってもあいつらも2級冒険者。
チッ、なかなかいいもん持ってるじゃないか、姉ちゃん。
まあ俺の方がすごいけどな。
「はあ、まあ大丈夫だと思いますよ?
55層ぐらいまではしょっちゅう潜ってるんで。」
そこで何故か頷く妹氏。
いや、お前は俺がどこまで潜れるかなんて知らんだろ。
「ほら、イオンも頷いていることだし問題はないね。」
「まあ!それなら安心ねっ」
いや、それで納得するのはおかしいと思うの。
なんだよ、安心って。
大丈夫かなこいつら?
ちょっと不安になってきた。
などなどとギルドホールにあるダンジョンへ延びる道の入り口の
大きな門構えをくぐろうとしたところ・・・
「おいおい、こりゃあ噂の『回帰する朱』の野郎じゃないか?
まじかよ、今度はラプラスの連中にお守りしてもらうことにしたのか。」
「最近姿を見せないからいい加減懲りたかベヒモスの餌にでもされたのかと思っちまったぜ!」
俄かに騒がしくなる、往来の最中で
ガラの悪い、こわーいお兄さんたちに絡まれちゃいましたとさ。
くわばらくわばら。
ラプラスの一行も足を止め、険しい目つきでその顔触れを眺める。
そうするうちにゲラゲラと下品な笑い声を上げながら取り巻きが集まり始めて・・・
「うわー、こんなのが噂の回帰する朱の冒険者・・・
まだガキじゃないか。
それにしても本当だったんだな、朱はコシヌケって話。」
「えーっ!
本当に上のランクの人にお守りしてもらいながら依頼を達成した気になってたんですか?
そんなので得意げになるなんて恥ずかしくないんですかぁ~?
ねぇねぇ、あなた本当に冒険者なの?
護衛のように上手の人にくっついて行く噂通りのコシヌケなんですね♪
と~~~っても、カッコワルイデスヨ~」
ラプラスは警戒態勢に
入り口を固めたはた迷惑な連中に距離を取り、身構える。
辺りは一触即発の雰囲気で、緊迫した空気が漂っている。
ところで俺ら、とっても邪魔で目立ってるんじゃね?
「がはははははぁーッ!
おびえて声も出ませんってか?
今なら泣いて十万インセント渡せば見逃してやってもいいぜ?
こ・し・ぬ・け・クン?」
コシヌケ・・・
コシヌケだって・・・?
おい、貴様。
この俺をあろうことかチキン野郎と罵るなんてな。
そんな喧嘩を売る様な真似をして、どうなるか分かってるんだろうな?
俺がマクフライさんなら、テメェらは馬糞に埋もれる5秒前だぜ?
いいぜ、相手になってや ―
「はい、そうでぇ~す。
今話題のコシギンチャクはこの私です!
アドベンチャラーズにおべんちゃらーずな俺クンまじかっこ悪い(笑)」
― らないっ!
― くふふふふ・・・
はーっはははははははは!
「ぶはは~、とうとうビビッて認めやがったかコイツ!
みっともね~恥ずかしいー
ブフッ、ぶははははへあははあはーッ!」
破顔するミスターオリンピアの不快な声が耳障り。
腹立つなあ、もう。
別に俺は寄生して潜った覚えはねぇぜ?
だから否定は簡単なんですけど?
でもさ、そんなのわざわざ顔赤くして否定するわけないだろう?面倒くさい。
だって俺の心は40代のオッサン。
目の前の若い連中のしょうもない冗談に付き合ってやる器量ぐらい見せてやらないといけないよな?
でも目の前のこいつらは俺の精神年齢とドッコイドッコイな外見年齢してるがな。
それでも脳みそは小学生並みだし別にええかのう。
良かったな、俺がええかげんな人間で。
馬糞まみれはまぬがれたぞ?
ゲラゲラと
ぎゃはぎゃはと
重い空気は払しょくされたのか
両者が馬鹿みたいに笑いあう、そんな感じ。
「ですからぁ
二級冒険者(自称)さまぁ
どうか卑しいボクチンを皆様のボウケンに連れてってくんなんし(黒笑)」
「??・・・は?!」
素っ頓狂な声を上げて、固まるマッチョなガイ
「だってあなたは確か・・・
たまに耳にする今最も二級に近いパーチーの親方()のドミ・・・ドミノ倒し何とかさんでしたよね?
噂はかねがね聞いているよ、たぶん。聞き流してるけど。」
確かそうだったよな?
覚えてませんぞよ?
それよりも、鼻がムズムズするぞッ!
天井を仰ぎ見れば・・・
はーっくしゅんッ!
ふう、なんか詰まってた何かが取れた気分だぜ。
さてさて…ちょっと待ってね今思い出すから。
ところでチミ、なんか黒子増えてない?
うわっ?!そんな汚い顔に鼻くそをつけて格好良くなろうだなんて、コイツできるな!
ぷぷぷ・・・えんがちょっ
「野郎、ぶっ殺してやる!」
あ、怒っちゃいました~ ☆彡
大乱闘が始まるヨカーン。
ヤツが今まさに殴り掛かろうかというその時ッ!
「クペッ?!」
「「「お頭!?」」」
ふいに体が浮いて加速感。
あ~ちょっとタンマ!
引っ張らんといて引っ張らんといて!
ラプラスのシオン=アルマークを筆頭に、膝からヤツの下品な表情をさらに崩しかかりに行って
そのままの速度で包囲網を突破。
両手に花でダンジョンに連れ去られるワタクシ。
「ち、クソッ
野郎ども、あの忌々しいガキどもを一匹残らず捕らえて屈服して
魔物の餌にしてやるッ、追いかけるぞ!」
後方から、坑道に鳴り響く。
野太い男たちのムサイ声。
うん、全然そそらないよね。
「ちょっと~、何であんな挑発するような真似しちゃうのよ!
こんな追いかけっこ聞いてなーい!」
「あははははー、やっぱり君は面白い人だねっ!
これからも一緒に冒険しようよ。」
「・・・・」
ラプラスの連中はこれから危険なダンジョンの奥に進んでいくというのに
まるでピクニックにでも行くかのようなノリで、陽気な雰囲気で先に突き進んでいくのだった。
ところで、そろそろ下ろしてくれません?
―――――
―――――
―――――
「お頭、あいつら生意気にもコカトリスの捕獲に挑むみたいですぜ?
ということは暫くダンジョンから戻ってこない可能性がありやす。」
「ああ、どうやらそのようだな・・・」
今、最も二級に近いといわれている冒険者パーティ
『ラスターク』のリーダーをしている ドミニク・スター は
少し切った口の中の血を含んだ唾を道端に飛ばしながら悪態をついた。
「クソッ・・・
糞、糞、糞、糞、糞、クソ野郎どもがぁッ!
あの腐った***から出たカスみたいな連中が、
この俺様を差し置いて・・・いちいち眼前にしゃしゃり出てくるのが我慢ならねぇんだよ!
そんな馬の糞にも劣るようなゴミ屑連中が・・・俺様の顔を・・・・・・
がぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあああああ‶あ‶あ‶―――――――ッ!!」
「お頭の顔に泥を塗りやがって…あいつら」
「街に前って来た暁にはボロカスにてやりやしょう!」
あ?街に帰ってきた時だァ・・・?
気に入らねぇ、絶対殺す。
絶対つぶす。
誰も満足な死に方が出来ねぇような、糞みたいな状態にして最高に絶望した状態を維持しながら
みじめに土の味を噛みしめながら死んでいくようにしてやりたい・・・
「今からだ・・・」
「へ?」
「決まってるだろう?
今から俺たちも行くんだよ、60層の・・・コカトリスのところまでナァ」
まずは徹底的にやつらの邪魔をして、ギルド内でこき下ろされるように扱わせて・・・
ああ、やつらの無様な泣き顔が目に浮かんでくるぜ!
せっかくだからあの女は俺の女にしてやろう。
目の前で自分の男が惨めに息を引き取っていく瞬間に女の中で**してやる・・・
ア‶ア‶・・・待ち遠しいぜ、その瞬間がよぉ。
不気味にゆがんだ口元に、血を含んだ涎が滴れ落ちる時
彼らの集団は雄たけびを上げて挙兵する―