命が惜しけりゃ 身包み全部置いていきな
「グヘヘ、お嬢ちゃん。
命が惜しけりゃ、ちゃんと言う通りにしな。」
「なっ!?
あれだけ支払って足りないだなんて・・・
一体、なにが望みだと言うの?」
「お金が足りないとなりゃあ、
着ているモノを脱いでいって貰うしが無いだろう?
勿論、脱いでもらわなくても結構なんだぜぇ?
ここで冷たく息を引き取って死んでしまいたいのならな!」
そこはリンドの街の入り口から伸びるダンション『ホルボシスの鉱脈』。
その第58層の坑道の何処かの外れで、今一人の女冒険者が野蛮な盗賊に追い剥ぎを・・・
うん、何を隠そう盗賊っぽいのはこの俺だ。
俺は約二週間ぶりのお仕事を手掛けようとしていた。
別に、盗賊に転職したとかではない。
久々の客は未だ若い、色っぽいグラマラスなお姉さんだったので、思わず盗賊みたいなセリフをほざきたくなる衝動に駆られてしまったのだ。
財布の中身は足りなかったけど、着るもの頂いたら丁度足りそうだなーと思ったら、つい口が滑って。
色っぽいお姉さんは、恥ずかしそうに自ら防具を脱ぎ捨てるとー
「うぅ・・・これで満足かしら?」
下着姿の彼女は顔を赤らめながら言う。
早速俺は、彼女の脱ぎ捨てた品々の査定に移る。
やはり一人でそれなりに深い場所まで潜るだけの事はあり、防具や武器もなかなかの一品で、装飾品も精巧な仕上がりの一級品だ。
やはり何処に行こうと女性はお洒落に余念が無いらしい。
俺が色々と無遠慮に彼女の見回り品を物色している間、特に反抗的な態度や行動もせずに、モジモジしながらこちらを見つめていた。
「・・・もしかして、まだ足り無いとでも言うつもりかしら?」
そんな言葉に少しイタズラ心も湧いて、この状況をエンジョイしようかとも思ったのだが、
後々面倒ごとをこさえるのも面倒だし、
設定した金額分が見立て通りにカッチシ回収できたので、
特に勿体振る必要も無いと思い、帰還が可能な意思を示す。
そう言えば、お外はそろそろお昼で、
お腹も空いて来たので、せっかくだから一緒にランチの誘いでもしようかしら?
助けてあげた上に食事を振舞って差し上げるなんて俺は紳士だな。
惚れても良いんだぜ?
「ふん、命拾いしたなぁ嬢ちゃん。約束だがらキッチリ帰してやー」
そう、言い切る前に彼女は息荒く、
言葉を被せてこうのたまった。
「はぁ、はぁ・・・
そう、やっぱり足りないと言うのね・・・
『助けて欲しいなら俺の女になれ』とでも言うつもりかしら?」
「あ、お客さん?
必要金額分を納入頂けましたので街までお帰し出来ますがー」
またも言い切れずー
「ハァハァ・・・、それとも
『ちゃんと帰してやるよ、朝までタップリ愉しませて貰ってからな!』
とでも言うのかしら?
人の弱みに付け込んで、私を手篭めにしようとしているのね!」
えー、俺そんなことは一言も言ってないよ・・・。
本日の仕事が舞い込んだのは、人が通る望みは薄いであろう
ダンション奥深くの薄暗い場所。
彼女のいた場所は坑道の脇道を少し進んだ所で細い鉱脈の足元にポッカリと空いた穴の中。
通行中に足場が崩落したらしく、運良く無傷で穴の底に降り立つも、天に拝むは小さな縦穴。
登ろうとすれど岩壁の上の方に行くにつれて、穴にかけてまで返しが付いたように、
切り立った滑らかな表面が松明の火の光に照らし出される。
何時から其処で過ごすことになったのかは知ら無いが、静かな穴の中で一人、孤独と恐怖でオカシクなったのかもしれない。
こちらの声は聞こえないのか幻覚でも見ているかのように勝手に話が進んで行く。
「お金の次は防具、
防具の次は下着・・・。
・・・そうやって要求をエスカレートさせて次はどうするつもり?
私をどうシたいの?
私をこんな格好にして辱めて、次はどうスルつもり?」
彼女の頭の中の俺という人物は、救世主様か、窮地に駆けつけた王子様から始まり、
弱みを握った御代官様にでも転じてしまったのか、
こちらにその気は無いのに、女の最後の砦まで自ら脱ぎ去ろうとしている。
やだわ、この子結構ノリノリだった・・・
ダンジョンの中なので周りは暗く、彼女を照らし出すモノは揺らめく松明だけ。
暖色の燈火が腰が抜けたかのようにペタンと、腰を落として座る彼女の姿を照らす。
此処が街の宿屋の中ならムーディなのだが、硬い土の上では些か情緒に欠ける。
そんな事は御構い無しと、彼女は頭の中の悪い俺に指図されているのか、インナーのトップスの留め金に手をかけ始め・・・
おーっと、コレは大物です。
大物がその姿を見せようとしています。
とても立派な獲物が今、暗い穴の奥底で自分の大切なモノを曝け出す様です。
今年一番の大物が来るか?
来てしまうのか〜?
大物かー
そういや腹減ったな。
あーっと、ここで番組の途中ですが、マグロの刺身が食べたくなってきた俺は、目の前のお魚に興味を無くしてしまいました!
そんな訳で、なんかスイッチ入ってるお姉様を無視して広場に御帰ししましょう!
ストリートで突然脱ぎだすグラマーな美人ストリッパー現るってな。
明日からどんな顔して街の中を歩くんだろうね〜?
うふふふー。
名残惜しくも魅惑の美人を丁重に『例のアレ』で街までお返しする。
「本当に下着を渡せば安全に街まで帰れるのよね?
分かったわ・・・でもこれ以上は私・・・
え?まだ私の大切なモノを奪って無いですって?
だ、ダメよ!幾ら何でもソレだけはー
歪んで消える街の広場の風景の只中てボンヤリと聞こえる愉快なお言葉。
広場の人間の注目が集まる中、遂にその肩紐が下りたところで景色は混ざり合って消えて元々の穴の底の光景に戻っていた。
お昼の賑わいの中で突然現れた半裸の女性の運命やいかに?
続きはリンドの街の広場でご覧下さい。
・・・今度また此処に落ちるマヌケがいる可能性も考えて定期的に来てみようか?なんてな。
当然自分も入ったは良いが、この見事な落とし穴空間から抜け出す術を持って居ないので、
『例のソレ』を使って最寄りの階層に転移する。
今広場に戻るとトリップショーの真っ最中なので適当に20階層あたりまでトんでプラプラ帰りながら時間潰しましょうかね〜?
そう考えながら、俺は自分が持つ特殊な力を発動する。
景色は歪み始め、捻れた風景が像を結び始める。
いや〜、勿体無いことしちゃったかな?
でも結構お腹空いてるしな、
先ず食べない事には元気出ないからさ、イロイロと。
などなど物思いに更けている間に既に目的の20層。
さーて、流石に20分ぐらいあれば逃げて居なくなるか、攫われて居なくなるかしてるハズだよね?
それまでお預けか〜。
お腹減ったな〜。
新鮮なお刺身食べたくなったな〜。
イキのいい奴をグサッと挿しちゃってマグロにしてしまいたい。
血が滴る程新鮮なの捌いたらご飯が三杯イケる。
マヨネーズをブチまけて油が乗ったトロトロのトロに変えたい。
そう言う意味でもさっきみたいなのは踊り食いになりそうだからどの道今食べたいモノじゃ無いんだよなー。
それにリンドの街は結構海から遠いからお魚の方もあまり食べられないんだけどさ〜。
久しぶりに食べたいな、山葵も。
この世界じゃ食べられ無いモノだらけだな、全く。
そんな事を考えながら、ダンションの暗い闇に向かって歩みを進めた。
ー
ーーー
ーーーーー
「よく聞け、サイバー。
お主は先ほど死んでしまった。」
なんか白っぽい黒い空間で、イケメンっぽい美人にそんな事を宣われた。
言ってる事がアベコベで意味不明だが、そう言う他に言いようが無い。
自分でも良く分かっていないのだ。
「何と無くお主と話しとうなり、
何と無く我の気まぐれで殺してしまって、
何と無く蘇らせたくなったけど、今の世に其れを成す事は何と無く面倒なので、
何と無く異世界で暮らして貰おうと思ふ。
ついでに何と無く便利な能力を使えるようにしておく。」
よく分からない誰かはそう言って手か足か、耳か目か、
腹が背中かを、
かざすか差し出すか曝け出すかして、俺の方に向けて言う。
「其れでは、何と無く適当にその世界で暮らして行け。」
次の瞬間か暫くしてからなのかは知らないまま、意識を失った。
ーーーーー
ーーー
ー
頭に何か強い衝撃を感じ、目を覚ました。
「ようこそおいで下さいました。
『回帰する朱の冒険者』
いえ、敢えて申し上げます。
私の全てを奪い去った仇敵ー!」
あ゛ぁ゛ー
あたまがガンガンするんじゃー!
なんで、
こんなに、
頭が、
痛いのか?
「失礼ながら姫様。
この者には仕事を為して頂きたく。
御乱心はお控え願いたい。」
何処からか、
聞こえる、
人の、
声?
俺は、
確か、
20層に、
到着した、
直後、
何者かに、
囲い込まれ、
襲われて、
頭を?
一体、誰が、何のために?
私怨か?、心当たり、多過ぎるな、
今頃、みんな、あの世、だけど。
頭に、顔を、顰め、ながらも、見渡すは、
豪華絢爛の、見覚えのある、城の中。
嗚呼、そういう事か。
あたまいてー。
「なんでよ!
コイツはエスタニアを、
私の養母を殺した仇!
ただの冒険者風情殺させてくれても良いじゃない!
お願い・・・殺させて!」
「なりません!姫様。
この者は人の身で『神の御業』を成す神の申し子。
人の手で害成せば立ち所に厄災が降りかかる事と申し上げます。
尚害なすと申されれば、かの者はたちまち行方をくらましてしまいましょう。」
「貴様、『神の御業』などとほざきおったか?
神の力は神聖な物。
人の成せる所業にあらず。
ましてやこんな小童如きが神の生き写しと申すのであれば、直ちにその首を斬りとばしてくれるわ!」
お礼参りかと思いきや、テンプレ騎士共は俺に仕事がさせたいのか?
それが勝手に内輪揉めとはな。
人様拉致しておいて自分勝手も良いところだ。
丁度、俺を取りおせえていた下っ端兵士二人も狼狽え始めていたのでこれ幸いと跳ね除けてお休みして貰う。
突然の展開に面倒臭くなった俺は、直ぐさま行方を晦ませるべく、『俺のチカラ』を発動する。
確か、20層に転移した時に囲われて襲いかかって来たのか?奴ら??
となると、他も抑えられてると考えた方が良い。
参ったね、こりゃ。
ひとまず、此処でも彼方でも何方でも無い場所になった段階で固定。
特異点にいる俺はこの状態で何人にも仇なす事は出来無い。
たとえ俺に握手を求めてきてもスルリと幽霊の如く躱してしまうだろう。
魔力がガンガン減るのであんまり長い事使え無いのが玉に瑕だが。
「待たれよ、サイバー殿
行き先は塞いでいる。
其方に逃げ場はない。
此方には害するつもりも無い。
話を聞いてみるのは如何かな?」
威厳がありそうなゴツイ鎧を纏いし騎士団長殿が俺に待ったをかける。
ほら、やっぱり根回しが既に済んでる。
逃げねーよ、クソ紳士。
「サイバだ馬鹿野郎。
いやいや、テンプレ騎士団の騎士団長殿ほどのお方ですからね〜、
『姫様の仰せのままにー!』
とか言いながら俺に誅を成す事など造作も、
と言うより真っ先に主人のご意向に沿って俺を討つべき立場の人間じゃ無いか、オマエ?」
「私の仕えしお方は閣下のみ。
ご息女の姫君に非ず。
それで納得頂けるかな?」
「それじゃあ、そこの『跳ね返りの家出少女』をさっさと下がらせてくれないですかね〜?
気が散って思わず他所にトばしちまいそうだ。」
さっきから上からキーキー煩いんだよ、クズ女。
「誰が跳ね返りよ!
いい?貴方のせいで私は・・・
ちょっと、離しなさいよ!」
言い切る前に騎士共に広間の外に連れ出される姫君。
へー、どうやら本当にあの娘には従わせる発言力も、仕える価値も無いらしい。
じゃあなんで俺殴られたんだろうな?
殴られ損じゃないか、腹立つ。
取り敢えず警戒する意味がなくなったので、『とっておき』の発動を中止する。
「久しぶりだな、『回帰する朱』、
サイバードールよ。」
奥の間から聞こえるのは、高いところで玉座にふんぞり返って此方を見下ろす壮年の男。
俺にあの跳ね返りを連れ戻すよう依頼した後ろ盾。
名を、皇帝『テオドシウス=グーテンベルク』二世である。
「此れは此れは皇帝陛下。
大変御見苦しい処をお見せ致しました。
不敬を御許しください。」
「よい、あれは此方の娘がそちに不届きを働いた故の事。
そう畏る出ない。」
「はっ、有り難き御高配」
状況から鑑みるに、以前何処からか話を聞きつけ仕事の依頼として登城させられたように、今度は向こうからムリこヤリこに勝手に上がり込ませたらしい。
「気絶させてつれ攫うなんて、
中々品の無い真似をなさるんですね〜。」
さ〜て、俺はなんでこの場に連れ込まれたのかね〜?
「まずはこの様な招き方をした非礼を詫びよう。
本来で有れば、以前のように入城すればよいものを、あの娘は勝手に騎士達の差配を握りあの様な結果となつてしまった。
あの娘にも困ったものだ」
「左様でありましたか。」
すまんかったで済ませるのはちょっと酷い話だよね〜。
帝だがら何も言えないけどさ。
「さて、此度この場に呼び立てたのは他でも無い、あの娘についてのことじゃ。」
「と、申しますと?」
まぁ、それぐらいしか接点無いものな。
「そちにはあの娘を始末して貰うべく呼び立てた。」
ぱ、ぱーどぅん?
「あれは以前の大戦で討たれた先代の妾の忘れ形見でな、
子をなす前に処刑された妾妻の、
本来存在しないハズの娘など居てもその所在の証明をしようも無く、
仮に証明してしまえば末代まで始末された家の生き残り。
直ぐに始末される運命の者。
我が処刑の折、特別に慈悲をくれてやり授かった幼き乳飲み子も気が付けば子を宿せる年となったか・・・。」
ー 待って、勝手に話進めないで?
笑い転げてしまいそうだから。
「然し、時の力は残酷なものであの娘には先代の血が大きく現れ、そしてその意思を継ぐものに登用される事となった。
結果、反対派の増長を許し、この5年間取り立てられ、遂には密航騒動を起こした訳だ。
もう容赦は許され無い。
あの娘を一度、殺して貰えないだろうか?」
ー ブフフフッ!
「ククク、ハーッハッハッハッハ!
頭大丈夫か皇帝閣下?
え、あの娘ヤッても良いの?
じゃあなんで街一つオシャカにしたの?
あの娘を敢えてオシャカにする為に港一つ潰したの?
オシャカにする為にオシャカにしたの??
そんでオシャカになったら悪魔復活の儀式でもして蘇らせでもするの?
そんで次は国でも滅ぼすの?
やべぇ、あの娘魔王になるかも知れない!
ブフッー!」
突然訳の分からない事を言われた俺は言われた事をそのまま頭の中で考えたら愉快痛快なお伽話が誕生した。
だって意味不明だったので、つい。
「まあそう訝しむのも可笑しくは無い。
たったらサッサと始末してしまう道もあったのだ。
だが我の妾妻の一人に子が宿らず、心の病を患っておった時にアイツはあの娘に心を奪われた。
まだ誰の愛を知らぬ無垢な子供に縋り、己の母としての姿を夢想して逃げた。
子を宿してやれなかった我の哀憫で結果として彼奴に慈悲をくれる結果となった。
だが慈悲をくれた事は大した問題では無い。
彼奴の思想にも筋が通っておった。
それをぶつけ合ってこうなったまでの事。
彼奴自体は憎悪の対象で無し、その娘もまた否定はせぬ。
何より此処まで育ててしまった責任もある。
よってあの娘には慈悲をやり、今一度唯の平民としての命を与えてやる事とする。」
ナニソレ
ナニソレ
ナニソレ〜?
バカ甘じゃん?
ゲロ甘じゃん?
クソ甘じゃん??
御慈悲御慈悲ってお前はアレか?
虫もコロせない純粋な少年かナニカなの?
募金箱に千円札入れて心が満たされる偽善者ナノ?
カミサマとやらにお祈りは済ませたか坊や?
「この半年間、あの娘の処刑の舞台を整えてきた。
と言っても実際に死んでもらう訳ではない。
手順は簡単。
娘の体に石を括り付けて縛り付け、
タンナシー湖の底に沈める。
民衆に処刑を晒す必要も無く、娘の出自を知る幾人かの者たちに死んだと思わせれば良い。
元々アレに価値は無い。
せいぜい見せしめとして反対派の気勢を研いでくれる程度だろう。
先代を象徴する形見か亡霊の類と言っても相違無い。
いわば私なりのケジメだな。
我が彼女が死んだと思い、手放し、忘れる為の。
一度拾った命だ。
それを何の意味も持たせないままののさばらせ、その無意味さを知り、今迄の行いに終始部を打つ為の口実が欲しいだけなのだよ、我輩は。」
よく分からない理由で世の中は廻るんだな、誰かの意思で。
本当、下らない。
それにー
「オイオイ、お言葉ですが〜皇帝陛下。
ワタクシ、未だ受託した覚えが無いんですが〜?
決まった風に話進め無いで貰えますぅ?」
こちとらお腹空かして出頭させられてるのよね。
お腹を満たす内容じゃ無いならお家に帰りたいんだけど?
すると、玉座に座る偉いオッサンは隣に控えていたスラリとした女性のお付きに言いつけ、奥の間から新たに家礼が遣わされる。
その家来の両手で保持された盆の上には何やら白く濁った掌大程の丸い宝石の様な物が載せられている
間違いない、アレは・・・
「報酬はコレで如何かな?」
「はいは〜い♪
つまりは池の中で待ち構えて、
後から沈んできたお転婆娘さんを適当な所に逃がしてやれば良いんですね〜?」
ああ、アッサリと承諾しちゃったな俺。
でも後悔して無いよ、欲しかったモノが手に入るってんなら。
「そうか。
ならいよいよイシウスへの義理は果たし、リドヴィアとの縁を別つ時が来たという事だな。
手筈はこれに記してある。
それの通りに事を運んで貰える事を願うが、最早我にとっては如何でも良い事だ。
此れで我を縛り付ける柵から解放される訳だ。
最早我が此処に座す理由も無くなる訳だ。」
そう言い残して白く濁る宝石玉を受け渡し、ふらふらと奥の間に消えていった。
何か気がかりなことも言ってたが俺には非常にどうでもよいことだ。
それよりも手元の玉石の事で頭が一杯。
いやー、げにまっことこの世で一番尊いモノは
金を幾ら積んでも手に入るか分から無い程希少性の高いモノだな。
コレで俺も生き残る為のカードか一枚増える訳だ。
自分の命は幾ら金を積んでも手に入ら無いからなぁ。
命あっての物種だ、あのクズ女の悲痛な表情が見れるのも命があってのことだろう。
さ〜て、報酬は前払いされちゃってるがシッカリ仕事はこなしますかね〜!
殴り飛ばされた借りも返したいしな。
あの娘の処刑計画書に目を通しながら、一先ず飯屋を探して城を出て行くことにした。