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6. 驚異の三歳児です

ちず追加しました!

 はい、いろいろとすっ飛ばして、三歳になりました!

アーサー君は今日も元気です。


ここ最近は、敷地内であればいろいろと動き回れるようになりまして、庭の散歩や屋敷内の探検に勤しんでおります。

しかし、安穏としたアーサー君の行動に思わぬ強敵が現れました。


メイド長のエリーナと、執事長のモーリスです。


三歳になった事で、貴族としての振る舞いやマナーなどを教えるべく、この二人が口うるさく言ってくるようになりました。

まあ、うるさいのは主にエリーナだけですが……



外見的には細身で、ひっつめお団子頭のエリーナはまさにメイド長って感じで、厳しい感じの見た目そのまんまですね。

驚いたことにエリーナはリーラの母親で、親子でセルウィン家に仕えてくれているのです。


何でも先代に拾ってもらった恩があるとかで、献身的に仕事をこなし、今ではメイド長になったそうです。

って、エリーナはお世辞にも、あまりスタイルがいいとは言えないんですが、リーラのあのナイスバディはどこから来たのでしょう?


遺伝子仕事しろ!



ふおっ、俺の心の声が届いたのか、エリーナがこちらに鋭い視線を向けてきました。

ヤバイです。捕まったらお小言コースです。

俺は、トテトテとその場を離脱して、エリーナの視界外へ逃げ出します。



「ほっ、ほっ、ほっ。若様は今日もお元気ですなぁ」



ぬおっ、逃げた先に執事長のモーリスが待ち構えております。

執事という役職のためか、無駄に気配がしないモーリスは、気づくといつの間にか近くに居たりします。

ホントこの人は心臓に悪いです。


幸いモーリスはこちらに用がある訳ではなさそうで、好々爺っぽい笑みをうかべながら、進路を空けてくれました。

これが何か用事のある場合だと、いつキャッチされたのかもわからないほど、自然に抱きかかえられて捕獲されるのです。


おかしい。確か神様にチートを貰った気がするのですが、この爺さんには敵う気がしません。


最初に捕獲された時は走っていたつもりが、モーリスの手の中でエアウォークしてました。


アイエェェ、ナンデ ナンデ ホカク!!




「ふぅ、なんとか撒けたか」


俺は屋敷の中を駆け抜けて、目的の部屋に逃げ込みました。

ここは領主であるお父さまの執務室近くにある、資料室兼書庫になっています。


スキルの恩恵で、文字を覚えるのは簡単でしたよ。

リーラに読んでもらった絵本から、簡単な単語を拾い文字を覚えてからは結構早かったね。

幸い、漢字みたいな難解な文字もなくて、アルファベットみたいな感じだったんで、後は文法と単語を覚えるだけでした。


そんなわけで、今は書庫の本を読み漁って、この世界の事を学んでいます。



  挿絵(By みてみん)



いま俺がいる場所は、エドガルド王国の南部に属するセルウィン子爵領。

この大陸には幾つかの国があって、まずは我が国であるエドガルド王国。

中部四諸王国をはさんで反対側にチェカル帝国があるようです。



  挿絵(By みてみん)


アルファベットのCないしは、視力検査の記号みたいな形の大陸ですね。


王国の歴史書みたいなかび臭い本を読めば、昔から帝国とウチの王国はあまり中が良くないらしいですが、ここ数代は安定しているみたいですね。

今の所はあまり世界に目を向けても仕方ないので、もっと身近な所に視点を向けましょう。


まずはエドガルド王国

絶対君主制の歴史ある王国で、四十代くらい続いているらしいです。


あの駄女神さまは、人類が繁栄しないとか言ってましたが、けっこう継続してるやん。

まあ、神様スパンで見れば、百年とかあっという間なのかな?


よくよく考えて見れば、モザイク兄さんも年齢的には二千歳ぐらいか?



おっと、話がそれた。

そんな歴史のある王国の中にひっそりと佇むように、我がセルウィン領は存在しています。

羊皮紙に書かれた王国の地図を広げてみれば、その場所が一目瞭然。ですが、あまり発展していません。


問題はその立地と交通の便なのです。

我が領と北のコックス子爵領の間には、タルコット山脈という霊峰がそびえ立っており、その裾野には大森林が広がっています。

名目上は子爵領なのですが山間部と大森林を除けば、実質的には南部にあるいくつかの男爵領と、面積はあまり変わらないのですよ。


そして大山脈がそびえ立っているせいで、北回りの街道が途切れておりまして、商業もあまり芳しくありません。

小規模ですが港もあるんです。ですが、大規模な商船は内海の航路を使って直接王都に行ってしまうので、精々沿岸航路の補給程度しか寄港もないのです。


おまけに大森林は、強いモンスターがウロウロしておりまして、大山脈にはなんとドラゴンが生息しているとの噂もあります。


ドラゴンですってよ! 奥様! ファンタジー要素、キマシタワー!!!




ゴホン、少し取り乱しました。

まあ、僻地というか、ど田舎ですな、こりゃ。

でも、言い換えればある程度、好き勝手出来る余地があるということです。


内政無双とか、憧れますよね~


そんな訳で、まだ領主館の敷地から出られない俺は、こうして時間を見つけては情報収集に勤しんでいるのです。

結構な量の記録や書籍がありますが、今の所ざっと目を通したのは三割程度ですね。


「アーサー様、おやつの時間ですよー」



おや、本を読んでいたらもうそんな時間ですか。

リーラが書庫にひょっこり顔だけ出して、呼んでますね。


って、ここに居る事は秘密のはずですが、なぜか彼女にはバレてしまっています。



「あ~、また難しい本読んでるんですねー。ついこの間まで、絵本を読み聞かせしてたと思ったのに、もうそんなに成長なされて」


うん、セリフが棒読みかつ、嘘泣きの演技まで入ってますがな。


「もう、そんな時間?今日のおやつは何?」



はい、華麗にスルーです。

代謝がいいのか、成長にエネルギーが必要なのか、すぐにお腹が空きますね。さすが三歳児!


「はうぅ、私の可愛いアーサー様はどこへ行ってしまったのですか~」


まだ演技が続いているようです。しょうがないので乗ってやります。


「え~っ、リーラには僕のこと見えないの~?」


若干の恥ずかしさをぐっと飲み込んで、つとめて子供らしくリーラに抱きついて甘えにかかります。

その途端、華のように笑顔を咲かせたリーラが、俺を抱え上げてスリスリしてきました。


「は~い、今日はお母様特製のクッキーですよ」


おっ、エリーナさんのクッキーはあの性格からは想像できないほど上品な甘さが絶品なのですよね。

これは食べるのが楽しみです。


無邪気なフリで、メイド服のスカートごしに、ナイスな長さの脚に抱きつきます。

前世でやったら即警察コースですよ、ホント。


自分は三歳児なんだから目一杯甘えてもいいんだと、頭では判ってはいるんですが、前世の記憶がどうにも足を引っ張りますね。

おかげで周囲からは少し引っ込み思案な恥ずかしがり屋で、リーラにだけは甘えている。との評判が立ってるみたいです。


うん、あながち間違いでもないですけどね。

リーラには下の世話までされてますから、甘えるのに気後れする部分はあっても、今更恥ずかしがるような間柄でもありません。


グスン、お婿に行けない……



リーラと仲良く手をつないでテラスへ行くと、ちょうどチェスターお父さまも部屋にやって来ました。


領主の仕事もそれなりに忙しいらしく、たまに数日ていど家を空ける時もあります。

それでも、領主館で仕事をしている時は、午後のお茶と朝夕の食事には、家族団欒のために時間を作ってくれる良きパパです。


「おお、アーサー今日も元気に遊んでいたかな?」


お父さまは俺に気づくと、リーラから俺を受け取って、たかいたかーいをやってくれます。

ええ、0才児の時とは違って、今はアトラクション程度に感じますね。素直に喜べます。


だから、ヒゲをきちんと剃れ。痛いんじゃ!


「お父さま、おひげ、いた~い!」


極力、カドが立たないようにお父様のハグから逃れて、笑いながらリーラの後ろに隠れます。

なんだか、こんな親子のスキンシップって、心が温まりますね。


「ほらほらあなた達、遊んでないでこちらにいらっしゃい。紅茶が冷めてしまうわよ」


お茶の支度をしていたディアナ母さまが、幸せそうに僕達を呼び寄せます。

俺は、リーラのうしろから飛び出して、母さまに走り寄りました。


うん、向こうの世界ではわりと早くに両親亡くしてるから、何か新鮮なんだよね。

食事とか育ての親のジジイの顔見ながらでしたので、家庭の味とかあんまり記憶になんですよ。


せっかくの二度目の人生ですから、前世ではあまり縁がなかった家族のふれあいを今噛み締めてます。


家族でならんでクッキーとお茶を飲み、マッタリタイム。 うん、幸せです。


「エリーナさん、今日もクッキーいいお味ね」


お茶のおかわりを注ぎに来てくれたメイド長に、ディアナ母さまが笑顔でそう語りかけています。

しかし親子とは思えないほど、エリーナさんの表情は動きませぬ。

ホントに親子なのかね?リーラだったら、「やった~」とか言いつつ小躍りしそうなんですが?


「奥様、私めにさん付けは不要です。呼び捨てにして下さいませと、いつも……」


おおう、お小言炸裂でございます。


「いいのよ、私はそんな高貴な生まれじゃないし、年上で尊敬できる人をさん付けで呼ばないなんて、そっちの方が失礼よ」


母さまが笑顔で切り返しております。うん、貴族社会の事は俺もわからないけど、人間的には母さまの方が正しいんだろう。

エリーナさんも、母さまの切り返しにこれ以上の追求は諦めたようだ。


「それから、アーサー様の教育についてですが、そろそろ簡単な手習い程度は始めませんと……」


うおっ、いきなりこっちに飛び火したぞ。

正直、嫌だなぁ。資料や本を読んだり、魔法の練習に割く時間が減っちゃうじゃないか。


ステータスの方は順調に伸びてるんだから、そろそろ庭にも出れるようになったから、本格的に魔法の練習もはじめなきゃと思ってたのに。


「う~ん、手習いやマナーは問題ないが、もう少し後からでもいいんじゃないか?」


おっ、思わぬ助け舟がお父様から出ました!いいぞ、もっと言ってやれ!


「チェスター様、そう言って遊び呆けていて、学院に入る時に苦労なされたのは、どなたでしたか?」



はい、お父様…… 撃沈でございます。頼りねえ援軍だったな。おい。


「うぅ、昔のことは良いだろうよ。それよりアーサーの事だ」


きったねぇこの親父、昔話をほじくられたら、息子に話題振りやがった!



俺は両手で持った紅茶のカップのふちから、すこしジト目をお父様に向けてから、しょうがないので助け舟を出します。


「手習いとは、どんなことをするのですか?」



なるべく波風が立たないように、小さく母さまのそでを引っ張りながら、俺は小声で質問してみる。


「手習いとは、最低限の礼儀作法や文字の書き方、簡単な計算などですね。

この手習いだけでも平民にはできない者が多いのですが、貴族たるものこの程度はたしなみです」



おおぅ、小声で母さまに聞いたはずなのに、デ○ルイヤーか何かなのか?

エリーナさんが的確に答えてくれたぞ!?



しかし、どうしたものかね?

最低限の常識や礼儀作法は必要だけど、本音を言えばあまり長い時間は拘束されたくないな。


よし、そろそろチート的にも、能力を少しずつ見せていきましょうかね。



スーパー三才児タイムと行きましょう!


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