5.めでたく1歳になりました!
はい、あれから月日が流れまして、ようやく1歳と2ヶ月になりましたよ。
ちなみにステータスの方はといえば……
アーサー・セルウィン (1歳)
体力 :18/18
魔力 :47/47
攻撃力 :6
防御力 :4
素早さ :8
状態 :通常
スキル :風魔法(初級) 火魔法(初級) 水魔法(初級) 無属性魔法(初級)
真理の目 限界突破 記憶の泉
功罪、称号 聖杯を受けし者 女神の祝福
こんな感じに成長致しました。
これも皆様のおかげ……じゃなくて、努力した俺のおかげです!
ごめんなさい、石とか投げないで……
詳しく話をすれば、つかまり立ちが出来て、歩き始めた辺りからモリモリ体力が上がっていきました。
それこそ日ごとにポツポツ上がっていってます。
うん、多分成長期とかそんな感じだと思います。
それから、魔法の種類がめっさ増えていますが、はい。頑張りました。
どうやら魔力を各属性に変化させるのは、放出時のイメージが大切なようすね。
手のひらに集める時に、望む性質のイメージを固めれば、その属性に変化するようです。
以前リーラがやっていたドライヤーの魔法も、放出量の調整で出来ることがわかりました。
ためた魔力を少しずつ放出するイメージですね。
とりあえずは、今の段階ではこれ以上の魔法の修練は難しいので、新しい魔法の種類は増やさずに、魔力量に重点を置いて練習してます。
ん?どんな練習かって?
それじゃあ、ちょっとやってみましょう。
無属性の魔法を手のひらに集めまして、限界まで凝縮させます。
まだまだ凝縮させられそうですが、元の魔力が少ないので限界まで魔力をねりねりしましょう。
すると、不思議なことに透明だった魔力に薄い黄色っぽい色がつきまして、目に見える形になってきます。
最近は、この魔力を使って形を作るのに熱中してまして、りんごっぽい形とか白鳥なんかを作ってます。
イメージだけで形を変化させられる、粘土遊びみたいな感じですね。
最初のうちは不格好でいびつな感じでしたが、最近は滑らかなフォルムで形作れるようになってきましたよ。
持続時間も、最初は十分が精一杯でしたが、今では小さな形なら一時間でも遊んでいられます。
まあ、凝縮させる魔力の量で持続時間が変わってきますから、一概には言えないんですがねー。
なんで、この方法で練習することにしたかと言えば、属性魔法だと後始末に困るのですよ。
水は濡れるし、火は火事がねぇ……
あっ、風魔法は有効利用してますよ。
歩けるといっても、まだヨタヨタしてますし、石造りの床にじゅうたんなんで転ぶと地味に痛いんですよ。この部屋。
そんなわけで、おすわりした状態で風魔法を応用して、床面を滑るように移動!
音も立てずにスイーッと部屋の中を動いています。
リーラの目をかいくぐり、リアルだるまさんが転んだを行っております。
一瞬、目を話した隙に移動して、違う場所で何食わぬ顔をしてごまかします。
最初の頃はびっくりしてましたが、最近は慣れたみたいで迷わず移動先に目を向けてきます。
リーラ、恐ろしい子……
「りーら、まんま」
うん、カタコトですが声帯も発達してきまして、短い言葉ならバブバブ言えるようになってきましたよ。
だいたいこの世界の言葉も覚えて、日常会話なら聞き取ることが出来ます。
スキルと若い脳みそは優秀だね。
自分で言うのもなんだけど、手のかからないいい子ですよ?僕。
「はいはい、アーサー様、お腹すきましたか~」
そう言って俺を抱き上げてソファーに連れて行ってくれる。
最近は固形食がだいぶ増えて、食の喜びを噛み締めております。まだ、歯は生えてないないけどね。
ディアナ母様のダイナマイトな母乳も捨てがたいのだが、肉親と考えるとそういう目では見れないよね。
身体も若過ぎるせいか、常時賢者タイムが発動してるし……
もっと成長して男性ホルモンとか出るまでは、興味はあってもそういう感情は湧かないのかな?
まあ、今の所家族以外の異性といえばリーラ達、使用人くらいだけど。
よくよく考えて見れば意識は三十目前のおっさんな訳ですが、思春期とか初恋ってどう対処したらいいんだろう?
うん、難しく考えてもしょうがないね。その時に考えよう。
「アーサー様、もぐもぐ美味しいですか~ぁ?」
リーラが用意してくれたミルク粥と野菜のペーストらしき離乳食を食べさせてもらいながら、そんなことを考えていました。
「それにしても、アーサー様は不思議な子供ですよねー。
たまに瞬間移動するし、部屋の中でもたまに温度とか、違和感を感じますし」
なんだろう、バレてるのに黙っててくれてるんだろうか?
びっくりして離乳食を吹き出しかけたけど、鉄の理性で赤ちゃんフェイスを貫いたぜ。
リーラの語り口調は優しいままだが、やっぱり自重すべきだろうか?
もう少し成長したら、常識とか学ばないとな……
うーん、やっぱり部屋の温度についてもバレてたか。
今は初夏らしくて体温高い俺には、ちょっと部屋の温度が高過ぎるんだよね。
身体を冷やさないようにって、配慮なんだろうけど逆に熱中症が心配なくらい暑いのよ。
それで、水魔法で作り出したミストと風魔法で気化熱と空気循環で、部屋の温度をこっそり下げてたんだが……
まあ、もうちょっとコミュニケーションが円滑になれば、意見も聞いてくれるかな?
離乳食を食べ終わって、ごちそうさまの意味を込めてにっこりと笑いかけると、リーラも笑顔を返してくれる。
「それじゃあ、お父さま達がお帰りになるまで、ねんねしましょうねー」
口元を柔らかい布で拭いてから、俺をベッドに寝かしつけてくれる。
「オイタは程々にして、ちゃんとねんねしないとダメですよ~」
やっぱり、バレてたみたいです。サーセン。
パタンとドアが閉まり、リーラが出てから俺は、自重って言葉について考えました。
うん、まだ一歳なんだから焦ることはないよな。
当面は体を自由に動かせるようになることと、知識を中心に据えて、魔法の研鑽はもう少し後にしましょう。
魔力を伸ばすのなら、無属性で魔力こねこねしてればいいからね。
そう思って無属性の魔力を顕在化させて、限界まで練り上げます。
胸像なんて作ったことないけど、さっきのリーラの笑顔がなぜか印象に残ったので、それを形造ります。
うん、着色は出来ないけど紛うことなきリーラの姿が出来上がりました。
これ、なんとか保存できないかなぁ?
そんなことを考えながら、魔力切れで俺はゆるやかに眠りの世界に落ちていきました。
うん、リーラがドアの隙間からこっそり覗いていたなんて、言われるまで気づきませんでしたよ。はい。
あとになって、本人からその話を聞いた時は、恥ずかしくて一人で悶えたのは内緒です。