38.王都に呼び出されました!
はい、またまた年月が流れまして、ようやくアーサー君は8歳になりました!
いやはや、普通は歳を取ると年月が経つのが早くなるっていいますけど、あれって、何かに集中してたりすると、そう感じるんじゃないでしょうか?
うん、若干8歳にして、一年が早いとか感じてるとか、ひどいワーカホリックみたいな気がしますが。
はてさて、5歳の時にドラゴンのヴェーラさんと知己になりまして、かなりの収穫がありました。
まずは魔法の練習に、知識が豊富な彼女の手を借りられまして、新たな魔法や技術の開発に成功したのですよ!
それにあの吸血プレイは伊達ではなかったらしく、ステータスや身体能力が大幅に底上げされました。
なんと、あのダリルさんと互角に切り結べるくらいまで成長しまして、最近は純粋に剣技のみで立ち向かってます。
以前は魔力強化を発動して、ようやく戦えるかといった所だったんですがね。
まあ、それでもまだ一本取れませんで、まだまだ先は長そうです。
そしてヴェーラさんと知り合いになったことで、思わぬ副次効果もありました。
「ん? 街道を拡張したい?お主の好きにすればいいのじゃ」
いつだったか魔法の練習をしている時に、ふと気になって話題にしてみれば、あっさりと許可が降りました。
そこで渋る父様を説き伏せて、街道の拡張を進めてもらいだいぶ立派な道が出来ました!
これでかなり物流が改善しましたよ。
人も増えて鉄の販路も拡大、昨年からは借金の返済も終わって、黒字経営に転換しました!
さらに言えば子爵領の収益の柱である年貢の徴収も、これまでの倍近くに増えまして、だいぶ豊かになりましたよ。
四輪農法の導入はだいたい目処がつきまして、牧場も三箇所に拡張しております。
商業が活発になれば、それにともなって人口も増えるわけですね。
石鹸効果でしょうか?出生率もじわじわ上がってきてまして、そろそろ領内での教育なんかも考えなければいけませんね。
当面は幼年魔法学院を活用する方向で進めようと思いますが、寺子屋的な学校も建てたいです。
牧場運営で農業効率は上がってますから、これで子供たちを勉強に向かわせる事が出来るでしょうね。
それには教師をできる人材が必要なんですが、これがえらい大変でしてねぇ……
なんとか、王都で布告を出してもらい、逃げた代官や役人の代わりは最低限確保できたのですが、それ以上の人員となると大変なんですよね。
どこの領でも優秀な人はすでに囲ってますし、民間ではそんな人材は稀有ですから。
えっ?説明が長いけど今は何してるのかって?
いやね、実はすごい退屈でヒマなんですよ。
今日の日程は、終日馬車で揺られるだけの簡単なお仕事なんです。
話は数ヶ月前に遡るんですが、王家からの使者が書状を持って領主館にやって来まして、色々と難癖……じゃなかった、お言葉を賜りました。
ひじょーに修飾過多で『マンドクセ…… 三行でおk』と、喉まで出かかったのは内緒です。
まあ、三行要約すると……
借金返済おめ
領地経営上手いやん
褒めてやるから王都に来い
って、ことです。
そんな訳で、現在はセルウィン領から四日ほどかけて、王都に向かっている最中なのですよ。
いやはや滅多に使わない馬車を修繕して、ドレスや服を仕立て直したりと、出立準備が忙しかったのよ。
大森林で素材採取して献上品調達したり、エルモさんに王に献上する細剣を作ってもらって、店主のおっちゃんが小躍りしたりと。
せっかく黒字になったのに、余計な出費がかさんで大変っすよ。
そうしてバタバタ準備を済ませて出発したのが三日前、もうすぐ王都に入る所です。
今回の王都への旅で随行するのは、エリーナさんとモーリスさん、それとリーラに護衛の騎士達が六名と結構な大所帯です。
まあ、これでも貴族の一行としては少ないんですけどね……
そうしてやってまいりました、エドガルド王国の王都に!
いや~、デカイっすね!
城壁なんて、どっかの巨人が入ってそうなくらいデカイっす!
それに人も多いですし、街並みもさすがにウチの領都とは比べ物にならないですね。
そして滞在中の宿である、王都の中でも中堅グレードの宿に入りまして、その一室でケツに回復魔法をかけています。
……うん、馬車って揺れるのよ。
帰ったら絶対にサスペンションと、なにかクッションを開発しようと思います。
「明日は昼から接見があるから、それまでゆっくり休んでおけ。作法は大丈夫だな?」
「はい、父様」
うん、父親の威厳溢れる会話ですが、半ケツで言っても説得力がありません。
「父様もかけますか?」って聞いたら、無言でズボンを下ろし始めましたからね。
そんな、はーとふるな親子の付き合いをこなして、王都に到着した日の夜は過ぎて行きました。
そして翌日、あまり着たことのない礼装を着まして出発準備を整えます。
「アーサー様、よくお似合いですよ」
リーラが褒めてくれますが、どうも着慣れないと言うか着られてる感じがします。
「アーサー様は成長早いですからね。背もどんどん伸びてますから、もうすぐ私に届くんじゃないですか?」
まあ、毎日みっちり運動して食事もしっかり取ってますからね。
ホント、リーラとは頭一つ分くらいの差で、もうすぐ追いつきそうですよ。
「アーサー、そろそろ出発するわよ」
ノックの音とともに、母様が迎えに来ました。
おお、母様も気合入ってますね。胸元がザックリ開いたドレス姿で普段は、あまりつけないアクセサリーなんかも着けてますね。
相変わらずの、ないすばでーでございます。
城は王都を見下ろす丘の上にありまして、ここにも城壁が張り巡らせてありますね。
そんな厳重な防備をくぐりまして、城に着けば正面の門もデカイっすよ。
馬車でそのままドライブスルーできそうな大きさなんですが、ここから徒歩だそうです。
中に入れば何人かの官吏らしき人間達や、立派な鎧を着た騎士などが闊歩していまして、どうも緊張してしまいますね。
都内の人混みなどを考えれば、それほどでもないと思うんですが、こっちに転生してからすっかり田舎者になってしまったんでしょうか?
父様について控えの間に入り、順番が来るまで待機することになりました。
前世でも偉い人とかあんまり会った経験がありませんから、どう対応していいのか困りますね。
見れば母様はいつもどおりマイペースですが、父様は難しい顔を浮かべていまして、やっぱり緊張しているみたいです。
「父様、ちょっとお手洗いに行ってきます」
いけませんね、アーサー君の膀胱が自己主張を始めまして、少々タンクの容量が危険です。
「うむ、手荒いは左手の奥にある。広いから迷うなよ。迷ったら近くにいる人間に声をかけなさい」
「はい、それではちょっと失礼します」
父様の言葉もそこそこに、俺は競歩でトイレに向かいます。廊下は走っちゃいけませんからね。
しかし、なんでお城ってこんなムダに広いんでしょうか? トイレに行くのも一苦労です。
ああ、ここじゃないな。 こっちは倉庫か。
あっ、あったあった!
俺は光の速さで駆け込みまして、放出の準備をしようとしますが、慣れない服って嫌ですね。
ボタンが固くて、なかなかホースが取り出せません!
ヤバイ、地味にピンチです!
そうこうしていると、うしろからドカドカと足音が響いてきまして、誰かがトイレに入ってきます。
ふっ、残念だったな。一つしかない小便器は、俺が使用中だ。
なるべく早く放水を終わらせるから、我慢してくれ!
俺はそう思いながらボタンと格闘しておりましたら、不意に後ろから引っ張られました。
「邪魔だ!どけ!」
そう言って強引に俺を押しのけて、自分は優雅に放水を始めました。
かっちーん!
よろしい、ならば戦争だ!




