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2.モザイク無しでも残念でした

はい、神様の都合でぬっ殺された秋葉です。

なぜか天界でウチの世界の神様と酒盛りしてます。


どうやら俺を迎えに来た、向こうの世界の神様がやって来たみたいだ。



青くなってブツブツ言ってる、神様はとりあえず放っておこう。

俺はモヤで出来た椅子から立ち上がって、もう一人の神様を出迎える。

ほら心象良くしておかないとね。これから落とされる世界を管轄してる神様だからね。


そうして現れたのは、女神様でした。


何と言うか表現が難しいのだが、プラチナブロンドの髪を背中まで伸ばした、神々しく光り輝く女神様だった。

うん、なんか世間一般にイメージされている女神様そのまんまだな。


透き通るような肌と、光沢のあるなんかヒラヒラした衣着てる。


ゆっくりと健在したその女神様は、モヤの上に降り立つと俺に気づいたようでニッコリと微笑んでくれた。

何だろう。すげー絶世の美女っぽいんだけど、あんまり神々しくてエロさとか一切感じないわ。


思わず頭を下げてしまったくらい、神聖な雰囲気だわ。

なんか、俺の横でブツブツ言ってる人《神様》とは、比較にならんな。


「貴方がカオスの原点に選ばれた方で……ヘブッ!!」



あっ、衣のスソ踏んづけて女神様がコケた。


「…………」


ごめん、前言撤回するわ。この人《女神様》も残念な感じみたいだ。

って、大丈夫かいな。モヤに突っ伏したまま微動だにしないんだけど?



「あの……? 大丈夫ですか?」


おそるおそる、そう声をかけたらモゾモゾ動いて何とか起き上がったみたいだ。


「ぅ~っ、やっぱり着慣れない衣装(ふく)とか、着るんじゃなかった……」


なんか、こっちも涙目で独り言を言ってるけど、神様ってこんなんばっかりなのか?



「ふぅ、失礼致しました。私、試験世界 二十億…… とんで四五七三番の創造を担当しています『du"※t∫og∝j』と申します」


「あ、それ<機密事項>だよ。バレたら神権剥奪……」


おっと、ジーンズ姿の神様もどうやら回復したみたいだ。

しれっと、ヤバイこと吐いてるけど、それ聞いて今度は女神様がアワアワし始めたぞ……



「とりあえずは、さっきのことは聞かなかったことにします。

ざっくり言えば俺がこれから落とされる世界の神様ですよね?」


大人の世界では、スルースキルってとっても大切。

たとえ、営業先の社長がズラだったとしても、華麗にスルー出来なきゃ仕事なんて取れないしね。


これ以上神様のグダグダに付き合ってると、時間というか字数の無駄な気がした俺は、とりあえずそう切り出した。


「ひぐっ、は、はい。 ゴホン、改めてはじめまして。えっと、秋葉さんでしたね」


「ええ、はじめまして秋葉 豊と申します」



モヤで作られた椅子に腰掛けて改めて挨拶をした俺達の間に、何か気まずい空気が漂う。

いや、言っとくけど俺のせいじゃないからね!


「えーっと、それで俺はこれからあなたの世界に転生するって事でいいんですよね?」


「はい、私の力不足でどうにも文明の繁栄が上手くいかなくて……

申し訳ないのですが、変化をもたらす要因として私の世界に旅立って頂ければ」


さっき転んだ時に、ぶつけたのだろうか。

ちょっと赤い鼻っ柱をのぞかせながら、女神様は申し訳無さそうに俯きながら言った。


「しかし、なんでまた毎回そんな失敗するんですかね?」


うん、なんとなく気になった点をとりあえず聞いてみた。

ほら、ジーンスのおっさんがやったみたいに、転生してから隕石落とされるとか嫌じゃん。


すると、その質問が感情のスイッチに触れててしまったのか、さっきの転倒で涙目になっていた大きな瞳に、じわっと涙が溜まりはじめる。


「うぅ…… 私も頑張ったんです。先輩にならって洪水起こしてみたり、隕石落としたり……」


ああ、とうとう泣き出しちゃった。モザイクジーンズ先輩が必死に慰めてるよ。


「いや、俺が言いたいのはそうじゃなくて、せっかく転生しても、気分次第で理不尽に殺されたら嫌だなってことです」


ようやく泣き止んだ女神様は、モザイクのかかったTシャツを引っ張って、涙と鼻水拭いちゃっているよ。


「グスン、大丈夫です。貴方の寿命が来るまでは隕石とか洪水は、控えます」


おい、やめますじゃなくて、控えるのか!?


「いや、巻き込まれたらたまったもんじゃないので、禁止の方向でお願いしますよ」



「え~、でも適度に天災起こさないと、ストレスが貯まるというか」


おーけー、どうやらコイツも喧嘩売りたいらしい。

ただし、神様といえど女性に手を上げるのは俺の主義に反するから、別のアプローチで追い込もう。


「あー、近くの神様!ここに機密情報を漏らした駄女神が~」


「きゃ~っっ、ダメ、ダメ、ダメ!!!!」


慌てて、俺の口をふさぎジタバタするが、構わず俺は優雅にモヤの椅子に座り直した。



「それで、天災はまだ起こします?」


「うぅ……起こしません」



「もう一度、大きな声で!」


「はい!起こしません!」


よろしい。まったく手のかかる神様だ。ホント……



「さて、ここからが本題なのですが、私があなたの世界に降りるに際して、何の見返りもなく行けとは言いませんよね?」


うん、自分でも思うほど清々しいほどのゲス顔で、追い込みをかけてみる。

まあ恨むなら、うっかり機密を喋った自分の浅はかさを恨むんだな。クックックッ……



「ねえねえ、神様相手に脅迫って、僕もどうかと思うよ?」


あん?立川在住のモザイク兄さんが、なんか言ってるな。


「……同居されている方、ここに呼びます?」


顔を近づけて、ぼそっとつぶやいたら、なんか遠い目をしながら、涅槃門の方向見てるわ。方角判らんけど。



「さて、話を戻しましょう。それで、どんな特典チートを授けて頂けるんでしょうかね?」


もうめんどくさいから、さっさともらうもの貰ってしまおうと思い、俺は畳み掛けた。


「あぅぅ、えっと、あまり世界均衡のバランスを崩すような恩恵を授けるのは拙いのですが……」


恐る恐るといった感じで、小さくそういった女神様を見て俺はふんぞり返ってそう長くもない足を組み、困ったようにわざとらしいため息を吐いた。


「ふぅ、困りましたねぇ。

俺の人生強制終了させられた挙句、あなたの世界に降り立って変化をもたらせと言っておきながら、何も持たせずに行けと?」


その言葉でビクッとした女神様を横目に、俺は何か同じように恐縮しちゃってるモザイク兄さんに視線を向ける。


「ところで、今回世界に変化が起こせなかった場合、貴方の沽券にも関わりますよねぇ?」


突然話をふられたロン毛のモザイクは、同じようにビクッと肩を動かしてから、俺の質問に答え始めた。


「えっ?あー、うん。そうだね、他の人《神様》の手を借りて結果が残せなかったら、拙いかな」


それを聞いた女神様が今度は青い顔してるよ。ほんと神様って顔げ……じゃない、表情豊かだよね。


「さて、ここまでの話を踏まえて、再度お聞きしたいのですが、どんな恩恵を?」


「うぅ、全属性付与と限界値までの能力を……」


「もう一声」


俺は、組んでいた足をほどいて身を乗り出すようにして女神様に顔を近づけて笑顔を向ける。

もちろん、眼力だけは射抜かんばかりにプレッシャーかけてるけどな。


「ひぐぅ、限界突破もお付けします。これで勘弁して下さい」


うーん、これ以上いじめてもかわいそうなので、このへんで妥協するとしよう。


「それでは、最後にそれなりに生存率の高い場所に落として下さいね。

落ちて数年で死亡とか、目も当てられませんから」


「はい、善処します」


すっかり泣き顔になってしまった女神様だったが、衣の端で涙を拭うと指先をこちらに向けて、小指の先ほどの光の玉を飛ばしてきた。

ゆっくりと飛んできた光の玉は、俺の胸に吸い込まれるとパァッと淡い光を放って全身に散っていった。


なんか、暖かい感触が広がってくる。やべぇ、心地よくて寝そうだ……



「それじゃ、転生してもらいますね……」


えっ? 世界の説明とかナシでいきなり転生?


もうちょっと、色々聞いておけばよかったと思いながら、俺の意識は再びまどろみの中へと落ちていった。



・・・・・

・・・

・・


「いや~、なかなかデンジャラスな人材たましいだったね」


「はぃ、あれならいい具合にかき回してくれるかと思います」



秋葉の消えた天界で、二人は話し合う。



「ほんと、いい根性してるわ……

神様にあんな態度とれるなんて、輪廻後が楽しみだわー」


「それから、さっき彼と約束してた天災は、ホント自粛してね。

秋葉くん、途中で戻ってきたらホントに殺されそうだから」


「あうぅ…… 努力します」


誰にも聞かれず、そんな会話がかわされていた……


連続更新3/3

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