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24.アーサー君、武器屋に行く


 はい、睡眠バッチリ今日も元気なアーサー君です。


さて、身支度整えて早速出発するとしましょう!


「リーラ、武器屋に行くけど一緒にいく?」


朝食を食べ終わってから聞いてみましたが、ちょっと考えてからリーラは首を横に振りました。


「いえ、今日もちょっと仕事が立て込んでいるので、難しいですね。すみません。

でも男の子なんだから、たまには強引に『一緒に来い』とか、言ってもいいんですよ?」



あれ?このメイド3才児に何言ってるんでしょう?


ん?なんかエリーナさんまで何「うんうん、よく言った」みたいな顔してるの?

まさか親子ぐるみで玉の輿狙いとか!?


「わかった、それじゃ今日は時間がかかりそうだから、一人で行ってくるよ。リーラも仕事がんばって!」


危ないですね。黒焔狼退治で大金が入るのを見越して、リーラまで豹変してしまったのでしょうか?

だとしたら嘆かわしい限りです。少し、距離を置くべきなのかなぁ……


それはそれで、寂しいですね。



「もう…… アーサー、あんまり リーラを困らせちゃダメよ」


おや?お金とショタぼーいの肢体に目が眩んだビッチ疑惑が出てるリーラを、母様が擁護してきましたよ。


「はーい」


とりあえず返事をして、ここでの会話は終わりました。

さて、何かモヤモヤしますが予定はまってくれません。早々に動くとしましょう。



おっと、いい忘れてました。実は今日から、めでたく単独行動が認められました。

父様いわく、Aランクの魔物を倒せるんだから、ひとり歩きしても大丈夫だろうと言うことです。


安直という気もしますが、誘拐などの犯罪も少ない街中ならと、父様が許可してくれたのです。



そんな訳で昨日完成したナイフと図面、それに父様からの書状を持って準備は完了です。



ああ、そういえば会話に出てこなかった父様ですが、昨日母様に絞られたのでしょう。

朝食中は、抜け殻のようになっていました。


何故に抜け殻と化しているのかは、3才児の情操教育的に良くないので、のーこめんと。

弟か妹が生まれるのも近い……かな?


うん、母様って意外と肉食系かもしれません。




そんなこんなで屋敷を出てから、坂を駆け下りて武器屋に向かいます。

途中の騎士団の詰所で、門番をしている顔見知りの従卒に手を振りながら街を目指します。


パタパタと走りたどり着いた武器屋さんは、先日の土下座店員さんが掃除をしていますね。



「おはようございます!店主さんとエルモさんはいらっしゃいますか?」



俺の姿を見た店員さんは、クワッ!っと目を見開いて空高く舞い上がると、埃ひとつ立てずに地面に正座で着地し、頭を下げてきます。

何だ?この無駄なジャンピング土下座のブラッシュアップは。


前よりも格段にキレと高さが増しているぞ!



「ははっ、ただいま呼んでまいりますので、どうぞ店内でお待ち下さい!」



そして一層頭を低くしてそう言うと、あっという間に店内に消えていった。


うん、何か気にしたら負けのような気がする。とりあえずは店内で待たせてもらおう。



「おお、アーサー様、本日はどのようなご用件で?」


程なくして現れた店主のおっちゃんに奥の応接室みたいな所に通されてから、おっちゃんが聞いてきた。


「はい、今日は剣の特注をお願いしようと思って」



それを聞いた店主はおお!と驚いたような顔をみせてから身を乗り出してきた。



「ほう、それはアーサー様の剣という事ですか?今は騎士団で稽古に励まれているとか」


まあ、剣や防具のメンテナンスで騎士団の連中が出入りしてるから、その辺から聞こえていったんだろうな。


「ええ、それと父様の剣についても、一振りお願いしたいと思っています」


それを聞いたおっちゃんは、さらに驚いた様子で降って湧いたチャンスに心踊っているような心境だろう。



「ですが、ひとつ問題があるのです」


俺はそう言って事前に書いてきた図面をおっちゃんに見せた。

「失礼します」と言って図面に目を通したおっちゃんは、それを見るなり渋い顔をして、夢から覚めたように首を振る。


「アーサー様…… いくらなんでも、これは不可能です」


よしよし、上げて落とした。さて、そろそろ次のカードを切りますか。


「そうですか?エルモさんの意見も聞いてみたいのですが……」


俺は何も知らない3才児のフリをしながら、エルモさんを呼んでもらうようにお願いする。



おっちゃんは顔に朝から子供の夢想につきあわされて迷惑だという顔をしながらも、店員にエルモさんを呼んで来るように言った。

まあ普通の子供なら、この場で話をする事も出来なかっただろうし、領主の子供って事で話を聞いてもらえてるんだろうね。


どう話を切り上げて、俺を追い返すかを考えているんだろう。

エルモさんが来れば二対一になるから、説得しやすいと考えたのか、ここまでは作戦通りだな。



しばらくして俺の顔を見て「よう、坊主」と軽く手を上げたエルモさんは、どっかりとソファに腰を下ろす。

そして目に留まったのか、おっちゃんへ何も言わずにテーブルに載っていた図面を手に取ると、黙ってそれに目を通し始めた。


「おい、坊主。この図面はお前が引いたのか?」


「はい、俺ですね」


それを聞いたエルモさんは、小さくため息を吐いてからゆっくりと『子供に聞かせるように』語り始めた。



「発想自体は…… 面白いんだがな。ミスリルと鉄ってのは、どれだけ沸かしてもくっつかねえんだ。

仮に無理やりくっつけても、使ってるうちに剥がれちまって、剣としちゃ使い物にならん。


考えることが悪いとは言わん。だが、世の中にはできることと、出来ないことがあるんだ」



ゆっくりとそう言ったエルモさんは、黙って図面を丸めるとそれを俺に渡してきた。


「次に何か考えたら、図面を引く前に俺の所に来て、できるかどうか聞きに来い。

もちろん、俺の仕事がヒマな時にな」



そう言って俺の頭を乱暴に撫でながら、エルモさんは豪快に笑いました。



…… よし、そろそろ仕込みは十分かな?


俺は昨日作ったナイフを、ゴトッとテーブルの上に置き、黙って反応を待ちます。

ここで口を開いても、俺への評価は下がってますので逆効果ですからね。


ここはしっかり、現物で黙らせてしまいましょう。


俺がナイフを取り出したことで、エルモさんは笑いを止め、値踏みするようにじっと鞘に入ったナイフを見つめます。

まあお世辞にも外見は良いとはいえません。ですが中身は別物ですよ?


俺はエルモさんの言葉には返事をせずに、ナイフを見ろと言わんばかりに、それをエルモさんの前に押し出しました。


おっさんの方は、やれやれといった顔で、お茶を啜り出していますよ。いいのかおっさん?それフラグだぞ?


エルモさんは無言でナイフを抜くと、一瞥した瞬間に目を見開きました。


「何だ!これはっ!!」



ほら、言わんこっちゃない。エルモさんの大声で、おっさんは驚いて茶を吹き出しましたよ。

事前に察知していた俺は、そっと位置を変えて図面も退避させてましたがね。



「おい、どういう事だ!これを作ったのは誰だ!どこで手に入れたんだ!」



ぬっふっふ。流石に特注品の製作を一手に引き受けているエルモさんだけはあります。

これを見ただけで、その意味を悟ったようですね。


一方おっさんの方は、あっ、まだ咽てます……


「これは、俺が作りました」



「なんだとっ!!」


エルモさんは顔をナイフの刀身と俺の顔へ交互に向けながら、ワナワナと口元を震わせています。



おっ、おっさんの方もようやく復活したらしく、エルモさんの肩越しにナイフを覗きこんで、不思議そうな顔をしてますよ?

あれれ、これって大丈夫だよな?


「エルモさん、このナイフは……」


ああ、どうやらエルモさんが、自分の見やすいようにナイフを動かしているんで、店主のおっさんからは、よく見えないらしいですな。

俺はいったんエルモさんからナイフを受け取り、改めて店主のおっさんにそれを手渡した。



ようやく手元に来た話題のナイフを受け取ったおっさんは、それをしげしげと眺め、それからハッと気づいたようです。


「これは、図面のっ!」


よっしゃ、二人ともエサに食いついたみたいですね。


それを確かめてから俺は、改めて図面をエルモさんに手渡しました。


「ナイフくらいまでなら、一人でも打てましたが、やはり剣となると本職にはかないませんね」


俺がそう言うと、エルモさんはその意味を察したらしく、対面に座っていた席を立ち肘置きと俺の間に強引に腰を下ろしてきました。

小柄でごっついドワーフのおっさんが、密着とか勘弁して下さい。


しかし、俺の願いもむなしくその太くてたくましい腕で、ガッチリと俺の肩をホールドしてきます。



「するってぇと、この製法を俺に教えてくれる。つまりはそう言う事だよな?」


エルモさん、目が怖いです。そして3才児の肩をそんなに強く握りしめないで下さい。肩が潰れてしまいます!



「もちろん、剣を打ってくれるならそのつもりですよ?」



俺はそう言うと、エルモさんは真剣な顔で頷いて、俺をヒョイと肩に担ぐと、そのまま立ち上がります。


やめてー! 拉致されるー! おまわりさん、ここに人さらいがー!



「よし、なら早速鍛冶場に行くぞ!」



あれ?店主のおっさんほったらかしですか?この武器屋どっちが店主かわかりませんね。


まあ、武器を作ってもらえれば、俺はどっちでもいいんですけどね。




【悲報】書き溜めストックが切れました。

更新ペース落ちると思います。


日/1~2話になるかと。

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