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1.モザイクな神様

連続更新3/2

「うわ~~~~~っ!!!!」


「ぎゃ~~~~~っ!!!!」


うわ~、びっくりした。寝起きでいきなり見えた顔がモザイク付きとか、どんなエ○動画だよ。

死に起きの心臓に悪すぎるだろ!


しかも、仰向けに寝てる俺の顔を覗きこんでるとか、変態なのか!?

びっくりしてシャコも真っ青な高速逆ハイハイで、後ずさる。


驚きと寝起きの急激な運動のせいか、案の定、ドキドキいってる心臓に左手を当てながら、落ち着くように深呼吸をしてみる。


「すーはー、すーはー」


よし、落ち着いた。うん、とりあえずは落ち着いた。

辺りを見回すと同じように、俺の叫び声でびっくりしたらしいモザイクの兄ちゃんが、四つん這いで肩で息してる。



周りは真っ白いモヤみたいなのに囲まれてて、病院のベッドとか夢オチって事はなさそうだ。



って事は、該当するのは一人しか考えられない訳で……


「もしかして…… 神様、ですか?」


俺は訪ねてみたんだ。まあ、事情知ってそうな人はあの、モザイクの人しかいないみたいだし。


そう声をかけたら、むこうもようやく落ち着いたのか、ゆっくり立ち上がって大きく深呼吸してからこっちに向き直ったんだよ。


「うん、そうだね。 イエ……ゴホン、ゴホン。うん、神様だよ」


何か今、イタリア近くの小さな国の人が聞いたら、卒倒しそうなフレーズが出掛かったけど、そこはとりあえずスルーしよう。

うん、大人の世界には触れてはいけない事情とかあると思うんだ。


あっ、動いたらモザイクがずれて、イバラの冠が一瞬見えた……



「それで、神様の前にいるって事は、俺はやっぱり死んだんですね」


ようやく動悸もおさまって落ち着いた俺は、ゆっくり立ち上がると自分の生死について聞いてみた。

まあ、あの記憶が間違ってなければ、即死コースだったろうから仕方ないだろう。



キリ……ゲフンゲフン、神様は足元の雲みたいなモヤをつまむと、両手で引っ張りあげて円柱を作る。


「ちょっと、込み入った話になるから座って話そうか」


なかなかフレンドリーな神様だなと思いつつ、立ったままじゃ失礼だと思ってそこに腰掛ける。

うん、すわり心地がすげーいい。人を駄目にする系のすわり心地だわ、これ。


俺がモヤのすわり心地に感心してると、神様がゆっくり語りだした。



「秋葉 豊くん 残念ながら君は亡くなったんだよ」


ひどく残念そうに宣告された神様の言葉に、俺は小さくため息を吐きながらも、どこか納得したように小さく頷いた。



「それで…… 俺は、これからどうなるんですか?」



死んじまったモノはしょうがない。少しばかり未練はあるが、最後に人を助けて死んだならまあ良い死に方だったとあきらめもつく。



「う~ん、それなんだけどね。君、ホントは97歳まで生きる予定だったんだよ」


はい? 今、このオッサン、聞き捨てならぬ事をのたまったぞ?



「もしかして手違いとか、そう言う感じですか?」


うん、今なら神殺しとか、楽勝で出来そうな気がする。この距離なら間合いの内だな。


「いやいやいや、話は最後まで聞いてね。うん」



そういいながらも、器用にモヤの位置を変えて微妙に距離取ったの見たぞ?おう!

俺がバキバキと拳を鳴らしたのを見て、慌てた様子で神様が語を継いだ。


「いや、実は君、選ばれたんだよ」


「選ばれた?」


「うん、選ばれたんだ」


「何に?」


「カオスの原点に……」



うむ、神様の話は非常に難解だ。さっぱり要領がつかめん。

とりあえず、神殺しは保留して、話を聞いてみるとしよう。



「カオスの原点って?」


「話せば長くなるんだけど、後輩の神様が困っててね。

どれだけ創造しても、途中で人類死滅しちゃうんだって」


おおぅ、いきなりヘビーな話が出たぞ、おい。


「それでね、先輩である僕に助言を求められたんだけど、どうも世界が安定しすぎてるのがネックみたいなんだ」


なるほど、少し話が読めてきた。


「つまり、安定しすぎているから俺を異分子としてブチ込んで、変化させようと?」


「うん、話が早くて助かるよ。どうも、彼女はそのへんが苦手みたいで、僕ん所に泣きついてきたんだよ」



モザイク越しになんか、表情が変化したのが判った。ロン毛とイバラがはみ出てるけど、まあ、スルーだ。スルー。

って、今気づいたけど、ご丁寧にTシャツの文字までモザイクかかってるぞ、おい!



ジーンズ履いた足をゆっくり組んだ神様は、すこし申し訳無さそうに話を続ける。


「そこで、とりあえず適正ありそうな君を見繕って、死んでもらったって訳なんだ」


なんか、自分の命がひどく軽んじられた気がする。


「いや、そんな殺気出さないでね。あっちに降誕してもらうには、死んでないとダメなんだよ。

ほら、秋葉くんゲームとかラノベ好きでしょ?そっち系を参考にした世界だから、すぐに馴染むと思うよ?」


なんか、すごくダメな発言が出た気もするが、ここで突っ込んだら負けの気がする。



「はあ、とりあえず事情はわかりました。それで、向こうで何をすればいいんですか?」


「いや、思うままに好きにやっちゃっていいよ。特に制限とか無いし」



えっ、それって、人生やり直しって事か?って、事は……


「でも、いきなり勝手の違う世界で生きろって言われても、すごい不便ですよね~?」


うん、なんだろう。あれほど嫌ってた営業のセールストークが、一切抵抗なく言える不思議!


「ええっと、それって、何か恩恵を授けろってこと、かな?」



神様、モザイクの下で思いっきり視線逸らしたのがモロバレっすよ。



「いや、いいんですよ。このまま生まれ変わっても。

何もできずに死んじゃって、向こうの世界で変化が起こせなかったら、神様の沽券に関わるんじゃないですかねぇ?」


どうやら、神様はポーカーフェイスが苦手のようです。


「い、い、いや、そんなことはないと思うよ。秋葉くんなら十分向こうでも活躍できるよ」


あっ、モザイクずれて顎から汗が滴ってるのが見えた。こりゃもうひと押しだな。


「いや~、裸一貫で活躍しろと言われても、一般人の俺には何も出来ないしなー」



チラッ、チラッと神様の顔をモザイク越しにうかがいつつ、チクチク攻める。


あっ、神様がガックリうなだれたぞ。


「わかったよ、聞いてあげるからどんな恩恵が欲しいんだい?」


顔では笑顔を浮かべながら、心の中でガッツポきめつつ、「ありがとうございます」と、とりあえず礼を言う。

商談成立したらこっちのもんだわ。




さて、肝心のチートだがどんな内容にしようか?

ラノベやゲームにありがちって事は、ファンタジー系だろうな。

内政無双とかもいいけど、個人的には能力チートも捨てがたいんだよな。



「ああ、多分、向こうの神様からは体力とか魔力とか何かしら授かると思うから、それ以外でね」


おっと、そう言ってもらえれば話は早い。って、神様そのぶどう酒どっから出した?

なんかやさぐれて、やけ酒飲み始めてるぞ、おい。



少し悩んでから、俺は2つのチートスキルを神様に貰った。

その代償で、ちょいとスプラッターになりかけたが、なんとか望んだスキルを手に入れることができた。

この話は、おいおいするとしよう。



どうやら、向こうの世界の神様が迎えに来るらしく、それまではここで待ってなきゃならんらしい。


なんかひとり酒が手持ち無沙汰らしく、神様が俺にもぶどう酒を勧めてきやがった。

神様と差し向かいで飲むなんて、たぶん現世で言っても誰も信じてくれないだろうな。


「しっかし、世界創るのってそんなに難しいんですか?」


「うん、僕の場合どう頑張っても爬虫類しか生まれなくて、それでヤケになって隕石落としたり……」


酔いが回ってきたのか、かなりヤバめの話をぶっちゃけてるが、この神様ホントに大丈夫か?


「神様、つかぬことをお聞きしますが、下町にげしゅ……「してないよ!」」


おおぅ、興味本位で聞いてみたがどうやら図星だったようだ。この話もスルーすべきだろう。

このままだと、なんか色々と版権とか2次とかに触れそうだ。



「ところで、ウチの家は代々、仏教なんですが、その辺大丈夫なんですかね?」


ん?話題を変えようと、ちょっと疑問に思ったことを口走ったら、神様の顔色があからさまに変わったぞ。

なんか硬直してる。モザイクの色味が、肌色から青っぽいのに変わってるし。


「えっ、彼のとこの信徒だったの? いや、記録だと確かウチの信徒だったはずだけど」


とか、なにか小声でブツブツ言ってる。



俺がちょっと引いてると、神様が俺の肩をがっしりと両手で掴んで、モザイク越しでもわかる真剣な表情で訴えかけてきた。


「いいかい、この話は他言無用だよ。 たとえ、神様に追求されても君はウチの信徒だった。いいね?」


その迫力に、俺はとりあえずコクコクと頷いておいたが、本当にこの神様たち大丈夫なんだろうかと思わずにはいられなかった。


「記録は改ざんできると思うけど、祖先の墓石とか故人の証言はどうしようか……」



なにか、証拠隠滅の企てをしている黒い神様を、残念そうな目で見ていたら、その背後からパァッと何か明るい光が差し込み始めた。

どうやら待ってたもう一人の神様がやって来たらしい。


俺は頭抱えているせいで、手にイバラが食い込んでいる神様をスルーして立ち上がると、そちらに視線を向けたのだった。



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[良い点] 「うん、僕の場合どう頑張っても爬虫類しか生まれなくて、それでヤケになって隕石落としたり……」 面黑い
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