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10.今度はモザイク入ってませんでした



 はい、育ちざかりには、適度な栄養と十分な睡眠が必要ですね。

オフトゥンは、どうしてこんなにも気持ちいいのでしょうか?


ただいま夢の中で、幸せ気分を満喫中のアーサー君です。


夢の中でも魔法を撃って、魔物をバッタバッタとなぎ倒すって、これは願望なんですかね?


ぐおっ、なんだか急にスライムにのしかかられて、超絶ピンチです。

何だろう、三才男児の触手プレイとか、それ描写したら一発アウトです。ちょっと腐った人しか喜びません!


やめろ!変な所をツンツンするな! う~ん、うーん……


「はっ……!」


どうやら悪い夢を見ていたようです。

目覚めてゆっくりとまぶたをあけると、そこには妖精さんがいました。



あれ?まだ夢の続き?


もう一回目を閉じて、再び開けてみます。


うん、俺のほっぺたをツンツンしてる妖精さんがおる。


「君は…… だあれ?」



どうやら現実のようなので、お布団の上で俺に馬乗りになっている妖精さんに、とりあえずは訪ねてみました。


すると妖精さん。ビクッ!として、指を引っ込めて後ずさりましたよ。


あっ、コケた。なんかモゾモゾしてます。


いや、妖精さんって言っても羽は生えてないし、俺と同じぐらいの体格ですよ。

それに半裸とか言うわけでもなく、普通に服着てますし。


それでも、何と言うかブルーの髪の毛にグリーンのくりくりっとした瞳で、どこか透き通るような顔立ちなんですよ。

うん、ゴスロリ着せて動かなかったら、ドールとか言っても通用しそうなレベルですね。


そりゃ、妖精さんといってもあながち間違いじゃない。

前世で子役やってたら、エルフ役が素顔で出来そうな感じ。



おっ妖精さん、モゾモゾから復帰したぞ。

なんだろう、お布団のはじで顔を隠して恥ずかしげにこっちを見てるぞ。



「はじめまして。ぼくは、アーサー・セルウィンっていいます」


上体を起こしてから、とりあえず名前を名乗ってみました。


「エリカ…… エリカ・ウォルターズ……」



うん、なんとなく予想してたけど外見に違わない、すんげー弱々しい感じだ。

なんだろう「絶対守らなきゃ!」 って庇護欲を掻き立てられる感じだね。こりゃ。


「どうして、僕の部屋にいるの?」



状況が読めないから、とりあえず基本的な所から聞いておこう。


まあ今回の寝起きドッキリは、相手の顔にモザイクがなかっただけでもヨシとしなきゃね。

あれはホントに、心臓止まるかと思ったぐらいビックリしたもんな。


実際死んでたから、心臓止まってたんですけどね。


「領主様が…… 部屋に息子がいるから遊んでおいでって……」



なるほど、だいたい状況が読めた。



「きみのお父さんは、商人さん?」



おぅ、顔隠したままコクコクと頷いております。

前世ではそっち系の趣味とかは一切なかったけど、すげーかわいい。



はてさて事情は飲み込めたんですが、どうやって遊びましょうか?

考えてみれば幼児らしい遊びなんて、ほとんどしてないことに今更ながら気づきましたよ。


今日は午前中に魔法の練習をしてしまったので、午後からはゆっくり本や資料を読み込もうと思っていたんですが。

寝起きでボーっとする頭でどうするか考えていたら、なんか妖精さん……もといエリカちゃんが何かウルウルしはじめました。


「エリカと、あそぶの……いや?」


うぐっ、これは反則です。こう言われたら、逆らうすべなどありません。


「ちがうよ。何してあそぶか考えてたんだ。エリカは何したい?」



「うーんとね、うーんとね、ごほんがよみたいの……」


ああ、良かった。それなら部屋にも何冊か絵本がありますので、それを読めば万事解決ですね!

文字覚えてから一日で読破したので、最近は触ってもいませんでした。


絵本さん、ようやく適切に活用される日が来ましたよ!



「それじゃあ、ごほん取ってくるね」



俺はベッドから降りて、本棚に向けて歩こうとしたら、何かに引き止められました。

振り返れば、エリカが俺の袖をつかんでいます。



「いっしょに……行く?」


「うん!」


おお、ニッコリと笑ってくれました!

やっぱり女の子は、笑っているのが一番ですね。


手をつないで本棚まで向かいちょっと背伸びをしつつ目的の本を選び出します。

典型的な英雄譚で、過去の魔王討伐を下敷きに書かれた絵本ですね。


それを手にしてから2人でペタンとじゅうたんに座って、それを開きます。

なんだかエリカの目がキラキラしてて、すごく期待してるのがわかりますね。



「むかし…… むかし、ある所におじいさ…… ゲフンゲフン」


いけません。昔話はおじいさんとおばあさんから始まるというテンプレ……

じゃなかった刷り込みのせいで、危うく違う物語を語りそうになってしまいましたよ。



「むかし、むかし、世界にはこわい魔王がおり、人々はたいへん困っていました。

そんな時に、一人の少年が女神様のお告げを受けたのです……」


****


彼はお告げを受けたことを村のみんなに話しましたが、誰も信じてくれませんでした。

それでも彼は夢のお告げを信じて、体を鍛えはじめます。


最初は誰もが若者の事を笑いましたが、やがて大人を負かし、その後に村一番の力自慢を倒してしまい大いに驚きました!



『おうおう、ちょっと臨場感出して読み聞かせてたら、エリカちゃん随分と食いついて来たぞ……』



そうして村一番の戦士になった若者は、やがて王都に旅立ちます。

旅の途中で魔法使いと知り合い、一緒に王都を目指します。


王都まであと少しの街で、若者は盗賊に襲われている商人を発見して、これを助けました。


「お願いします!盗賊にとらわれてしまった娘を助けて下さい!」


王都への道のりを急いでいた若者と魔法使いは、少し困りましたが、商人の娘を助けることにしました。

盗賊のアジトへたどり着くと、盗賊の親分は2人がまだ若く非力だろうと侮り、勝負を仕掛けます。


しかしいつも鍛えていた2人は、盗賊の親分を苦戦の末に打ち負かします!


「ごめんなさい。降参です!娘は返しますのでお助けを!」



こうして娘を助けだした2人は、王都に向かい商人の元へ娘を届けに行きました。


「ありがとうございます!ご恩は一生忘れません!」


商人はお礼に2人へ鎧やローブをプレゼントしました。

立派になった2人は、商人の娘を助けたことで王都の噂に登ります。


王様がその噂を聞きつけて、2人を城に呼びつけました。


「王様、僕に魔王を倒しに行かせて下さい!」


若者の言葉に王様はいたく感動して、その願いを聞き入れました。


そうして剣と杖を2人に授け、心よく送り出してくれました。

街の噂を聞きつけて王都一番の戦士と、教会の治療師が仲間に加わり、若者たちは魔王の城にむけて旅立ちました。



魔王の城が近くなるにつれて、どんどん敵は強くなりやがてボロボロになってしまいまいます。


「あきらめてはいけませんよ……」


天から届いたのは、女神様の声でした。


その声で元気を取り戻した一行は、ついに魔王の城にたどり着きます。


「よくここまで辿り着いたな!」


魔王がおどろおどろしくそう言うと、若者は勇気を振り絞って声を上げました。


「魔王よ!成敗してくれる!」



魔王と若者たちの戦いは、長く続きやがて若者の剣が魔王を討ち滅ぼしたのです!


「やったぞ!ついに魔王を倒したんだ!」




王都に戻った若者たちは、とても盛大な歓迎を受けました!


「我らが勇者、ばんざい!」


皆が口々に若者をたたえ、平和になった世界を喜んでいます。


「勇者よ、よくぞ世界を救ってくれた!」


王様も勇者をたたえます。


「いえ、私は女神様との約束を果たしただけです」



そう言って若者は謙遜しますが、人々の歓声は鳴り止むことを知りません。


勇者は王様から騎士として、城に残るように言われますが勇者はそれを断りました。


それから勇者は世界を回り、困った人を助ける旅に出ます。

しかし、その途中で勇者の姿は、どこへとももなく消えてしまいます。


勇者が消えたことを知ると、皆が慌てて勇者の姿を探し回りました。


『勇者は天界へ導かれました…… 世界に危機が訪れたなら、再び勇者は現れるでしょう』


女神様が天界へ導いたとのお告げが国中に届き、皆は驚きます。


しかし、勇者が天界に導かれた事を知り、皆は女神様と勇者にいつも祈っています。

いつまでも平和が続きますようにと。


おしまい。



****



 どうだ!渾身の読み聞かせだったぜ!

演技を終えた若干高いテンションで、どうだと言わんばかりにエリカちゃんの方を見てみます。

しょっぱなの食いつきはすごかったから、リアクション期待してるぜ!



…………


……


エリカちゃん、コテンと横になって爆睡してます。

ええ、盛大によだれをたらしながら、そりゃあもう、ぐっすりと……


俺の頑張りを、返せ~~~~っ!!!!



「アーサー様、名演でしたね……」



そして振り返れば、リーラが生暖かい目で俺を見つめています。


いつからいたんでしょうか?



なんだか泣きたくなってきました。 グスン……











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