プロローグ
連続更新3/1
俺の名前は、秋葉 豊 28歳、現在絶賛ニート中です。
まあ、何でこうなったかといえば、大学を卒業してから中堅と言われていた機械メーカーに就職したんだが……
開発職を希望して入社当初は、希望部署に配属されてそれなりに頑張ってたんだが、部門再編で何故か営業職に。
どうも会社の経営がヤバかったらしく、自分で開発した機械を自分で売るハメになっちまった。
まあ、もともとそんなに対人スキルが高くない俺としては、営業職は苦痛でしかなかったんだ。
とりあえず、再就職先も探せないほど超絶ブラックな環境でも、何とか頑張ってた。
そんな時、転機が訪れた。リストラと言うか会社が希望退職者を募ったもんだから、二つ返事でそれに飛びついたんだ。
ホントは生産ラインや流通関係の社員が対象だったらしいんだが、その辺は人事にゴリ押ししてねじ込んだ。
うん。営業で培った押しの強さが、こんな所で役立つって皮肉だよね。
いや~、退職金プラス相応の慰労金を貰って、ようやくあの暗黒の職場からオサラバできた。
退職日に嬉しくて飲み過ぎちゃって、家に帰って一晩経ったらさ……
なんか燃え尽きてた。うん、真っ白に。
そうして、ズルズルと怠惰な日々を過ごしてたら、あっという間に1年が過ぎ、今や立派にニートしてます。
再就職? うん、明日から本気出す。
っと、まあそんな優雅なニート生活を堪能していた俺に、一通のメールが来たのよ。
どうやら前に勤めていた会社が本格的にヤバイらしく、同僚達も退職して起業するらしい。
そこで開発職のメンバーとして、俺に白羽の矢が立ったんだってさ。
そんで今日、久々に同僚達と再会して、新しい事業計画とか話し込んで、久々に楽しい時間だった。
いい気分で酔っ払って、そろそろニート生活にも区切りをつけなきゃな。なんて、考えていたんだ柄にもなく。
同僚達と繁華街で別れて、駅に向けてぶらぶら歩いてたら、さっきまで一緒に飲んでた後輩の女の子が先を歩いてたんだよ。
ええ、紳士としては駅まで送っていくのが、筋ってもんでしょ。
いや、やましい気持ちなんてこれっぽっちも…… 財布の中の薄いやつとか何も考えてないし……
やっぱり、ニートしてると会話に飢えてるっていうか、人恋しくなったりもするじゃん。
いろいろと話しながら、2人で駅に向かってたんだけど。
駅と繁華街の間にある、幹線道路の信号待ちをしてた時だった。
ここは夜間でも交通量が多いし、危ないんだよなー。 なんて考えてたんだ。
信号が青に変わって女の子が渡り出した時、信号無視のトラックが突っ込んできた。
アルコールの入った脳みそで、よくもまあ体が動いたもんだと、自分でもびっくりしたね。
女の子の手をとっさに掴んで、グイッと引っ張って歩道側に引き寄せたんだ。
その反動で足元がフラついて、ヤバイと思った時には女の子と自分の位置が、見事に入れ替わってました。はい。
いや、走馬灯とかあるじゃないですか。死ぬ間際って。
実際体験してみると、俺の場合、けっこう冷静で、『あ~、こりゃ直撃コースだわ』 とか『冷蔵庫の牛乳どうしよ?』
そんな事考えてたら、プツンと視界がブラックアウト……
なんか、呆気無い人生だったなぁ。
なんて考えてたら、目の前になんか白いモヤが出てきた。
お迎えかな?死んだ両親とか爺ちゃんに会えるのかなぁ?
って、ちょっと感傷的になってたんですよ。
うん、でもさぁ……
目覚めて、最初に視界に入った人の顔が、モザイクかかってたら、みんなはどんな反応するかな?
「うわ~~~~~っ!!!!」
俺はびっくりして思いっきり、叫んだよ。うん。