朝の夜に…
あるところに、人々が眠るその空の低いところに、太陽が輝く国がありました。
その国は朝の国。
朝の国では、一日を通して太陽は東にあり、辺りはいつでも黄金の光に満たされています。
そんな国に、アルノーというまだ幼い少年がいました。
アルノーは、母親と二人暮らし。
大好きだった父親は、去年いなくなってしまいました。
アルノーは母親に、どうして父親がいなくなってしまったのかと尋ねました。すると母親は
「夜の国のお星様になったのよ」
と、アルノーにそう告げました。
朝の国に、明るい夜の時間が訪れます。
「アルノー、もう寝る時間よ。さぁ、ベッドに入っておやすみ」
でもアルノーは眠くありません。
「じゃあママ、僕が寝るまで本を読んでよ」
「いいわよ。今日はどのご本にしましょうか。」
そういって母親はコーヒー色の本棚を探し始めました。
そうしてすぐに、「これがいいわ」と一冊の本を持ってきました。その絵本には手書きで、
“ベンの冒険”
と書かれています。
母親は表紙をめくって、本を読み上げました。
……………………………
ベンの冒険
夜の国に、ベンと言う少年が住んでいました。
ベンは夜の国の暗さが怖くて毎日泣いてばかりいました。
そして毎日、神様にお祈りをしました。
「僕を他の国へ連れて行ってください」
ある日、いつものようにベンがお祈りをしていると、暗い窓の外からスーっと光が差して、天使がやってきてベンに告げました。
「君をほかの国へ連れて行ってあげる」
こうしてベンは天使と一緒に、ほかの国へ旅を始めたのです。
……………………………
「あらアルノー、もう眠そうね。今日はここでおしまいにしましょうね」
アルノーは眠そうな目でコクリと頷きました。
母親が部屋から出て行こうとすると、「ねぇ」とアルノーは尋ねました。
「パパは夜の国のお星様になったんでしょ?夜の国は暗くて怖いって。パパがかわいそう…」
アルノーは今にも泣き出しそうです。
「そんなことないわ。アルノーのパパは昔夜の国に住んでいたけれど、夜の国はとても楽しいところだって言っていたわ。だからアルノー泣かないで。パパは夜の国からいつもアルノーを見守っているのだから」
そんなこと出来っこないよ、とアルノーは口ごもります。
「朝の国には星がないから。だからパパは僕のことなんて見られないよ。僕だってパパに会えないんだっ」
アルノーはそう言ってふとんを頭まで被ってしまいました。
そうして泣きながら眠りに就きました。