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氷の神獣 青の獣人  作者: ナツツバキ
外界育ちの獣人
4/5

ゴブリンに遭遇

「あなたがレイですよね?」



再度尋ねると

やっと悶えていたレイが起き上がった。

不思議そうに見つめられてちょっとドギマギする。


「君は誰?」


[紗奈・・・です。]


「サナ・・・うん、僕がレイだよ。」


レイは小さくつぶやくと黙り込んでしまった。あまりコミュニケーションが得意ではないらしい。ちなみに私は人見知りで敬語になっていた。



「その、なんで僕の名前知ってるの?もしかしてシロ兄に?」


[シロ兄?]

自分の主を想像していた私は聞いたことの無い名前に聞き返した。


「うん、白髪で、いつでもファー付きのコートを着ていて・・・」


[あ、ああぁ。うんその人だよ。]


私の中の主の特徴とピッタリ合う人だった。ていうか、まんまだな。シロって。


「後さ、なんで僕、君の言葉がわかるのかな?」


[その耳のお陰じゃない?]

そう言いながらさっきから落ち着かなげに震えているレイの三角形の耳を見つめた。


「ああ、やっぱりこうなってるのか。」

自分の耳を触ってから自分の青い長い髪を目の前に掲げたレイは小さく呟いた。


「はぁ、じゃあ最後。ここはどこ?」


二人で周りを見回した。



前・・・森。


後ろ・・・森。


右・・・森。


左・・・森。



森×4=深〜い森。



結果、深い森の中だということがわかった。



「もしかして外界かな?」


[外界?]


「この大陸の三分の一をしめる森の事だよ。魔獣が多すぎるため人間は侵入不可なんだって。入れたとしても生きて帰る事は出来ない・・・」

そう言いながらレイはゴクリと唾を飲み込んだ。

・・・もし、ここが外界なら。


[生きて帰れるよね?・・・とりあえず立てる?]

だんだんと怖くなってきたのでたずねた。動けないより良いだろう。


ジタバタとレイがもがいていたが結局犬のお座りの姿勢で止まった。


「だめだ。立てない。」


[うーん、困ったね。このままじゃ食べられちゃうかも。]

半分だけ冗談で言ってみると。

レイは血相を変えてなんとか立ち上がろうとふたたびジタバタし始めた。

面白かったのでさらに慌てさせてみる。


[私は戦えないし、逃げるしかないのにね。]


ジタバタジタバタ。


[レイ、逃げられないけど・・・どうする?]








・・・・・ふ、ふぇぇ。



え?泣いた?

・・・あ。

しまったこいつ一応7歳児だった!

あんまり流暢に対応してくるから忘れてた。


「うわあああぁぁぁん」


[うわあ!!ごめんごめんごめんなさい!大丈夫だから、守ってやれって頼まれたから!どんな化け物が来ても追い返してやるから!!]


ジタバタしていたために地面に倒れていたレイの頭をよしよしと撫でた。あまり7歳児の扱い方がわからない。そうだよな小1だもんな。


「グズっ、せっとく・・りょく・ない。」


うるうるの目で言われた。かわいいな。内容はむかつくけど。ようするに、私が小さすぎて化け物を追い返せるように見えないから説得力がないと言う意味だろう。


[大丈夫!これでも強いから・・・・多分。]


「うううー。」


[だ、大丈夫!だから泣かないで!]

ふたたび涙目になったレイに慌てて言った。






[結局四つん這いが一番いいね。]


「うううー。」

四つん這いでがっくりとした表情のレイが唸った。練習しなければ二本足では立てない。


[じゃあ私からも聞いていい?なんでこんなところに倒れてたの?]

「追われてたんだ。」

[誰に?私は今あなたが大変な事になってるから助けろってシロに言われたから来たんだけど。]

「・・・・・誰だろう。」

困惑したような焦ったような、顔をしながらレイは呟いた。


・・・。


[・・・レイってさ・・・・メチャクチャ記憶力ない?]

ちょっと残念なものを見るような目でレイを見ると、

「ち、違うんだ覚えて無いんだよ。家にいたのに気がついたらここにいた。でも、誰かに追われていたっていうのはわかるんだ。」

[・・・。]

「と、とりあえずここにいたら魔獣にみつかりやすいと思うんだけど。・・・」



「「「グアアアアァァァ」」」



何かが叫びながら飛び出してきた。

三頭身で濁った緑色の肌に尖った耳が付いていて、黄緑色の目をランランと輝かせて獲物(私達)をみている。服はボロ雑巾のような服と言えないようなものだった。


「あ!ゴブリン!」

レイが飛び出してきたものを指差しながら叫んだ。

・・・あ!ゴブリンってゲームとかによく出てくるあのゴブリンですか。

ゴブリンは棍棒を振りかざし今にも襲いかかろうとしている。

[レイ!人に指差しちゃだめだよ!]

そう叫びながら飛びかかって来たゴブリンを蹴り戻した。

「え!?人か?これ。」





☆☆☆





サナの真似をしてゴブリンを蹴った。両手を地面についてそこを軸に両足で蹴りを放っていく。


だが一回気がつかなくて顔を掴まれた。ザラザラとした緑色の皮膚が目の前にあってぞっとした。

むちゃくちゃに頭を振ってなんとか外そうとするがせっかく捕まえた獲物をゴブリンが離すはずが無い。両手で掴みかかってきた。サナは随分離れたところにいてこっちの状況に気づいていない。

握られた頭が痛い。こうなったら、


ガブッ


目の前の緑色の手に噛み付いた。ゴブリンが離してくれるならなんでもよかった。だけど、まさか噛み付いた手がちぎれるとは思わなかった。ゴブリンの生暖かい血が顔にかかる。ギャアアと声を上げてちぎれた手を抑えながらゴブリンが下がった。唖然としていたが自分がまだゴブリンの手を咥えていたのに気が付き慌てて吐き出した。


「うえっ、まっず!不味すぎ!何これ!?」


・・・初めて魔物の腕を噛みちぎったにしてはなんか違う反応なような気がするがどうでもいい。こんなに不味いものを食べたことが無い。砂の方がまだいい気がする。


[うえっ!何これ!不味い!!]


すこし離れたところで同じくゴブリンをかじったサナが叫んだ。

[味覚が変になる〜]

ゴブリンは仲間が怪我したせいでどっかに逃げて行ってしまった。





こうして人生初の魔獣との戦闘は幕を閉じた。



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