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渋谷は多くの人で賑わっている。
冬休みを謳歌している学生が待ち合わせし合い、それぞれの行きたい場所へと向かっていく。その中に桜と由美がいた。
「久しぶりの渋谷だー」
桜は嬉しそうに笑っている。しかし、由美は浮かない顔をしていた。
「ねえねえ、ちょっと早いけどお昼にしない?」
「そうね、そうしましょ」
彼女らが向かったのは、チェーン店のファミレスだった。駅から若干遠いが、人はそこそこいる。そのほとんどは彼女らのような受験生だったり、一年生や二年生がたむろっている。
「ねえ、桜」
「ん?」
桜はドリンクバーで作ったミルクティーを混ぜていた。
「聞きたいことあるんでしょ?」
由美は決心して、桜に聞いた。
それでも、桜はミルクティーを混ぜる手は止めない。
「ないよ。だって、聞きたかったことわかっちゃったからなー」
桜はそう言ってほほ笑んだ。
「由美ってわかりやすいんだもん」
「ごめんなさい」
今にも消えそうな声で由美は謝った。
「……うん」
「ほんとうにごめんなさい」
伏せた顔を上げた彼女の目には涙がたまっていた。
「勝手に手紙を見てごめんなさい!」
「……うん」
「手紙を桜の下駄箱に入れてごめんなさい……」
「……うん」
桜は笑って由美を許した。
しばらくして桜は由美の目を見て言った。
「本当のこと言ってくれてありがとね」
―由美は手紙を盗んでいないのか……
料理が来て、すっきりしたような顔で由美と桜は食事をした。
食べ終わった頃には店が混み始め、早々にファミレスをあとにした。




