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砂男(サンドマン)der sandmann 」ETAホフマン原作(その2)ダイジェスト版  自動人形に恋して

作者: 舜風人

砂男(ダイジェスト版)続きです。

さて晴雨計売りのコッポラから不思議な望遠鏡を買ったナタナエルは、

早速窓越しにスパランツアーニ教授の窓を覗いてみた、


そこにはオリンピアの燃えるような瞳がじっとこちらを見ているのであった、


さっきまでのうつろな死んだような目は生きいきと、輝いていた。



さて次の日窓を開けてみるとスパランツアーニ教授の窓はぴったりとカーテンが引かれていた、

その次の日も、締め切られたままだった。


オリンピアへの憧れで気も狂わんばかりのナタナエルは

クララのことなどすっかり忘れ果てていたのだった。

家を出て教授の家の和えへ行ってみると家政婦があわただしく出入りしている。


聞くと何でも明日、盛大に宴会を催すのだという。

そしてその時初めてオリンピアをご披露するというのだ。


ナタナエルはあわてて帰宅するともう招待状は届いていた、


次の日定刻より前にナタナエルは出かけた。

するとオリンピアは美しく着飾って、表れた。

演奏会が始まった。オリンピアは実に巧みにピアノを弾いて見せた。


続いてアリア、オリンピアは美しい声を響かせた、


ナタナエルは思わず大きな声で「オリンピア」と、叫んでいた。

一斉に振り向く群衆の眼。

踊りが始まるとナタナエルはさっと、オリンピアのもとへ行って手を取っていた。


氷のように冷たい手だった。ぞっとして、思わず顔を見ると、

愛の炎が燃え上がって一気に踊り始めていたのだった。


二人ははてもなく、踊り続けた、

踊りながらナタナエルはしきりに愛の言葉をささやいたが、

オリンピアの返事は、機械のこすれるような『ああ、ああ』という返事ばかりだった。


しかし恋に狂ったナタナエルには何も見えないも同然。

ふと気が付いてあたりを見回したナタナエルはもう広間に誰もいなくてがらんとしているのだった。

近寄ってきたスパランツアーニ教授h亜意味ありげにニタット笑うと

『こんな娘でもよかったら、今後ともよろしく」というのだった。


そしてナタナエルがお別れのキスをしたとき、オリンピアの唇は氷のように冷たかった。

ナタナエルは、亦も背筋がぞっとするのだった。


さて次の日、大学では教授の宴会の話で持ちきりだった。


「どうかね。あのオリンピアという娘。ギクシャクしててまるで、でく人形じゃないか?」

『そうだね、まるで死んでるようだし、生気というものがない、薄気味悪いったらありゃあしない」


ナタナエルは『君たちなにを言ってるんだ、あの天使のような娘がでく人形だって?」



それからというものナタナエルは毎日オリンピアのもとへ通いづめ。

傍らに座って愛の言葉をささやき続けたのだった。

詩を朗読し、物語を聞かせてもじっとオリンピアは聞き入ってるばかり、あくび一つしないでじっとこちらを見つめている。


そしてお別れの挨拶をするときだけやっと、「ああ。ああ。お休み。」というだけだった。


確かに断片的な言葉しか話さないこてゃ不可思議であった。

しかしナタナエルにはもう言葉なんかどうでも、よかったのだった。


しばらくしてナタナエルはスパランツアーニ教授にそれとなくオリンピアとの結婚を承諾してくれと申し込んでいたのだった、


教授はそれはあなたのご意向次第と許してくれたのだった、

次の日、

早速ナタナエルはオリンピアのもとへ指輪を持って結婚申込みにでかけた。


すると家の中からドタバタと大きな物音が聞こえる。


『放せ、この悪魔野郎」

『目玉をこしらえたのは誰だい?」


『うるさいぜんまいを作ったのはこのわしだ」

『へっぽこ時計やめ。失せろ」


ナタナエルが部屋に入ると、そこには、コッポラと、スパランツアーニが

オリンピアの足と腕をつかんで引っ張りあっているではないか。


次の瞬間コッポラはオリンピアの胴体でスパランツアーニをひっぱたきあっと言う間に


オリンピアを抱えて出て行ってしまったのだった、


見るとオリンピアの顔には目がなかった。


そう、オリンピアは人形だったのだ。



スパランツアーニは


『何してる早く追っかけろ、取り戻すんだ、

わしが20年かかって作った大事な自動人形を。


おお、そこに目玉があるぞ。」


見ると床には血だらけの目玉が2個ごろんと転がっていた。


それをスパランツアーニは握りしめ、はっしと、、ナタナエルめがけて投げつけた。


ナタナエルの胸に目玉は、へばりついた。


とたんに、ナタナエルは


狂ったようにわめきだした。


『目玉だ。目玉だ、ひゅうひゅう、くるくるまわれ。


人形だ。でく人形だ、くるくるまわれ」


駆け付けた人々が取り押さえようとしてもナタナエルは暴れまわりとうとう押さえつけられてそのまま精神病院へ送り込まれてしまったのである。


今回の一件でスパランンツアーニ教授は職を解かれて町を去り、

コッポラの行方も不明だった。


ナタナエルはそれからやっと落ち着き家に引き取られていた。


「クララこんな僕を待っててくれたんだね」


ナタナエルに狂気の兆候はもうなかった。


それから、しばらくして。一家4人で郊外に引っ越ししようという日に


町へ出て買い物も済ませて、

ふとクララが

『ねえ塔に登ってみない」

というのだった。

クララとナターナエルは二人で塔に上った。


クララが「あそこになにか近づいてくるわ」

というのでナタナエルが思わずポケットに手を入れると、

そこには、あのコッポラの望遠鏡があった、

それを覗いたナタナエルは

突然

『まわれ、まわれ、木の人形。

まわれ。まわれ。でく人形」


というが、クララを抱きあげて塔から突き落とそうとするのである。

眼は血走り、気味の悪い笑い声をあげながら、


急いで駆け上がったロータルはあわててクララを奪い取ると一目散に塔を駆け下りていた。


一方ナタナエルは身軽に塔の上を飛び回り

『まわれまわれ火の輪。まわれまわれ火の輪」

と叫び続けていた。


と騒ぎを聞きつけて集まった群衆の中に、

コッペリウスがいた。


人々が塔に上ろうとしたとき、

人々を押しとどめて、コッペリウスは

『そのうち自分で降りてきますよ」というのだった。


ナタナエルは下を見てコッペリウスがいるのを見ると

『わあ、きれいな目だまだ。きれいな目dまだ」というや

ひらりと身を躍らせて飛び降りた。

舗道の石に頭を打ち付けて頭蓋を砕けたままナタナエルは息を引き取ったのである。


その間に、コッペリウスはかき消すようにいなくなっていた。


それから何年かたって、

遠い街でクララを見かけた人がいた。


優しそうな夫とかわいい子供に囲まれて庭にいたという。

明るいクララは幸せな家庭を気づいたのだった、



心乱れた、ナタナエルには決してできない幸せであった。


(終わり)








付記




砂男はこれを脚色してバレー「コッペリア」になっていますね。



コッペリアを知らない人はいないだろう。

これはホフマンの「砂男」(sandman)を原作とするバレーである。

フランス人はことのほかホフマンが気に入ったようで、多くの作品が翻訳されて当時紹介されている。

そしてフランス小浪漫派のネルバル、ゴーティエ、などにも多大な影響を与えたのだった。


しかし、このコッペリアはホフマンのいささか狂気じみた物語の設定とは異にして明るい村娘の恋物語である。


原作はもっと暗い。


自動人形オランピアに魂を奪われて生身の女であるクララに興味を失い、破滅していく青年の話であるから、コッペリアはそれに比べればなんと明るいコメディであろうか。


通常、自動人形オランピアは「芸術」をクララは「俗生活」をアレゴリーされていると解釈されている。

芸術にのめりこんでいって、実生活を忘れて破滅してしまうという、ホフマンの作品によくあるパターンでもある。








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