表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/19

第2章 1話

月曜の朝、教室に入った瞬間、何人かがこちらを見た。


それだけなら、別に珍しくもない。遅刻しているわけでもなく、変な格好をしているわけでもなくても、人が入ってくれば視線くらいは向く。

でもその日のそれは、少し長かった。


目が合っても、すぐには切れない。

何か話していたはずのやつまで途中で一度こちらを見て、隣に何か言う。小さく笑ったようにも聞こえたけれど、はっきり聞き取れるほどではなかった。


僕は気づかないふりをして、そのまま自分の席へ向かった。


途中で朝倉と目が合った。


朝倉は友達と話していた顔のまま、ほんの少しだけ表情をやわらげた。僕も立ち止まるほどではなく、軽く会釈を返す。

ただそれだけだった。


ただそれだけのことで、背中のほうの空気が少し動いた気がした。


気のせいかもしれない。

でも、そう思うには、教室の視線が妙にこちらへ残っていた。


席に着いて、鞄を机の横に掛ける。

何が原因なのか分からないまま、少し落ち着かなかった。


しばらくして、水野が来た。


「おはよ」


「おはよう」


それだけ言って、水野は自分の席に座る。

いつもと変わらないやり取りだったのに、その日はそれだけで少し楽だった。原因が見えないまま一人で考えている時間が、いちばん気持ち悪い。


授業が始まっても、うまく集中できなかった。


黒板を見ていても、ときどき横や後ろの気配が引っかかる。誰かが小声で話すたび、自分のことかと思う。考えすぎだとは思った。けれど一度そう思ってしまうと、なかなか頭から離れなかった。


一時間目が終わって、教室の空気が少し崩れる。


そのタイミングで、水野がこっちへ来た。


机の横に立って、妙に楽しそうな顔をする。


「よう、色男」


「は?」


意味が分からなくて、そのまま水野を見た。

水野は笑って、机に手をつく。


「そんな真顔で返すなって。朝から変だったろ、教室」


僕は黙ったまま、水野の次の言葉を待った。

水野は少しだけ声を落とす。


「たぶん理由、分かった」


そこでようやく僕も口を開いた。


「……何」


「朝倉さん」


名前を出された瞬間、胸のあたりが少しだけ固くなった。


「この前の休み、お前が朝倉さんと二人でいたって話、回ってる」


すぐには意味が入ってこなかった。

入ってきたあとで、椅子の脚がわずかにずれたみたいな落ち着かなさが来た。座っているのに、足元だけが定まらない感じだった。


「誰が言ってるの」


「誰っていうか、見たやつがいたんだろ。駅とかモールとか、そのへんで」


水野は肩をすくめる。


「しかも最近ちょっと仲いいらしい、みたいなのまでついてる」


そこまで聞いて、朝の視線の意味がようやくつながった。


つながったからといって、楽になるわけではなかった。

むしろ形になったぶん、余計に面倒だった。


「……大袈裟だよ」


水野が眉を上げる。


「大袈裟ってことは、何もないわけではないんだな」


「そういう言い方ずるいな」


「じゃあ、どういう言い方ならいいんだよ」


僕は少し息を吐いた。


ここで全部そのまま言うつもりはなかった。

最初がどこだったかも、何を一緒に知っているのかも、教室の真ん中で言うようなことではない。


「図書室で、たまに会うから」


「図書室?」


「たまたま会って、少し話すようになっただけ」


半分は本当だった。


だから完全な嘘をついている感じはしないのに、妙に座りが悪い。水野はそのまま僕の顔を見ていた。


「で、この前、外でも会った」


「……まあ」


「まあ、って何だよ」


「たまたまだよ。そんな騒ぐことじゃない」


言いながら、自分でも苦しいと思った。

たまたま、で済ませるには、もう少し色々ありすぎることくらい、自分がいちばん分かっていた。けれど、それを学校で通じる言葉にしたくなかった。


水野は少し黙ってから、笑うでもなく短く息をついた。


「ふうん」


その短い返事が、妙に引っかかった。


「別に、仲悪いわけじゃないんだろ」


「悪くはない」


「だよな」


そこは否定できなかった。


水野はようやく机から手を離した。


「まあ、分かった。今日のあれはそのせいだと思う。目立つやつと目立たないやつが休みに二人でいたら、みんな勝手に話作るから」


それだけ言って、自分の席へ戻っていく。


僕はノートを開いたまま、しばらく動かなかった。


図書室のことだけ出して、そこまでにした。

校舎裏のことは言っていない。猫のことも、最初のことも。


たぶん、それでよかったのだと思う。


それでも、一度意味を持ってしまった視線は消えなかった。

もう前みたいに、ただ同じ教室にいるだけでは済まないらしい。


そのことが、朝からずっと落ち着かなかった。

章が変わった結果、セッションも変えたのですが生成させるのにかなり苦労しました。

呼び名が変わったり、話が変わったり資料を作ってもぬけがあるとどうしてもそこは自由に書かれますね。。。

中々プロンプト通りにも作ってくれないし前途多難です。。。(正しい日本語使えてるのでしょうか。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ