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16話

家に帰って、そのまま自分の部屋に入った。


ドアを閉めると、ようやく今日が終わった感じがした。靴を脱いで、私服のまま少しだけ立ち尽くして、それから部屋着に着替える。髪を軽くまとめ直して、ベッドに倒れ込むみたいに横になった。布団が沈む。今日ずっと外にいたぶん、その柔らかさだけで少し力が抜けた。


そのタイミングで、スマホが鳴った。


画面を見ると、星名からだった。


――どう? 楽しかった?


らしいな、と思う。


余計な前置きもなくて、聞きたいところだけ聞いてくる感じが、いかにも星名だった。私はしばらく画面を見たまま、返す文を考える。


楽しかったと思う。


たぶん、それで合ってる。


変に気を遣った感じもあまりなかったし、思っていたよりずっと普通に話せた。いや、普通どころか、まさか人前で寝るとは思わなかった。あれはさすがにどうなんだろうと思う。ちょっと目を閉じるだけのつもりだったのに、気づいたら普通に寝てたし。


でも、不思議だった。


彼の前だと、なんというか、素っていうか。自由になるっていうか。気を張らなくていい感じがある。別に何でも受け止めてくれるとか、そういう大げさな話じゃない。ただ、変に構えなくて済む。今日そうだったし、思い返せば、最初にちゃんと話した時もそうだった気がする。


そこまで考えて、私はスマホを胸の上に乗せたまま天井を見た。


思えば、最初からそうだったなと思う。


四月に、あの猫を見つけた。


校舎裏の、あんまり人の来ないところで、最初に見た時は勝手にびっくりした。そこから不定期で餌をやるようになった。別に褒められたことじゃないのは分かってる。たぶん普通に良くないし、ちゃんとしてる人に見つかったら怒られるんだろうなとも思ってた。


でも、私にはあれがちょうどよかった。


息抜き、っていうのが一番近い。


別にクラスメイトが嫌いなわけじゃない。むしろ好きだし、教室でわいわいやるのも嫌いじゃない。クラスでの自分も、そこまで嫌いじゃない。ああいうふうに話して、笑って、適当に騒いでるのは普通に楽しい。


ただ、たまに一息つきたくなる。


ちょっとだけ誰にも合わせない時間がほしくなる。猫に餌をやってる時間は、たぶんそのためだった。


GW明けの朝も、そうだった。


なんとなく気分が乗らなかった。別に嫌なことがあったわけじゃない。ただ、休み明け特有のだるさみたいなのが抜けなくて、そのまま教室へ行く気になれなかった。いつもは昼に見ることのほうが多いから、朝はいないかもなと思いながら、なんとなく校舎裏へ行った。


そしたら、その日はいた。


だからそのまま餌をやってた。


で、見つかった。


最悪、とは思った。さすがに思った。よりによって見られた、って。


でも、見つかったのが彼でよかったとも思った。


橘は、私にあんまり興味なさそうだったから。


クラスメイトだし、名前も知ってる。目立つタイプじゃないのに、逆に印象には残る人だった。本を読んでることが多くて、教室ではほとんど誰とも話さない。いつも一人だけ、よく話してる相手がいるけど、それ以外にはわりと静かで、なんとなく自分から輪の中に入っていく感じもしない。


良くも悪くも、こっちを必要以上に見てこない人。


だから、まだよかった。


しかも、内緒にしてって言ったら、ちゃんと頷いてくれた。あれから今まで、誰かにそれっぽいことを言われたこともないし、たぶん本当に誰にも話してないんだと思う。


喋ってみると、案外いい人そうだったし。


そこまで考えて、私はスマホをもう一度見た。


星名への返信は、まだ打ってない。


でも、なんて返すかは、もうだいたい決まっていた。


楽しかった。たぶん、かなり。


それにしても、あの日からこんなに喋るようになるとは思わなかった。

同セッションで生成し続けるとどうしても、重たくなります。

その為、セッションを変える必要があるのですが、その変えた後の生成が一番苦労しますね。

中々うまく出なくなります。

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