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12話

三階のフードホールは、昼前のわりにもうけっこう人がいた。


まだ満席ではないけど、空いている席を選べるほどでもない。家族連れとか、買い物の途中らしい人たちが、トレーを持って通路を行き来している。朝倉は少しだけ足を速めて、窓際じゃない四人席を見つけると、そっちへ曲がった。


「ここ空いてる」


「うん」


とりあえず鞄を椅子に置いて、席を押さえる。座った瞬間、歩き回っていた時間が一度そこで切れた気がした。


「じゃあ、頼んでこよ」


「なに食べるの」


「んー」


朝倉は店の並びを見渡して、それからあっさり言った。


「ちゃんぽん」


「重くない?」


「おなかすいたー」


それを言う声が妙に素直で、少し笑いそうになった。


僕は結局、いちばん無難そうなうどんにした。朝倉は本当にちゃんぽんを頼んで、受け取り用のブザーをトレーの横に置く。食べ物の選び方まで別に意味があるわけじゃないのに、こういうところでも少し違うんだなと思う。


席に戻って、ブザーを机の上に置く。


フードホールのざわめきが、今度は少し遠くなった。近くの席の会話とか、食器の音とか、番号を呼ぶ声とかが重なっているのに、向かい合って座るとそこだけ少し落ち着く。


朝倉は頬杖をついて、メニュー看板のほうをぼんやり見た。


「けっこう歩いたね」


「うん」


「でも、まだ見れる」


「元気だな」


「橘が体力なさすぎるだけじゃない?」


「否定はしない」


朝倉が笑う。


その顔を見ていたら、さっきから思っていたことが、そのまま口に出た。


「朝倉って、思ったことそのまま言うよね」


「え、そう?」


「自分のこともよく話すし」


朝倉は少しだけ首を傾げた。


変なことを言ったつもりはなかった。ただ、本当にそう見えたから言っただけだった。学校にいるときより、今の朝倉はずっと分かりやすい。何を見て、何に反応して、何を面白がっているのかが、そのまま表に出てくる。


「クラスで見る朝倉とは少し違うけど」


そこまで言って、朝倉の視線がこっちに来る。


僕はそのまま続けた。


「猫に餌をあげてる時の朝倉みたい」


朝倉が一瞬止まった。


「え?」


目を見開く。


それでも僕は、そこまで大きい反応だと思っていなかった。言葉の勢いが止まらないまま、もう一つ足す。


「僕は今の方が話しやすいけど」


朝倉は何も言わなかった。


ただ、さっきまでの軽い顔のままじゃなくなって、ほんの少しだけ表情が止まっていた。


そのタイミングで、机の上のブザーが鳴った。


電子音がやけに唐突だった。


「あ、僕のだ」


立ち上がる。


会話が切れたことを、特に不自然とも思わなかった。そのまま受け取り口へ向かう。うどんの湯気が立っていて、店員からトレーを受け取る。


そのときの朝倉の顔は、見ていなかった。


あとから思い返せば、見ていたら少しは分かったのかもしれない。でも、そのときの僕は本当に何も気づいていなかった。


僕が席を外しているあいだ、朝倉は一人で机に肘をついたまま、そっと髪を耳にかけたらしかった。出た耳が少し赤くなっていて、一つだけ小さく息を吐いた。けど、そんなのは僕のいないところで終わっていて、戻ったときにはもう、いつもの顔に近かった。


「おかえり」


「ただいまって言う場所じゃないでしょ」


「細かいなあ」


そう言った声は、さっきと同じ明るさだった。


少し遅れて朝倉のブザーも鳴る。今度は朝倉がちゃんぽんを取りに行って、戻ってくる。白い湯気が上がっていて、ちゃんぽんの匂いはうどんよりずっと強かった。


「熱そう」


「熱いでしょ、たぶん」


「なのに頼んだ」


「おいしそうだったし」


それだけだった。


食べ始めると、会話は少し減った。箸を動かして、たまに短く話して、また食べる。朝倉はちゃんぽんをふうふうしながら食べていて、僕はうどんを先に半分くらい片づけた。さっきの言葉を、朝倉は蒸し返さなかった。僕もわざわざ戻す気はなかった。


ただ、空気が変に重くなることもなくて、それは少し助かった。


食べ終わるころには、フードホールはもっと人が増えていた。席を立つ人と入れ替わるように、また別の家族が入ってくる。僕たちはそれぞれトレーを持って、返却口のほうへ向かう。


金属の台に食器を置く音が、短く鳴る。


うどんの丼を返して、ちゃんぽんの器を返して、手が空く。座っていた時間が終わると、また今日の続きが再開する感じがした。


「このあとどうするの?」


僕が聞くと、朝倉は少しだけ上を見た。


「んー」


それから、すぐ近くの案内表示に目をやる。


「同じ三階に本屋さんあるから行く?」


「本屋」


「本好きでしょ?」


その言い方が妙に自然だった。僕のことをちゃんと見ていたうえでの提案みたいで、少しだけ返事が遅れる。


「……まあ」


「じゃ、決まり」


「いいなら行こうか」


朝倉は笑って、「うん」とだけ言った。


そのまま二人で、三階の通路を本屋のほうへ歩き出した。

基本的な生成の流れは大体3つから5つほどのセッションを分けてます。

1,大枠の流れを決めるセッション~各シーンの大体の流れを決める

2,シーンの詳細な部分と小説生成時のプロンプト作成

3,小説生成

4,3で気にいるのじゃなければ、再生成

5,純粋にネタが何も思いつかない時

みたいな感じで役割を分けています。

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