10話
朝倉は、そのまま一階の雑貨屋に入った。
何かを決めていたというより、目についた方向へそのまま曲がった感じだった。入口の近くには季節ものの小物が並んでいて、奥の棚にも細かい雑貨が詰まっている。僕は一歩遅れて、そのあとを追った。
「見て、これ可愛くない?」
入ってすぐ、朝倉が立ち止まる。
手に取っていたのは、小さな家の置物だった。白い陶器でできていて、屋根の縁だけ細く色が入っている。派手ではないけれど、目には残るやつだった。
「僕に聞かれても」
「なんで」
「そういうの分かる感じに見える?」
「見えないけど、見る目あるかもしれないじゃん」
勝手な理屈だった。
朝倉はそれを棚に戻して、今度は別のものに手を伸ばす。木でできた小鳥だった。隣のフォトフレームも少し覗き込んで、すぐまた別の棚へ移る。動きは速いのに、雑に見ている感じはしなかった。目についたものを順番に拾って、その場その場でちゃんと楽しんでいるようだった。
「これは?」
「さっきよりは答えやすい」
「なにそれ」
「まだ分かるって意味」
「雑」
朝倉は笑った。
そのまままた棚を見て、ふっと手を止める。
「じゃあ、これは?」
視線の先に、小さな猫の置物があった。
手のひらに乗るくらいの陶器製で、丸まったままこちらを見ている。耳の形も左右できれいに揃っているわけじゃなくて、その少し崩れた感じが、校舎裏で見ていたあの猫に少し似ていた。
僕は少しだけ近づいて、それを見た。
「……いいんじゃない」
「ほんと?」
「うん」
それ以上は言わなかったけれど、朝倉にはそれで十分だったらしい。
「よし」
小さくそう言って、そのまま猫の置物を持ってレジに向かう。
「買うんだ」
「買うよ」
「いいの?」
朝倉はレジの前で振り返って、あっさり言った。
「いいの」
その返し方が妙に迷いなくて、僕はそれ以上何も言えなかった。
店を出ると、朝倉は買ったばかりの小さな袋を軽く揺らした。
「満足」
「早かったね」
「買い物なんてこんなもんでしょ」
「それで済むなら楽だね」
「楽だよ」
そう言いながら、今度は食品売場のほうへ向かう。雑貨屋の静かな匂いから、菓子と惣菜の匂いが少し混ざる場所へ変わる。歩くだけで、店の空気が少しずつ違っていた。
お菓子の棚の前で、朝倉はまた止まった。
色の多い袋が並ぶ棚を端から順に見ていく。もっと甘いもののほうへ行くのかと思ったのに、朝倉が見ていたのはせんべいや豆菓子の並ぶあたりだった。
「私、おかき好きなんだよね」
「へえ」
思ったままの声が出た。
朝倉は一袋取って、裏をちらっと見る。
「しかも、ちょっとしんなりしたやつが好き」
「しんなり?」
「そう。固すぎないやつ。少し湿ってるくらいの」
「だいぶ細かいね」
「分かると美味しいんだって」
分からなかった。
でも朝倉は本気らしく、棚の前でちゃんと選んでいた。見た目の印象だけなら、もっと別のものを選びそうなのに、そういうずれ方が少し面白かった。
「なんか意外」
「え、なんで?」
「もっと洋菓子とか好きそうだった」
「それも好きだけどね。でも家でつい食べるのはおかき」
「渋いな」
「弟と取り合いになるし」
そう言って、朝倉は笑った。
「弟いるんだ」
「いるよ。結構離れてるけど」
そのまま棚を見ながら、ぽつぽつ続ける。
「うち、両親と弟の四人。弟まだ小さいから、おかきとか置いとくとすぐなくなるんだよね」
「朝倉も食べるからじゃなくて」
「それもある」
否定はしなかった。
朝倉は袋を眺めて、また少し横へずれる。歩きながら話すみたいな調子のまま、自分のことを足していく。
「あと、編み物とかも好きだよ。家でできるし」
「編み物」
「その反応なに」
「ちょっと意外で」
「似合わない?」
「そこまでは言ってない」
「でも思ったんだ」
「少しは」
朝倉は小さく笑った。
「テニスもやるよ。中学のときはそこそこ頑張ってたし」
「それは意外じゃない」
「でしょ。そっちは分かりやすいもん」
話しながら、ゆっくり棚の前を進んでいく。わざわざ自己紹介している感じではなかった。目に入ったものに反応して、その流れで自分のことを話しているだけだった。だから聞いているほうも、変に構えずに済んだ。
「家族旅行も好き」
「急だね」
「急かな。お菓子見るとサービスエリア思い出すし」
「連想が雑なんだよ」
「でも分かるでしょ」
「分からなくはない」
「でしょ」
朝倉は満足そうにうなずいた。
「あと、知らない道を通るのも好き。暇つぶせること探すのも好き」
「よく分からない趣味だな」
「そう?」
「趣味っていうより、時間の埋め方でしょ」
「それが楽しいんじゃん」
言われてみれば、朝倉らしい気もした。何かを決めて動くというより、その場その場で面白そうなものを拾っていく感じが、さっきからずっと変わっていない。
朝倉は横目でこっちを見た。
「ちなみに、橘で暇つぶしてるわけじゃないからね」
「どうだか」
「ひど」
「今までの話の流れだと、わりと怪しいけど」
「ちゃんと一緒に来たかったから誘ったの」
言い切ってから、朝倉は少しだけ笑った。
そのままだと少し重くなるから、最後で軽くしたのだと分かった。
僕も棚のほうを見たまま言う。
「じゃあ、半分くらいは信じる」
「半分なんだ」
「全部は無理」
「けちだなあ」
そういうやり取りのまま、また歩き出す。
お読みいただきありがとうございます。
現行、この小説はChatGPTのPlus会員でその機能を使って生成してます。
PJを立ち上げて、いくつかのJsonファイルを添付して、いくつかのセッションにわけてます。
ちなみに、今回の生成時のプロンプトの文字数は8000文字でした。2000文字超えるとプロンプトはその4倍になりそうです。今の所。




