第4話:「クローゼットの吐息、秘密の共同生活」
「お母さんが来た……!」
前回のラスト、最悪のタイミングで部屋のドアがノックされました。
逃げ場のない愛梨が選んだのは、狭いクローゼットの中。
けれどそこには、すでにあの「過保護な悪魔」が待ち構えていて……。
日常と非日常が混ざり合う、至近距離の攻防戦。
ベリトの甘い意地悪に、愛梨の心臓はもう限界!?
二人きりの「秘密の共同生活」がここから始まります。
お母さんの足音が、ドアのすぐ向こうで止まった。
カチリ、とドアノブが回る音が、今の私には爆鳴響のように聞こえる。
「……っ!」
私は咄嗟に自分の口を両手で押さえた。
狭くて暗いクローゼットの中。吊るした制服や私服の隙間で、ベリトの体温……いや、悪魔特有のひんやりとした、けれど確かな存在感が全身に押し寄せてくる。
「愛梨ー? 本当にいないの?」
お母さんの声。すぐそこにいる。
もし今、クローゼットを開けられたら……。お母さんにはベリトが見えないとしても、私が一人でクローゼットに隠れて震えているなんて、変態だと思われてしまう!
焦る私の耳元に、熱い吐息が吹きかけられた。
「……そんなに強張っては、外に音が漏れてしまいますよ、マスター」
ベリトの長い指が、私の髪をゆっくりと掬い上げる。
暗闇の中で、彼の紅い瞳だけが怪しく、美しく発光していた。
彼はわざと、私の耳たぶをかすめるように低く囁く。
「……私の胸に顔を埋めていれば、呼吸の音も隠せます。……さあ、こちらへ」
抗う間もなく、ベリトの細いけれど強靭な腕が、私の腰を引き寄せた。
石鹸のような、そして嗅いだこともない魅惑的な香りが鼻腔を突く。
(この悪魔……わざとやってる……!)
恥ずかしさと緊張で、頭がどうにかなりそうだった。
やがて、「おやつ、置いておくわね」というお母さんの足音が遠ざかり、階段を下りる音が聞こえるまで、私たちは重なり合ったまま、その暗闇の中にいた。
第4話まで読んでいただき、ありがとうございます!
クローゼットのシーン、書いている私までドキドキしてしまいました(笑)。
横浜の普通の女子高生だった愛梨の日常が、ベリトという存在によって少しずつ、けれど確実に塗り替えられていく様子を楽しんでいただけたら嬉しいです。
これから始まる「悪魔執事との同居生活」、一体どんなトラブル(と甘い誘惑)が待ち受けているのでしょうか?
実は、今回のお話で出てきた「おやつ」は、横浜の駅前で売っている甘いものをイメージしていました。
次回も、愛梨とベリトの距離感に注目してくださいね!




