第1話:「静寂を切り裂く紅の輝き」
プロローグをお読みいただきありがとうございます。
いよいよ第1章から、舞台は現代の横浜へ。
普通の女子高生・愛梨の日常が、ある「指輪」を拾ったことで一変します。
美しき執事ベリトとの、衝撃の出会いをお楽しみください!
放課後の図書室は、私にとって唯一、自分らしくいられる聖域だ。
窓から差し込む横浜の午後の日差しが、古びた机の上に柔らかな四角い模様を作っている。
「愛梨ー!まだやってんの?」
静かな空間に、聞き慣れた明るい声が響いた。親友の喜代子だ。
彼女は私の前の席にドサリと座ると、覗き込むように笑った。
「あ、喜代子。もう終わるところ。……課題、大変だったでしょ?」
「もう、愛梨は真面目すぎ!終わったら一緒に、駅前のカフェ寄ってかない?新作のパンケーキ出たんだって!」
喜代子の屈託のない笑顔に、私も少しだけ肩の力が抜ける。
横浜の女子高生としての、なんてことない、けれど大切な日常の会話。
「ごめん、今日は図書室の片付け当番なんだ。先に帰ってて?」
「えー、残念。じゃあ、明日は絶対ね!バイバイ、愛梨!」
喜代子が手を振って図書室を出ていく。パタン、とドアが閉まり、再び静寂が戻ってきた。
「……さて、私も帰らなきゃ」
席を立とうとした私の目に、ありえないほどの強い輝きが飛び込んできた。
書架の足元。埃を被ったカーペットの上に、それは落ちていた。
真っ赤な、血のように鮮やかな石が嵌め込まれた、アンティーク調の指輪。
「……綺麗。さっきまで、こんなのあったかな?」
吸い寄せられるように指輪を拾い上げた、その瞬間だった。
指先から心臓へと、冷ややかな、けれど痺れるような衝撃が突き抜ける。
『――ようやく、見つけましたよ』
鼓膜を揺らす声ではない。脳内に直接響く、低くて、とろけるほど甘い声。
「え……っ?」
顔を上げると、そこには誰もいなかったはずの空間に、一人の男が立っていた。
体に吸い付くような漆黒の執事服。銀糸のような髪。そして、私を射抜くような紅い瞳。
彼は音もなく私の前に跪くと、震える私の右手を取り、その甲に熱い唇を寄せた。
「我が命、我が魂の主様。……お迎えに上がりました」
喜代子と笑い合っていた日常が、音を立てて崩れ去る。
横浜の、何の変哲もない図書室。
そこが、私と悪魔執事ベリトの、狂った運命の始まりの場所になった。
読んでくださってありがとうございます。
私のお気に入りのキャラ、ベリトがついに出てきました!
彼の「紅い瞳」と「甘い声」が、皆さんの頭の中でも再生されていたら嬉しいです。
そして、親友の喜代子との日常も大切に書いていきたいポイントです。
感想などいただけたら、執筆の励みになります




