異世界密室国宝消失事件
王国の国宝が、厳重な警備がされている部屋から無くなったのが先週のこと。
王妃は、王子の婚約者に弱音を吐く。
「困っているのよ。どうやって盗まれたのかわからないし、何より犯罪をする人間が特定できないと疑心暗鬼で王国の運営にも支障が出てくるのよ」
「王妃様。私、田舎育ちで学もないですけど、手伝えることがあればなんでも言ってください」
「その気持ちだけで嬉しいわ。ありがとう」
「盗まれた国宝って、高価な物なんですか?国宝の値段を聞くのも失礼ですが、売りさばけるなら、盗む動機になるでしょうから」
「まあ、一般庶民なら一生遊んで暮らせるでしょう」
「すごいですね。私の小さな国にはそんなの無いですよ」
「お金が動機なら、誰でも犯人になるからね。それこそ、私だって犯人でもおかしくはないわ。でもね、誰も盗むことができないのよ。国宝は保管庫にしまってあって毎日チェックされているの。それで、盗まれた日は特定できるんだけど、その間に保管庫に入った人間はいないと監視係は証言しているのよね」
「保管庫って、前に王妃様に連れていってもらった部屋ですよね。宝石とか高価そうな絵とかいっぱいあってすごかったです。あそこは出入り口がひとつしかなかったから、侵入できるとしたらそこしかないですよね」
「そうよね。でも、監視係は誰も出入りしていないって。考えられる可能性は、チェック係か監視係かなんだけど、仕事中はかならず複数人一緒で終わったら身体検査があるからその可能性もほぼ無いのよね」
「不思議ですね」
「不思議よね」
三日後、事件の真相が判明する。
「あの子が犯人ですって?」
事件を調べていた騎士団長の報告に、驚きの声を上げる王妃。
「はい。国宝が無くなったのは王子の婚約者のリサ様が原因です。ですが、リサ様が悪意で嘘をついていたわけではなく、勘違いの結果でした」
「どういうこと?」
「リサ様は、この王国の国宝を大きな宝石だろうと想像していて、ドラゴンの卵の欠片とは思ってもいなかったそうです。リサ様の国では、ドラゴンの卵の欠片は珍しくもないもので、おやつとして食べる物で、いろんな場所に誰でも食べていいものとして設置されているそうです。それで保管庫にあったドラゴンの卵の欠片を何の疑いもなく食べてしまったそうです」
「国宝を食べちゃったの?」
「はい。リサ様は真相を知ると、顔を真っ青にして、自分の国から持ってきたおやつのドラゴンの卵の欠片で弁償できないかと言われまして。それで、専門家にリサ様のドラゴンの卵の欠片を鑑定してもらいましたが、とんでもなく貴重なもので値段だけでも食べられた国宝の十倍以上だそうで」
「あー。これ、きちんと公式に書類に残さないと駄目なやつね。わかりました手配します」
とりあえず事件が解決したとほっとした王妃は、あることに気がつく。
「あれ?それだと、保管庫の監視係が誰も出入りしていないと証言したのはおかしくない?あの子が保管庫に入ったのは、見られているはずよね」
「ええ。監視係に確認をとったところ、本当は王妃様と一緒に出入りしていたのを目撃したけど、とっさに嘘をついてしまったそうです」
「ああっ、あの時なのね。確かに、あの子、お口をもぐもぐしていたわ。でも、なんで、監視係が嘘をつくの?」
「監視係達ははじめに国宝が無くなったことを知らずに、誰か目撃しなかったかと質問されて、思わず王妃様を見たことを隠したのです。そのため、一緒にいたリサ様も見なかったことにしなくてはならなくなったのです」
「私?私を見たら、なんかまずいの?」
「ええっと。ここでも勘違いがあって、監視係達はみんな異世界転移者でして」
「うちの王国は異世界転移者を積極的に受け入れているからね。騎士団長のあなたも異世界転移者だったわよね」
「はい。それで、かれらはまだこの世界にきたばかりで、この世界が元の世界とどれぐらい文化が流通しているかまだわかってなくて。王妃様、リサ様と一緒に保管庫に出入りした時に、異世界の服を着ていましたよね」
「異世界人の着ていた異世界の服とか持ち物を提供してもらっているけど、まだ技術が無くて真似できないのよね。物は使用しないと劣化するから、服なんかはときどき着ているけど、なにか着こなしがまちがっていたの?あのときの服はスカートってやつがついていたから、女物であっているわよね」
「女性物であってます。ただ、その、我々の元の世界は少々文化が複雑と言うか、いろいろな要素がありまして、夜だったのもいけなかったと言うか・・・」
「どういうこと?」
首をかしげる王妃に、元異世界人の騎士団長は答える。
「私の元いた世界では、四十を過ぎた女性がセーラー服を着ているのを目撃したら、たいていは見なかったことにするんです」
おわり




