8話~知識をもったバカはさらに迷惑です~
「……またか。」
海兵の教育を始めて、1カ月が経過した。
“エロ目的”を与えると、彼らの成長は目覚ましく、文字の読み書きもそこそこ出来るようになってきた。
しかし――。
ラブレターの話を持ち出した時点で、この事態を想定しておくべきだったと、エナは深く反省していた。
毎日のように、部屋の前にラブレターが置かれるようになってしまったのだ。
エナはそれらを手に取り、自室に戻って一つひとつ読んでいく。
「エナを見るとむらむらがとまらねぇ!! 抱きしめてぇ!!!」
――これはラブレターではなくセクハラだ。
「俺の彼女になってくれ!!」
――お前は誰だ?
「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い」
――怖い……。
「▼?」
――これは……スカートをめくったあいつだな。今度、もう一度ぶっ飛ばすか。
コンコンコン。
エナが手紙を読んでいると、ノックの音がした。
「どうぞ」
返事をすると、スティアナがずかずかと部屋へ入ってくる。
「どうしましたか、王妃?」
「む? うちのアホ共が、わらわに挑戦状を書いてきおってな。
字も書けん奴らがここまでできたのは大したもんじゃと思ってな」
「挑戦状……? どんな内容だったのですか?」
「見てみよ」
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おじょうへ
おれはだいすきです。
いつかたおします。
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「え? これ、ラブレターじゃないですか」
「我が国を乗っ取る宣言じゃろ?」
「いえいえ! 最初に“大好き”って……!」
「む? "俺は大好き"じゃぞ? 自分が好きで、自分のために国を取るってことじゃろ?」
「いえいえ! これはスティアナ王妃が大好きで、結婚して王様になりたいっていう意思表示ですよ!!
こんなに熱い気持ちの人がいるじゃないですか!」
「いいや! これはわらわへの挑戦状じゃ!
明日、わらわもお主の授業に参加して、犯人と戦うぞ!!」
言い放つと、スティアナは楽しげに部屋を出ていった。
……あの嬉しそうな顔は、好かれているのが嬉しいのか、明日喧嘩するのが楽しみなのか――。
エナは不安な夜を過ごすことになった。
* * *
翌日の授業。案の定、スティアナは乱入してきた。
「おーーーい! 注目じゃーーーーーー!! わらわにこの挑戦状を叩きつけた者、出てくるがよい!!」
……本当に来たよ。
海兵たちはざわつく。
「お嬢に挑戦状!?」
「なんて無謀な奴だ……」
「お嬢の奔放さ……癒されるぜ……」
そして――絶対に1人はいる。変なのが。
「そ……その手紙は……」
手紙を見つけて、1人が立ち上がる。
「をを! 海賊Aか!! 表に出ろ!!」
「ちげぇますよ! お嬢!!」
「何が違うんじゃ?」
「昨日話したじゃねぇっすか! お嬢、俺に肩揉み好きかって!?
だから、“お嬢の肩ならいつでも揉むんで、いつ肩押すか”って手紙を書いたんでさぁ!」
「む?」
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おじょうへ
おれはだいすきです。
いつかたおします。
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「……」
「……」
沈黙が流れた後---
「なるほど! じゃあこれから揉んでくれ!! エナが“これはプロポーズだ”とか言っておったぞ」
そう言って、スティアナは海賊Aを連れて外へ出ていった。
残されたエナは、真っ赤になってうつむいている。
「……あの……なんていうか、お年頃っすから……」
「恋愛脳、悪くねぇっすよ。女の子らしくて可愛いス」
海兵たちの下手すぎるフォローが、エナの羞恥をさらに加速させるのだった。
読んで頂き、ありがとうございます!
今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。
これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、
「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。
もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じて頂けましたら、
ぜひブクマ・リアクション・レビュー・感想で教えてください!
それが次の執筆の大きな力になります✨
※もし反応があまり良くなければ、今後の方向性の判断材料にもさせて頂くつもりです。
そのため、ちょっとだけ厳しめの評価も感謝しながら受け止めます!
(ちょっとだからね! めちゃくちゃ言われると泣くからね!)
この作品は全27話構成で、毎週火・木・土に更新予定です。
(時間は固定ではありません)




