7話~字を書くことってとっても難しい事なんです~
「……ということで、切り傷を負った場合はしっかり流水で洗い流し、消毒することが必要なんです」
初日の騒動から一変し、少しずつ聞き分けの悪かった海兵たちも素直になり、授業を真面目に受けてくれるようになってきた。
「ここ、大切ですからね。切り傷は軽くても、そこから入ったばい菌で体が腐ってしまうこともあります。ですから、メモをしっかり取ってください」
「おい、エナ!」
「何ですか?」
「いつも“メモ取れ”とか言ってるけど……俺たち、そもそも字が書けねぇぞ?」
「え? だけど、みんないつも何か書いていませんか? ちょっとメモ帳を見せてください」
嫌な予感を覚えながら、エナは海兵たちのメモを覗き込み――愕然とした。
そこに並んでいたのは「絵」だった。
しかも全員、鎧とロングスカートを身に着けた長髪の女性の絵。
……まさか、私じゃないよね―――!?
「えと……いつも私の話を聞いていましたか?」
「馬鹿にするな! 聞いてるわ!!」
「話を聞いて、どう思ってましたか?」
「可愛い声だなって」
「澄んでて癒される」
「怒鳴らない方が良いぞ、お前」
「お嬢よりおっぱい小さそうだなって」
――ダメだ、こいつら……。
エナは全力で脱力して見せた。
っていうか最後のやつ、話関係ないし!!!
しかし、落ち込んでもいられない。
私は変えていくと決めたのだ!!
「分かりました! ではまずは皆さんに読み書きを教えます!!」
「ええ~!!」
ここでまたクレームの嵐。
「字を書いて彼女できるのかよ!!」
「Piーーーをでかくする方法が先だろ!!」
……とうとう放送禁止用語まで出してきたか。
早い段階でこいつらを教育……いや、調教せねば!!
「字が書けるとラブレターが書けます」
「らぶれたー!? なんだそれは!?」
「好きな女の子に気持ちを伝えるという、とてもいじらしくてロマンチックなアプローチ方法です」
「な……なんだと……」
「女は面倒くせぇのが本当に好きだな!!」
「そこが良いんだよ! エナ公も面倒くせぇ所がたまんねぇんだし!!」
……私、面倒くさいか?
まぁ、ともあれこいつらのモチベーションを上げることには成功したし、良かったとするか。
面倒くさいの、私?
* * *
そして字の書き方講座が始まった。
「良いですか? 字は書ければ良いという訳ではありません。
字の丁寧さ、綺麗さは言葉以上に真剣な気持ちが伝わります。
そして、言葉を話すより伝えたい気持ちをしっかりまとめてから書かないといけません」
この世界の文字は共通文字とされていて、1つ覚えれば他国でも通用する。
今はただの荒くれ者だが、彼らは頭が悪い分、心はとても誠実で裏表がない。
こういう人たちが世界に影響を与え始めたら、もしかしたらもっと良い世の中が作れる気がする。
実際に最近は、エナの体を無闇に触ろうとする輩もいなくなってきていた。
この教育はきっと良い方向に進んでいる。
「おいエナ!! 字を書いてみた!! 見てくれ!!」
呼ばれてエナは字を書いた海兵のところへ行き、書いたものを読み上げてやる。
「いやーん。うっふーん。ばかーん……」
……うん。
前言撤回しよう―――。
エナは心の中でそう強く思った。
読んで頂き、ありがとうございます!
今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。
これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、
「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。
もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じて頂けましたら、
ぜひブクマ・リアクション・レビュー・感想で教えてください!
それが次の執筆の大きな力になります✨
※もし反応があまり良くなければ、今後の方向性の判断材料にもさせて頂くつもりです。
そのため、ちょっとだけ厳しめの評価も感謝しながら受け止めます!
(ちょっとだからね! めちゃくちゃ言われると泣くからね!)
この作品は全27話構成で、毎週火・木・土に更新予定です。
(時間は固定ではありません)




