26話~フォーランド憲法第1条1項 感動スル事ヲ禁ズ~
村を出てから旅は順調すぎる程順調だった。
……というのも、山賊や亜人狩りらしき敵が登場はするのだが、スティアナが有無を言わさず銃殺してしまうからである。
(これは確かに未開の地の探索というより、ただの歩きづらい散歩だな……)
認めたくはないが、確かに500mの間合いというチート能力は旅の危険性を一切なくし、面白味を奪ってしまうのをエナ自身も実感していた。
もっとも、学ばない海賊BCと僧侶田吾作は毎回剥ぎ取りを行い、両手が塞がって勝手に戦闘できない状態になっているのだが……。
ファンタジー冒険の根本を嘗めきっている能力である。
* * *
そして一行は亜人の生息区域に到着した。
スティアナが足を止め、銃を抜いて一か所に向ける。
恐らく銃口の先に亜人が潜んでいるのだろう。
バンッ!
スティアナがいきなり発砲する。
「ちょっ! スティル!! これから交渉をするのに、いきなり発砲とか―――」
バキッ ドサァ!!
ツッコもうとするエナが大きな音に振り向くと、亜人が地面で尻もちをついていた。
スティアナは、姿を隠していた亜人の乗っていた枝を銃で撃ち、木の枝ごと落としたのだ。
「木の上に隠れて優位になっとるようじゃが無駄じゃのw 全員撃ち落されなくなくば素直に出て来るが良い。
だがだが20匹程度でわらわ相手に何とかなると思わない事じゃな」
(20!? そんなに潜んでるの!?)
スティアナのはったりかと思ったが、確かに20人の亜人がおずおずと姿を現した。
「亜人狩り……ですか?」
亜人の1人が問いかける。
「いいや。フォーランド政府じゃ。これよりお主らを我が傘下にする」
スティアナの一言に、亜人たちに緊張が走る―――
「ちょっと! スティル!! そんな侵略者みたいな言い方したら誤解されるじゃないですか!!」
エナがすかさずスティアナを窘める。
「侵略じゃないのか?」
警戒する亜人が問い返す。
「い……いえ、違います! 私たちはあなた方を我が国の国民として認め、亜人狩りからの対策を講じに参りました!」
「そういう事じゃ! わらわに付いて従うが良い!!」
「スティルはちょっと黙ってて!! 話がこじれるから!!」
「ど……どういう事か話してくださいますか?」
エナたちは亜人たちの住処に案内され、そこで今回の顛末を説明することになった。
1:フォーランド王都の闇市で亜人販売を禁じたいが、闇市の運営には国が介入できないこと。
2:その為、この国に住む亜人たちを国民とし、国民が闇市に入るまでは亜人狩りをただの人さらいとして扱うこと。
3:しかし、フォーランドの法律では町の外での違法行為は認められている為、基本的には自分の身は自分で守ること。
4:もし亜人が亜人狩りに捕まった場合、途中に関所を設けて検問することで、ある程度の抑制をすること。
5:今回はその旨を亜人たちに伝え、協力を仰ぐためのものであること。
これをエナが丁寧に伝えた。
その一方―――
スティアナと海賊Aは亜人たちの地酒を飲んで酔っ払っている。地酒はとても強いらしい。
(責任者ども、仕事して!)
僧侶田吾作は山賊から剥いだ武器や衣服を亜人たちに売りつけていた。
(だから出家したんだよね?)
海賊BCは亜人女性にまた如何わしいことをしようと追い回している。
(海賊B……こないだのお詫びはなんだったの?)
亜人たちは「何物にも縛られたくない」と言っていたが、関所による検問とフォーランド政府の介入には快く応じてくれた。
「僧侶田吾作と海賊Cはここに置いていく。エナをここに置くのが一番波風は立たんが、エナはわらわのお気に入りじゃからお前らにはやらん。
置いて行った奴らが気に入らなかったら勝手に喧嘩してよし! こそこそ殺し合いは禁止じゃ」
スティアナの一言で話し合いは終了した。
* * *
「ウルヴェン!!」
「お母さん!!」
亜人の生息区域で、獣Aは無事に母親と再会することができた。
(獣Aってウルヴェンって名前だったんだな……)
そう思いながら、エナはウルヴェンの元へ歩み寄る。
「良かったですね。もう亜人狩りなんかに捕まらないでくださいね」
「うん! ありがとおねぇちゃ―――」
涙ながらにお礼を言おうとするウルヴェンの頭に、突然の蹴り―――。
その頭は母親の胸の中に埋もれる。
「スティルーーーーーーーーーーー!!」
エナは突然の襲撃者の名前を怒鳴る。
「わが国民の癖に感動の再会なぞするでないわーーーーーーーーーー!!」
フォーランドの国民になること―――
それは、全ての感動シーンが許されなくなるということでもあったのだ。
亜人族の判断は正しかった―――のだろうか?
読んで頂き、ありがとうございます!
今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。
これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、
「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。
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