24話~皆さんはジールド・ルーンが嫌いなようです~
カタン……カタン……。
エナは宿屋1階のカウンターで、空いたグラスを指で傾けて遊んでいた。
スティアナが本気で怒ってくれたのは嬉しかった。だが、何か腑に落ちない――。
横には海賊A・Cと僧侶田吾作もいた。
「お嬢は怒らせたら本気で怖ええからな。この村の怪我人……というか村人どもには関わらねぇ方がいいぞ」
海賊Aが優しく忠告をしてくれる。
「でも……なんでスティルはあんなに怒ったんだろ。いつもなら笑い飛ばしてそうなのに……」
エナは素朴な疑問を投げかけた。
「エナ公、“エアル・レンスター”って男を知ってるか?」
(エアル!?)
エアル・レンスター――それはエナの父親の名だ。
彼は、エナが生まれた直後に敵国兵討伐のため禁じられた山に登り、処刑されたと伝えられている。
世間的には非業の英雄と呼ばれていた。
「ジークフリード海賊団は実は4か国連合との戦争に勝つつもりでいたんだ。
総勢力じゃ勝てねぇが、海上でゲリラ的に敵船を沈め続ければ削り切れるって踏んでた。……なぜ負けたと思う?」
「なぜ……ですか?」
「エアル・レンスターがここ、俺たちのアジトを特定しやがったんだよ」
「あなた方の敗戦の理由は……その、エアルのせいなんですね……」
自分の父が敗戦のきっかけを作ったと知り、エナの胸はさらに沈んでいった。
「その……エアルの娘は――」
「言わなくていい。ジールド・ルーン出身の聖騎士でレンスターを名乗って、しかも目つきがエアルに似てる。気づかねぇ方が異常だ」
しかし、それなら尚更分からない。
憎いはずの自分を助けたは、なぜなのか。
「その……エアルはどういう人物だったのですか?」
「一言で言うと、気に入らねぇやつだったな」
答えたのは僧侶田吾作だった。
「気に入らない?」
「ああ。女よりも綺麗で整った顔をしてて、頭も良くて、腕も立つ……むかつくぜ」
「それだけなら良いが、ついでに“いい奴”だったんだよ。本来なら戦争に負けた時、俺らもお嬢も処刑されるはずだったんだ。
それを“この国を仕切れ”って条件一つで、敗戦の罪を帳消しにしやがった」
「本当はジークフリードの兄貴と一緒に死んでも構わねぇって思ってたのに、余計なことしやがってって思ったがな」
「でもそれが、ジークフリードの兄貴の意志を組んでのことだって知っちまったんだ」
エナにはまだ、海賊たちの気持ちは理解しきれなかった。
……というか、そもそもなぜ五英雄が、そんな因縁ある自分をフォーランドに派遣したのかも分からない。
「皆さん……私のことも恨んでいらっしゃるんですか?」
恐る恐る尋ねると、海賊A・Cと田吾作は顔を見合わせ、大笑いした。
「よし!じゃあ聞くぜ、エナ。なんで俺たちがお前が“教育する”とか言って勉強会を開いた時、ほぼ全員参加したと思う?」
「えっ?」
(やましい下心以外に理由があるの!?)
きょとんとするエナに、海賊Aが続ける。
「実は同じことをエアルがフォーランド立ち上げ時にやってたんだよ」
「あの時は楽しかったなぁ! 色男が語る“お前のお袋さんの口説き方”とかな!!」
「ぶはははは!!」
突然大笑いをする海賊たち。
「いや!それは聞きたくない!言わないで!お母様のイメージまで崩れそうでダメ!!」
嫌な予感を覚えたエナは必死に止めた。
「じゃあそこは許してやる。けどな、あいつもお前同様に俺たちを大切にしてくれてたんだ」
「ああ。色んな意味で感謝はしてる」
「なので結論を言う。お嬢も俺たちも、お前をエアルの忘れ形見だと思ってるんだよ。
まぁ、むかつくからちょっとだけいじめる時はあるがな!」
「いじめないでくださいよ……。でも……良かった……皆さんは父のこと、好きでいてくれてるんですね……」
そこでエナは悟った。
五英雄は、このフォーランドの気質を知っていて、あえて自分をここに派遣したのだ。
父エアルがかつてそうしたように、この国に流されず、真っ当な国へと導くために――。
スティアナが意味不明な論破をしてきたり、急に優しくなったりするのも、きっと感情の置き場所に悩んでいるからなのだろう。
全員が、声を揃えて返事をした。
「大嫌いだよ!!」
読んで頂き、ありがとうございます!
今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。
これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、
「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。
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この作品は全27話構成で、毎週火・木・土に更新予定です。
(時間は固定ではありません)




