22話~多分旅は順調です……~
亜人の生息区域への旅が始まり、一週間が経った。
度重なる山賊の襲撃を乗り越え、エナ達は大きな問題を抱えていた―――。
田吾作を始めとする海賊A・B・C、そしてスティアナまでもが戦闘不能となっているのである……。
道を進む一行に、エナは静かに声を掛けた。
「……あの。毎回、ツッコミ箇所が多すぎて、ツッコめずにいるんですが―――」
「なんだ、エナ公?」
「なんで倒した山賊の武器と身ぐるみを、毎回全部剥いで行くんですか!?」
「馬鹿野郎! 旅は何が起こるか分からねぇんだ!! 蓄えはあった方が良いんだよ!!」
「それは一理あります! だけど、倒した山賊の身ぐるみを服まで剥ぐって……どっちが山賊だか分からないじゃないですか!!」
「犯罪を犯す覚悟がある奴は、やられる覚悟も必要なんだよ!」
「それが原因で全員両手塞がって戦えないとか、本末転倒でしょ!! ……ってかスティルはいつまで飲んでるのよ!!」
「つらい旅じゃ……」
「辛くしてるのは、あなた自身ですからね!! とりあえず飲むのを止めなさい!!」
「つらい旅に耐えるわらわの唯一の楽しみまで奪うとは……やはりエナは鬼畜よの……」
グビッグビッ!(海賊Aにおぶられながら、また酒を飲むスティアナの音)
「村が見えてきたぜ! てやんでぇ!」
田吾作が遠くの村を指さす。
「をを!」
いままで海賊Aの背中にいたスティアナが飛び降り、走り出した。
「お、お嬢! 元気じゃねぇっすか!!」
海賊Aも慌てて走り出す。
過剰荷物を抱えた田吾作と海賊B・Cは、走り出すことが出来ない。
エナはバカ3人を横目に、獣Aの手を引いて走り出した。
――それがいけなかったとは、この時はまだ誰も知る由もなかった。
* * *
エナ達が村の入り口付近まで来た時だった。
後ろから「田吾作ーーーー!!」という叫び声が聞こえ、エナ達は振り向いた。
山賊との戦闘だ―――。
海賊B・Cが山賊と戦闘をしており、田吾作が地面に横たわっている。
エナ達は走ってきた道を戻った。
(あんなに強い田吾作が……なぜ!?)
エナ達が海賊B・Cの元に着いた時には、山賊は縄ではなく、なぜか山賊の服や下着でぐるぐる巻きにされ、身動きが取れなくなっていた。
(お前ら余裕あっただろ……?)
海賊Cが田吾作を抱えて涙を流す。
「田吾作ぅ~……」
「おい、エナ! 何してんだ!! 早く治療を!!」
海賊Aに促され、エナは田吾作に致死チェックの魔法を施した。
致死チェックの魔法とは、その人の怪我の状態を数値化する魔法である。
致死レベル10が致死とされる。
田吾作の致死レベルは―――0。
「えっ!?」
致死レベル0は健康体だ。
酔っ払ってフラフラのスティアナの致死レベルが2なので、状況的にはスティアナの方がよほどやばいはずである。
「おい! エナ公!! 急いでくれ!!」
海賊Cが涙ながらにエナに言う。
「え……で、でも外傷も見当たらないし、魔法チェックしても無傷って判定になってるの……なんでこんな事に……」
エナは自分の非力さを心底恨んだ。
すると、死んだはずの田吾作の左手が動き、自分の頭を指さした。
(うん?)
「をを……これは重症じゃの……」
やっと追いついてきたスティアナが、田吾作を見て診断する。
「スティル……田吾作の死因は何なのですか?」
エナはスティアナに助けを求めるように尋ねた。
「田吾作は……ちょんまげを切られたのじゃ……」
「はっ? ちょんまげ?」
エナはあっけにとられる。
「馬鹿野郎! ちょんまげは武士の命だ!! 命を落とされたら生きていけねぇじゃねぇか!!」
海賊Cが地面を叩く。
「お嬢……どうしやすか?」
海賊Aがスティアナに尋ねる。
「ふむ……禁呪を使って蘇生をするか……」
言いながらスティアナは剃刀を手に田吾作に近寄る。
「ちょっと待ちなさい! ちょんまげって、ただの髪の毛ですよね? 田吾作さん死んでないって事ですよね?」
エナがイラつきながら聞く。
「死んでるんだよ!! 設定上は!!」
(“設定上”って言った!! 生きてるじゃん!! 戦闘中に何してるのよ!!!)
ジョリジョリジョリ……。
スティアナは田吾作の髪の毛を剃りはじめ、田吾作をスキンヘッドにした。
「お嬢……これはもしや……」
「うむ……呪文を唱えるぞ! 甦れ田吾作! お主はこれで武士じゃなくなって、出家した僧侶じゃ!!」
スティアナが呪文(?)を唱えると、田吾作の頭が光る。
「ぬぉおおおおおおおおお!! 私は僧侶・田吾作! よろしくお願い致します!」
「たーごっさく! たーごっさく!!」
なぜか盛り上がる海賊共。
……本当に順調なのかな。
エナの気分だけが、どんどん落ちていく―――。
読んで頂き、ありがとうございます!
今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。
これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、
「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。
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この作品は全27話構成で、毎週火・木・土に更新予定です。
(時間は固定ではありません)




