18話~人にはそれぞれ信念があるようです~
「はぁ、はぁ……」
背後の追っ手を気にしながら、エナたちは闇市を抜け出した。
「このまま王宮まで行きま……しょう?」
王宮へ走ろうとするエナをよそに、闇市の入り口でスティアナと海賊A、そして狼の少年は腰を下ろしていた。
(あれ……もう1人いたような……?)
「ちょっと! そんなところで休んだら危ないでしょ!」
窘めるエナだったが、それが無意味だとすぐに悟る。
闇市の周囲を、大量の海兵(普段は海賊と呼ばれている)が取り囲んでいたのだ。
「ここを出れば、わらわの土地じゃ。闇市の傭兵も運営も、やり合うなら全力で叩き潰すだけじゃな」
「え……そんな陣取りゲームみたいな……」
「エナ公、裏社会にはそれ相応の掟ってもんがあるんだ」
「まっ、それを真っ先に破ったのはわらわじゃがな、かっかっか!」
スティアナは大笑いをした。
「あの……ありがとうございました」
少年は震えながらも、スティアナとエナへ頭を下げた。
「ううん、いいの。お母さんは? どこの国にいたか分かる?」
エナはしゃがみ込み、少年の頭を撫でる。
「僕はウ――」
「獣Aじゃな! 親はどこじゃ?」
名乗ろうとした少年を、スティアナが勝手に命名した。
「フォーランドの北西の森です……」
「そりゃまた遠い所から来たのう……帰れるか?」
「ちょっと、スティル! さっきは子どもを守るようなことを言っといて、今度は突き放すの!?」
「エナよ。お主は毎回甘いんじゃ。子どもでも10歳を越えれば、出来るか出来んかくらい自分で判断できる。
出来るならやればいいし、出来ぬならどうすべきか考える必要がある。考える権利を奪うではないわ」
(名前を名乗る権利は、平気で奪ったくせに……!?)
少年は黙り込んだまま。
少しの沈黙のあと、スティアナは立ち上がる。
「ふむ、沈黙の知というやつじゃな。城に帰るぞ」
そう言って、返事を待たず歩き出した。
「ちょっとスティル!」
エナの呼び止めを無視し、スティアナは城へ向かって行く。
「本当になんなの!? スティルが分からない!」
「エナ公は想像できるかい? 12歳で父親を公開処刑され、その年で王妃になるか殺されるか選択を迫られた人間の覚悟を」
海賊Aが真面目な顔で問う。
「え……それって、スティルの……」
「お嬢は、選択肢すら与えない檻に子どもを閉じ込めることを否定した。
そこからどうするかの“選択権”を、このガキに与えたんだ。
被害者がいつも可哀想なわけじゃねぇ。可哀想な奴がいつも不幸なわけでもねぇ。
そんな境遇に甘えるようなら、手は貸さねぇってだけだ」
海賊Aはそう言い残し、集まっていた海兵たちも次々に寝床へ散っていった。
結局、エナは少年を置いていくことができず、王宮へ連れ帰る決意を固めた。
読んで頂き、ありがとうございます!
今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。
これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、
「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。
もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じて頂けましたら、
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この作品は全27話構成で、毎週火・木・土に更新予定です。
(時間は固定ではありません)




