16話~スティルが分かりません!!~
「キャ――――――――――――!!」
砂浜に入った途端、エナはフォーランドに来て初めてと言っていいほど大きな悲鳴を上げた。
スティアナと海賊たちが驚き、視線をエナへ向ける。
(やっぱりおかしい、この人たち……!!)
海賊たちは全員ブーメランパンツ一丁。
それぞれ思い思いのポーズを取り、その体には色とりどりの絵の具が塗りたくられていた。
遠目で気づかなかったのは――スティアナが彼らをキャンバスにしていたからである。
「な……何してるんですか!! 貝殻アートはどうしたんですか!!」
エナはあまりの品のなさに説教モードへ突入する。
「む? 絵画裸アートじゃぞ? ほれ、エナも手伝え」
「手伝えるわけないでしょ!? ていうか海賊さんたちも、こんな馬鹿なことしてないで着替えてください!!」
「お主は……見てくれるんじゃなかったのか……」
しょんぼりとうなだれるスティアナ。
(うっ……!)
「いや、スティル。もっと健全な芸術ってあると思うんですよ」
「芸術を知らんと言っとったのに、芸術を知ったふりしてわらわの作品を否定するんじゃの……」
「お嬢可哀想ですわ~……」
ブーメランパンツ一丁で塗り絵状態の海賊が、スティアナの頭を撫でながらジト目でエナを見る。
「見てあげるとか言ってたのにの……」
スティアナがわざとらしく海賊に泣きつく素振りを見せる。
(ええ~……)
「ま……まぁ、私も芸術のことはよく知りませんし……み、見ますよ!!」
仕方なく、エナは男の体をしっかり見る覚悟を決めた。
* * *
「ちょっと! 腰を動かさないでください!!」
アートを見るエナに、海賊たちはいちいち変な動きをしてみせる。
「かっかっか! どうじゃ、エナ? 海賊CはPi---がでかいからの、そこを強調して周りを黒っぽく、Pi---は明るくしてみたんじゃ」
「知りません! 知りたくもありません!!」
「海賊Dは体毛が少ないから――」
「解説入りません!! 芸術は心のまま楽しむんでしょ! 何も言わないでください!!」
「をを! お主も芸術家の仲間入りじゃな! ほれ!」
満足げにスティアナがエナに手渡したのは――光沢のある布。
嫌な予感。
それはやはり、スリングビキニだった。
「い、いやいやいや!! こんなの着られませんよ!!」
「はぁ? さっき“手伝う”と言ったじゃろ。聖騎士とはジハドに仕える騎士よな?
嘘つきが許されるのがジハドの経典なのかの?」
(うっ……スティル、本当に策士だ……!)
「い……いや……え?」
「わらわの芸術は、ジハドに背いてまで協力したくないんじゃな……」
(それずるいって!!)
エナはしぶしぶスリングビキニに着替えた。
「あ……あまり見ないでください……」
「無茶言うな。芸術は見てなんぼじゃ」
「いえーーい!」
「照れる姿もいいぜーー!」
「普段お堅い聖騎士がスリングビキニとか飯100杯いける!!」
(おのれ、海賊どもめ……!!)
こうしてエナの地獄は1日中続いたのであった。
今回は完璧なご褒美回である。
小説なのがまことに遺憾である。
恨むならば拾ってくれない出版社を恨んで頂きたい。
* * *
その夜。
自室に戻ったエナは、どっと疲れた体をベッドに投げ出し、天井を見つめた。
「……私は聖騎士。絶対に、この国をまともにしてみせる」
静かな誓いの言葉が、波音に溶けていった。
読んで頂き、ありがとうございます!
今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。
これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、
「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。
もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じて頂けましたら、
ぜひブクマ・リアクション・レビュー・感想で教えてください!
それが次の執筆の大きな力になります✨
※もし反応があまり良くなければ、今後の方向性の判断材料にもさせて頂くつもりです。
そのため、ちょっとだけ厳しめの評価も感謝しながら受け止めます!
(ちょっとだからね! めちゃくちゃ言われると泣くからね!)
この作品は全27話構成で、毎週火・木・土に更新予定です。
(時間は固定ではありません)




