14話~闇市は……許します!!~
エナはガラントから聞いた場所へ歩み、闇市へとたどり着いた。
闇市は夜にも関わらず、提灯や出店が立ち並び、和太鼓や笛の音が流れて賑やかになっていた。
人込みも多く、歩くのも大変である。
違法商品の売買が盛んというだけあり、海外の人間らしき姿も多く見受けられる。
(フォーランドって、こんなに人いたの!?)
(日中はみんなどこに行ってるの?)
そんなツッコミをしながら、人込みの中を進んでいく。
「お? エナじゃ!! こっちじゃ! おーい!!」
遠くからスティアナの声が聞こえた。
彼女は無邪気に手を振っている。
――あの策士め……。
「スティル! ちょっとそこにいてください!!」
エナは人をかき分け、スティアナの元へ向かう。
「スティル! 酷いですよ!! おでんにハマらせてから、ここの存在を教えるなんて――」
文句を言うエナの口を、スティアナが人差し指で止めた。
「物事には良きも悪きもあるもんじゃ。お主はいつも悪きにばかり目を行かす。
それじゃ、美人が台無しじゃぞ」
「そういう話ではないでしょ!?」
「じゃあ、なんじゃ? ここも禁止にするか?」
「……様子を見ます」
エナが答えると、スティアナはかっかっかと笑いながら付いてきた。
「1つ、エナに忠告しとくぞ」
「何ですか?」
「ここで起こった犯罪は、すべて見逃せ」
「はぁ!?」
エナは立ち止まり、スティアナを睨みつける。
「お主は正義感が強すぎて、重要な事を見落としとる。
ここは諸外国のお偉様もお忍びで来ておるんじゃ。
国が関与しておらんから、すべてが自己責任。そういう体裁が必要なんじゃよ」
「どうしてですか?」
「犯罪を犯したのが外国のお偉様じゃったら、下手に捕らえれば国際問題になるじゃろ?
逆もしかりじゃ。お偉様が犯罪に巻き込まれたら、フォーランドの国としての責任を叩かれる。
じゃから、この闇市は法では縛れないという体裁にしておるんじゃ。
お主がここで聖騎士として仕事をすると、国際問題になりかねん。だから我慢せよ」
「そんな無責任な――」
「一時的な正義感に駆られて動くことの方が無責任じゃ。……それより、ほれ。あそこにサコクの出店があるぞ」
スティアナに腕を引かれ、エナはサコクの出店に向かう。
「おお! スティアナ王妃!! 今日もお美しいですね!」
「そう思うなら負けろよ?」
「はっは、相変わらずですな。……そっちの可愛らしいお嬢さんは?」
「エナじゃ。ジールド・ルーンの堅物じゃから、冗談が通じん。気を付けるんじゃぞ?」
「をを、そいつはおっかねぇ」
「とりあえず、おでん好きを唸らせる料理あるか?」
「熱燗と枝豆がありますぜ?」
「うっほぉ~! 良いの!! それをくれ!!」
――アツカン? エダマメ???
聞き慣れない単語に混乱するエナをよそに、スティアナは嬉々として注文する。
やがて小さな瓶と2つの小さなコップ、さらに緑色の妙な食べものが運ばれてきた。
スティアナは慣れた手つきで瓶から透明な液体を注ぎ、エナに渡す。
そのコップは本当に小さく、中身も一口でなくなる量だ。
「ちょっとスティル……こんなの直ぐに飲み干して無くなりますよ」
「言うなら飲んでみるが良い。……あ、やっぱ飲むな。口をつけるだけにせい。まずはな」
エナは軽く一口だけペロリ。
甘い!?
アルコールなのは分かる。だが今まで飲んだどの酒よりも甘く、しかも暖かい。
自然な甘さ、とでも言うべきか……。
「そして枝豆は、こうやって食べるんじゃ」
スティアナは緑の食べものを咥え、そのまま手で引き抜いた。
「この実の中にある豆を食べるんじゃ」
「ちょっと……口に入れた物を出すなんて下品ですよ。しかも手づかみ……」
「良いからやれ」
言われるまま、エナも口に入れてみる。
――美味しい!!
塩気が程よく効き、しょっぱい風味が口いっぱいに広がる。
「そこで熱燗をクィッとじゃ」
エナは言われるまま熱燗を飲む。
* * *
夜も更け、1人で立てなくなるほど酔っ払ったエナは、スティアナに支えられて王宮へ戻った。
「ひょっとぉ~……もう帰るんでふかぁ~? フティルはいつも冷たいんでふから……」
「お主、ちょっと飲み過ぎじゃぞ?」
「まだいけまふよ~」
「いや、もうダメじゃ! 今日は諦めて寝れ!!」
そう言ってスティアナは、エナをベッドに寝かせ、部屋を出ようとする。
「あ……闇市の調査結果はどうじゃ? やってても問題ないじゃろ?」
「ふぁい……」
「良し、言質とったからの」
スティアナは勝ち誇ったように笑い、部屋を出て行った。
読んで頂き、ありがとうございます!
今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。
これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、
「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。
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この作品は全27話構成で、毎週火・木・土に更新予定です。
(時間は固定ではありません)




