13話~策士に胃袋を掴まれました~
「えっ? 闇市?」
ヘルガラントを紹介されたエナは、3日に1度はここに足を運ぶようになっていた。
他の海賊たちとは違い、公務の後だが―――。
ここのマスター、ガラントは過去に世界中を渡った凄腕の冒険者で、スティアナの父ジークフリードの喧嘩友達でもあったらしい。
世界を旅してきたため、見識も広く、料理の1つ1つが豪快で変わった味付けだが、バリエーションが多くて美味しいのだ。
エナの最近のハマりは「レモンスカッシュ」という、レモン果汁の入った炭酸水にアルコールを混ぜた飲み物と、「おでん」といわれる料理だ。
レモンスカッシュはエールよりも爽やかな味で、強めの炭酸がさっぱり感をさらに強くしている。
おでんという料理は、地上界と呼ばれる異世界の日本という国の料理らしい。
野菜や肉を変わった味付けで煮込んだもので……あの「からし草」の液をつけて食べるという斬新な食べ方にも驚いた。
しかし、これも本当に美味しくて癖になる。
――じゃないじゃない。
私は聖騎士として、公務のために情報を集めに来ているんだ。
「ああ。闇市って言ってな、世界中から集めた違法アイテムとかを取引しているんだ」
ガラントが説明する。
「それは放っておけませんね……」
エナは眉をひそめる。
「いやいや。必要悪って大事だぞ。
フォーランドの闇市は世界的に見ても大規模でな。このおでんを作るのに必要な“醤油”って調味料は、サコクって所の特産品なんだ」
サコク――。
過去にノブナガという神隠し子(地上界からやって来た人間)が興した国だ。
当時は貿易を盛んにしていたらしいが、ある日を境に外国との関係を断ち切ったことで有名である。
和装の剣士と呼ばれる、とても強い剣士の国という噂もある。
「外交を断ち切っている国の特産品が、なぜ手に入るんですか?」
エナは問い返す。
「密輸」
ブーーーーーーッ!!
エナは予想もしなかった答えに、口に含んでいたものを思わず吹き出した。
「ばっ……おまっ! 汚ねぇな!!」
突然吐き出すエナに、ガラントが慌てる。
「はいはい、掃除しますよー。ごちそうさまーーー♡」
どこからともなく現れた海賊Bが、楽しそうに掃除を始めた。
「密輸って、犯罪じゃないですか!!」
エナは憤慨する。
「犯罪だよ! そういうもんを取り扱うのが闇市なんだよ!!
だけど、それがないとこのおでんは作れねぇって話をしてんだろうが!」
――う……。
エナはカウンターに座り直し、再びおでんを一口食べた。
「取り締まるのか? 必要悪を認めるのか?」
ガラントが挑発するように言う。
「悩みどころです……」
エナはため息を漏らした。
(スティルめ……いきなり闇市を教えたら、私がすぐ取り締まりに行くのを見越して……。
その前に胃袋を掴む作戦に出たか……。段々、本気の策士になってきたな……)
「ちょっと、闇市に行ってみます。あまりにも治安的に悪いようなら取り締まります!!」
エナは立ち上がる。
「おう! 気をつけろよ~」
ガラントは手を振って見送った。
* * *
闇市へ向かいながら、エナはふと思い出す。
あれ?
私が吐いた後、海賊Bさん……なんて言ってたっけ???
エナは言い知れぬ寒気を感じながら、夜の道を闇市へと歩いて行った。
読んで頂き、ありがとうございます!
今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。
これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、
「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。
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この作品は全27話構成で、毎週火・木・土に更新予定です。
(時間は固定ではありません)




