11話 ~お薬は用法・容量を確かめて適切にご使用ください~
「ここじゃここじゃ。」
王都を出て半日。
エナたちは薬草の草生地にたどり着いた。
「思ったより早かったですね。」
予想外の早い到着に、エナの心も安堵する。
スティアナはそそくさと草生地に入り、薬草を探し始めた。
(思ったよりスティルって真面目なのかな?)
「おーい! 海賊A!! お主、腕の傷は治ったかぁ~?」
何やら薬草を見つけたスティアナが、海賊Aを呼ぶ。
「へい! この間のエナ公の神聖魔法で、傷口は塞がってます。」
「をを! それは良かったの! ちょっとこの薬草を試してみてくれ。
傷口や傷痕に良く効く薬なんじゃ!!」
「へい!」
海賊Aはスティアナに近づき、傷痕を差し出す。
スティアナは薬草を潰し、海賊Aの傷痕に塗り込むと――
「ぎゃぁああああああああああああああああ!!」
突然、海賊Aが悲鳴を上げて悶え始めた!
「海賊Aさん!?」
エナは駆け寄り、スティアナに塗られた傷痕を確認する。
(黄色の……汁!?)
ここに草生している薬草はラズベルド。
はっか系の植物で、少ししみるが殺菌効果があり、粘り気のある粘液で出血を止める効果を持つ。
練り込むと出てくる液体の色は、緑であるはず――。
「ちょっとスティル! 何を塗ったの!?」
「これじゃ!」
どや顔で見せたスティアナの手には……からし草。
――消毒効果は高いが刺激が強く、使う時は薄める必要がある薬草。
辛党の一部の人間が、料理に少量使うこともあるが……。
「スティル!!」
エナは怒鳴ると、急いで海賊Aの腕に付いたからし草の液を拭き取る。
しかしその隙に、またうろうろしていたスティアナが何かを見つけ、今度は海賊Bを呼んだ。
呼ばれた海賊Bは嬉しそうに走っていき――。
スティアナは彼の肩を触りながら、薬草の汁を口に絞り垂らした。
次の瞬間、海賊Bの体に異変が起きた。
ぶわっと髪が伸び、肩口を越えて背中に流れ落ちる。
声が一段階高くなり、「あれ?」と本人が驚いたようにつぶやいた瞬間、胸元がふくらみ、腰がきゅっと細くなる。
着ていたシャツはボタンがはち切れそうになり、ズボンはぶかぶかに緩んでズリ落ちそうだ。
大柄な海賊の男だったはずが、一瞬で華奢な女性の体つきに変わっていた。
「をををを!!」
女化した海賊Bは、むしろ嬉しそうに声を上げて自分の体を見下ろす。
新しくできた胸を揺らして「おおっ!」と感嘆し、妙にノリノリだ。
それを見た海賊Cが駆け寄った。
「お前……すげぇじゃねぇか!! ちょっと触らせろや!!」
そう言って海賊Cが、海賊Bの股間に手を伸ばす。
スティアナはしたり顔で解説する。
「これは性転換する薬草じゃが、触れた他人の性別を反映させるからの。効き目は10分じゃな。」
――むにゅ。
「ぎゃーーーー!! Pi---の感触だーーー!! BのPを揉んじまったーーー!!!」
「いやん♡」
もだえる海賊Cと、なぜか照れる海賊B……。
「……馬鹿。」
遠くでエナは呆れたように呟いた。
(あれ? 今スティル……薬の効果、知ってた!?)
「ちょっとスティル!! あなた、薬草の効果知ってるの?」
「はぁ? 武器を見れば分かるじゃろ? わらわはレンジャーじゃぞ?」
――確信犯だったーーーー!!
結局エナはスティアナを正座させ、海賊たちに改めてラズベルドの特徴を説明。
その後はみんなで平和に薬草を摘み取った。
「でも不思議ですね・・・。 なんでこんなに色んな効果の薬草がこんな所に草生しているのでしょう・・・?」
「を? ここは昔、とある魔術師が作った失敗作の処理場じゃったんじゃ。 こんなところに不法投棄しとったから、それを吸った草が変化したんじゃの。」
・・・なるほど・・・って不法投棄って・・・。
やっぱりこの国のモラルを何とかしないと・・・。
知れば知るほど見えてくる問題にエナの心はどんよりと沈んて行く―――
読んで頂き、ありがとうございます!
今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。
これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、
「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。
もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じて頂けましたら、
ぜひブクマ・リアクション・レビュー・感想で教えてください!
それが次の執筆の大きな力になります✨
※もし反応があまり良くなければ、今後の方向性の判断材料にもさせて頂くつもりです。
そのため、ちょっとだけ厳しめの評価も感謝しながら受け止めます!
(ちょっとだからね! めちゃくちゃ言われると泣くからね!)
この作品は全27話構成で、毎週火・木・土に更新予定です。
(時間は固定ではありません)




