第二話「かっこいい!かわいい!うつくしい!」
この作品はフィクションです。現実の団体等とは一切関係ありません。また、他作品様を批判する意図もございません。
何も、ジレンは自分を追放した彼らを全肯定しているというわけではない。
エルツのスキル<洗脳>を受け付けないのがその最たる例だ。
パーティの他二人はあまり問題はないと思われるが、エルツは…エルツ・ジャムリィーはひどい。
そんな彼でさえ、ジレンは大好きなのだ。
朝、清々しい日差しが降り注ぐ中、ジレンはエルツがお気に入りのカフェに入る。
そこにはなんと、件の彼らがいるではないか。
ジレンの元所属パーティ、『エイジヒッターズ』の朝食だ。
「いやぁ~!やっとあいついなくなったなぁ!どうする?どんな女の子とともだちになりたい?」
エルツはいつも通り、ハーレムづくりの計画を立てている。「あいつ」が斜め後ろの席にいることも知らずに。
無料チケットで頼んだセットがジレンの席に届く。エルツが見栄を張って来るようないいカフェだ。無料チケットで選べるメニューでも、その完成度は高い。
純白のパンに挟まれた瑞々しいレタスかキャベツか。美味しそうだ。ヴィシナントカというじゃがいものスープが添えられている。
美味しい、美味しいと思いながら、ジレンはそれらを口に運ぶ。愛しの彼らを見ながら食べる食事は、とてつもなく美味である。
まず、エルツさん。白銀の髪の片側を後ろの方にまとめ、長い睫毛とダイヤの模様が入った瞳がよく見える。非常にかっこいい。ゲス顔で顔を歪めないでほしい、と思う。食べ方がそこそこに綺麗で、生まれと育ちが良いことに説得力が生まれる。ジレンを拾ってくれたのも彼だ。彼のためなら、ジレンは世界のすべてを敵に回しても構わない。
「キミの気分悪くなる発言はどうでもいいとして、このパンは色々使われてるけど、ミルフィン小麦60%、カルム小麦31%、サンガ小麦5%、コルツ小麦4%、だね。今焼かれているのは匂いから察するにだいたい…」
次に、アニィさん。薄く輝く金色のボブヘアー。花の髪飾りから垂れる三つ編み。冒険者の中でもトップクラスに幼いその姿は、エルツさんの守備範囲内なのだろうか。可愛い。ジレンはこの心の論文で、どちら、とは言わない。改めてだが、アニィさんは何かしら故郷の環境に問題があるところを、エルツさんがパーティーに入れたらしい。穀物が好きで、よくトウヨウの国の話をしていた。ジレンの持つパンの小麦構成をを聞いてみたい。そんなファンサ、何万ゴールドでも払おう。
「あら、エルツさん、ご飯時に不躾な発言はやめてくださいな。」
最後に、アンレさん。青髪の獣人で、兎族だ。…兎族らしいが、耳まで真っ青で、また内側に赤いハート型の耳がある。四つ耳で、兎族初の、青髪。その見た目からつい最近まで奴隷であり、エルツさんに買われたらしい。彼女のような環境でも、強く優しく気高く生きる姿にジレンは感嘆する。自分のことを庇ってくれたことが、ジレンは何よりも嬉しい。国の記念日にでもしてしまおうか。
ああ、なんと彼らは尊く気高く可愛くかっこよくよく美しく世界に守られ愛され一等大切にされるべき人なのだろう。そう考えながらジレンはパンの最後の一口を口に入れる。
一週間しかパーティにいられなかったせいで、彼らに何も貢献できなかった。アニィさんの故郷の問題、アンレさんの元持ち主とのいざこざ。そして何より、放置していれば破滅まっしぐらのエルツさん。
絶対にコッソリと解決をサポートし、彼らの人生に幸福を捧げよう。
ジレンは己がエルツたちに救われるまでの罪を脳内列挙し、覚悟を新たにする。
(こんな僕を救ってくれたんだ。幸福な人生くらい返せなかったら、僕はいよいよ…。)
自分の思考に溺れていると、突然目の前に60ほどの男性がいるではないか。
エルツたちの住所親族得意魔法等ほぼすべてを調査したジレンには、眼の前の男性が誰か、というのは簡単な問いだった。
「はじめまして。わたしはギルド委員会、委員会長リヒト・ジャムリィー。さて、端的に問おう。」
やはり。先に権力をかざすあたり、穏やかな話ではないようだ。
「君が、我が愛息子のストーカーかね?」
酷い圧を込めて放たれた事実確認に、ジレンは口の中のものを飲み込み、返事をする。
「はい。」
追記 文章の段落構成を変えました!
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