3,深夜0時10分 - 恋人たちの部屋
お互いが世界のすべて――そんなふたり
「なぁ見てよ、このフィルター」
「ぶっ…なにそれ、変すぎる!」
「だろ。あとこれも。見て」
「やめて、ほんとツボる…あーもう無理、笑わせないで…!お腹痛い…!」
ベッドの上、二人は毛布にくるまって、寝る気なんてまるでなかった。
深夜0時を過ぎてもテンションは高く、完全に“おやすみモード”を逸脱している。
冷たい炭酸水をストローで回し飲みしながら、くだらない会話が止まらない。
「ねえ、さっきから何回“好き”って言った?」
「え、4回くらい?」
「いや絶対もっと言ってる。毎分言ってる」
「じゃああと10回言っとく。“好き、好き、好き、好き、好き……”」
「やめて、バカじゃないの?」
「バカだよ?お前が好きすぎてバカになったの。どーしてくれんの?」
彼女は布団に潜ってジタバタしながら笑う。
彼はそれを上から包み込むように抱きしめて、耳元でそっとささやいた。
「ほんとにさ、今日も可愛い」
「また言ってる」
「そっちは?」
「え?」
「俺はどうなん?かっこいい?好き?」
「え〜うるさい、ちょっとめんどくさい」
「だめ。」
「う〜〜。今日も好き。優しいところ大好き」
「うわ〜〜〜〜!メモるわそれ」
スマホを取ろうとする手を押さえられて、そのままぎゅっと抱きしめられる。
「あとにして!」
「……はい」
まぶたを閉じると、世界がとても遠くにあるように思えた。
でもこの部屋だけは、異常なほどあたたかくて、騒がしくて、静かだった。
「好きすぎて眠れない」
「寝なよ、明日起きれないでしょ」
「明日起きれなかったらやだから絶対に言いたい。だいすき。ほんとに、ほんとに好き」
「…………わたしもだよ」
そのとき、カーテンの隙間から、月の光がふたりの髪に触れた。
白く、やわらかく、とても静かに。
ふたりはそれに気づかないまま、笑い合い、そして、眠りについた。