表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学校  作者: あ行
9/10

 あいつから手紙が来た。丁寧な字だ。

――今日の昼、海に来てね。授業なんてサボって僕一番に。君に僕の事、教えてあげる。

「あ、来たね。こっちこっち!」

 何だかよそよそしい。いつも通りに振る舞えよ。

 海の近くだからか風が吹いていた。

「何故入口なんだ。海はもう少し奥だろ。」

「うん。君にね。見せたかったんだ。ここの海に繋がる庭。綺麗だから。」

 ふふっと鼻で笑う。

「君のことだから、花なんか見ないで海に来るでしょ?」

 そう言って庭へと歩む。

「ほら、綺麗だろ?」

「……そうか。」

 花はただの植物だ。綺麗だなんて思ったこと無い。

「……僕の事だね。僕、そんなに君が僕のこと知りたいだなんて思わなかったよ。」

 ははっと笑う。花を背景にその場に立ち止まる。少し、綺麗だと思ってしまった。

「僕ね、もう、もう嫌なんだ。」

 風は涙を運ぶ。

「全部嫌い。教師も、生徒も、親も、」

「君も。」

 声を震わさせ、必死に言葉を使う。

「いつも、いつも、ヘラヘラしてる?してるのはそっちだよ。皆んなの期待に応えて、笑顔で振り向いて、」

「……な、」

 君の服を握る。今君はどんな顔してる?

「そんなの君はできる?」

「……わ、分から」

「ねぇ、」

 目が合う。完璧な顔がぐしゃぐしゃだ。

「ねえ、フロース。」

「……!」

 へへっと無理矢理笑顔を作る。

「君の名前。一度も言ってなかったね。」

「お、お前は」

 フロースの手を引っ張る。今は何も言わないで。君の意見か聞きたくない。僕は君が嫌いだから。

「ほら、ついたよ。海。綺麗だね。」

「……、まさかっ。」

 君の手を離す。キラキラと反射する宝石へ歩く。

「ねぇ、可笑しいと思わない?ここ、海で囲まれてる。きっと逃げられないためだよ。」

 知ってる。可笑しいなんてとっくのとうに。それより、

「待て、待ってよ。何でっ、そんな」

「来ないで。君が溺れちゃう。」

 波が高ぶり、うまく立てない。

「フロース。君、僕のこと嫌いじゃないの。何でとめるの。君はまだやりたい事があるんじゃないの。」

 涙が光る。海よりも綺麗だ。そして海の一部となる。

「……。」

「君、優しいね。僕、君に、フロースに嫌いって言ったんだよ。もう後戻りできない。」

 過去は消えない。皆知ってる事だ。人を笑わせた事も、過ちを犯した事も、明日でいいやとずっと思っている事も、言葉の難しさも、皆知ってる。

「じゃあね。最後にフロースに会えてよかったよ。」

「……待って。」

 さっきより言葉が弱まる。

「ありがとうね。」

ここまでお読みいただきありがとうございます。物語としてはここで終わりですが、次の話も少しだけ書くつもりなので、お読みいただけるとフゥー⤴︎と作者が喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ