第二十三話
船室のドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、積み上げられた段ボールの山だった。
中には、食料や医療品らしきもの、それに用途不明の機材まである。まるで倉庫の一角に迷い込んだかのような雑然とした光景が広がっていた。
この船は、廊下もホールも食堂も――そして船室さえも、物資であふれ返っている。
どう見ても、乗っている人数に比べて荷物の方が圧倒的に多い。でも、これは第43層世界に向かう最後の支援船。できるだけ多くの物を積み込もうという判断は、当然と言えば当然なのかもしれない。
僕たちの部屋も例外ではなく、荷物でほとんど埋め尽くされていた。床の大半を段ボールが占領し、ベッドにたどり着くには、その隙間を縫って進むしかない。
とはいえ、ここから見える奥のベッドはなんとか無事に見える。今夜の寝床は、ひとまず確保できそうだった。
……ところで、どうして僕たちがこんな荷物部屋に泊まることになったのかといえば――
「数人との相部屋か、荷物と一緒か、どちらがいいですか?」と聞かれたとき、システルが即座に「荷物と一緒」と答えたからだ。
その選択に、僕とニケは目を見合わせたけれど、結局なにも言えず、この部屋へ案内された。
システルの顔をちらりと見ると、彼女は苦笑いを浮かべながら、「まあ、仕方ないわね」とでも言いたげな表情をしている。
そのまま荷物の間をするりと抜けて、奥のドアを開けて浴室を覗く。
「お風呂は……使えそうね」
ぽつりとつぶやき、そのまま中へと消えていく。
「今から入ろうかな。でも、もう遅いか……どうしようかな」
おそらく、鏡の前で髪でも整えているのだろう。やがて彼女は出てきて、もう一度室内を見回してから、軽く息を吐いた。
そして迷うことなく段ボールを動かし始める。
僕とニケも手伝い、どうにかベッドまで続く細い通路を確保した。
ちょうどそのとき――
ぐぅん……と低い振動が船全体を包み込む。
次の瞬間、身体がふわりと浮き上がるような感覚に襲われた。船が上昇を始めたのだ。
僕たちは急いで、船室の小さな窓のそばへ駆け寄る。
その下に積まれた段ボールが、僕とニケにはちょうどいい踏み台になってくれた。そこに乗って窓の外を覗くと――
すでに船は雲の上まで来ていた。
月が高く昇っている。まん丸な満月の光が、窓から差し込んで、僕たちの足元をやさしく照らす。
船はさらに、空の果てへと昇っていく。
やがて振動が収まり、滑らかな水平飛行に切り替わった。
そのとき、窓の外に広がっていたのは――もう地上の景色ではなかった。そこには、漆黒の空と、無数の星が瞬く静寂な宇宙空間が広がっていた。




