第五話
頭の中にイメージが浮かんできた。
ぼやけていたそれが、次第にはっきりと形を成していく。
私は急いでスマホを取り出すと、地図を開き、そのイメージを重ねた。
心の中で、「アルがいれば、こんなことしなくても済むのに」と思いながら、指先で地図をスクロールし、イメージと一致する場所を懸命に探す。
ほんの十数秒——でも、永遠とも思える時間が過ぎ去ったあと、ついにその場所が見つかった。
私のいる場所から五つ隣の街。小さなホールのような場所。そこで、私の中に浮かんでいるイメージは動かない。
きっと、アルはここにいる。
この街なら、何度か行ったことがある。大きなテーマパークがあって、家族みんなで遊びに行った。
小さく息をつく。思っていたより遠い。
パパは魔法が使えない普通の人だ。ママも、もう何年も転送魔法なんて使っていない。
それに、私が出かけていた時間はそう長くはない。
きっと、彼らは私が出かけるのを待っていた。そして示し合わせて、あらかじめ準備しておいた移動手段を使ったに違いない。——何の迷いもなく。
……もし私が出かけなかったら、どうするつもりだったんだろう?
もしかして、ママが私の連れ出し役だったのだろうか。
そう考えると、同じ魔女として、ママにすごく腹が立ってきた。
画面に表示された地図をじっと見つめる。
私のような年齢の子供には少し遠い場所。
でも、私なら——この距離なら、私だけでもなんとか行ける。
階下からは、何の気配もない。
ママは上がってこない。声もかけてこない。
きっと、ママは私が何もできないと思っている。
魔法でアルの場所を見つけたとしても、どうすることもできないと。
私が頭を冷まし、諦めて降りてくるのを待っている。
でも、ママは知らない。
私は、ママが思っているよりずっと遠くへ行ける。
ママやパパには秘密にしていたけど、私はアルとニケと一緒にスマホで見つけた、綺麗な景色や珍しい建物をこっそり何度も巡ってきた。
私は立ち上がった。
壁に掛けてある鞄を取り、中からお小遣いを貯めて買った魔晶石を一つ取り出す。
手のひらに乗せると、それは淡く光り始めた。
その光を見ながら思う。
——私たちなら、どこへでも行けると思っていた。
次の連休には、「次光壁を越えて、別の次層世界に挑戦してみよう」なんて話までしていた。
あの時、私の使い魔たちは、もうこうなることを知っていたのだろうか。
そう考えると、裏切られたような気がして、少し目が潤んだ。
けれど、すぐに気を取り直す。
魔晶石をそっと空中に浮かべ、杖を軽く振って、その反応を確かめる。
そして両端をしっかりと掴むと——私は静かに詠唱を始めた。




