第三話
私はそれを知って、頭の中が真っ白になった。
急にめまいがして、ふらついた。
宙をさまよう視線が、助けを求めるようにソファーの上へ向う。
そこには、丸くなり、顔をうずめたままの――残った方の私の猫。
「……ニケ」
声をかけた。けれど、彼女はピクリとも動かない。
私はそれを見て、確信した。 ママたちは、私がいつまでも決断しないから、こんな手段を取ったんだ。
思い返せば、朝から様子がおかしかった。
雨が上がったから、いつものように外へ遊びに行こうと猫たちを誘ったのに、「今日は家でパパとゲームをするから」と言って断られた。
その時は、時々そういうこともあるし、猫は水が苦手だから、雨上がりの湿った地面が嫌なのかと思った。
でも違った。そういうことじゃなかった。
心臓が痛いほど鳴る。
どうしよう。どうしたらいい?
深く息を吸い、気持ちを落ち着かせて必死に考える。
……そうだ、パパは?
休日のこの時間なら、ソファーでゴロゴロしているか、猫たちとゲームをしているはずなのに。
なぜ気づかなかったんだろう。
――パパが連れて行ったんだ。私のもう一匹の猫を。
なら、前に話していた、なんとかという譲渡会に違いない。
私は決断をした。
すぐに部屋中を見回し、いなくなった猫の持ち物を探す。
ご飯の容器。専用の爪とぎ。寝床にしていたソファ。
壁にかかっていた、小さな猫用リュック。お気に入りのおもちゃ……。
ない。全部、なくなってる。みんな、持っていかれた。
動揺する私を見て、ようやくママが口を開いた。
「……魔女は、両方の猫を使い魔にはできないの。わかって」
その言葉に、私はママをきっと睨みつけた。
そんなこと、分かりきってる。
魔女は、生まれると二匹の子猫と一緒に育てられる。
そして、一人前の魔女へと歩み始めるとき、どちらか一匹を使い魔として選び、正式な契約を結ぶ。
選ばれなかった猫は――去っていく。
大昔から、そう決まっていた。
でも、私はそれが嫌だった。だから、探した。
ずっと、ずっと。どうすれば、二匹とも手放さずに済むのか。
ネットで調べ、AIに尋ね、魔女の文献を読み、古くからある魔女の協会に手紙を書いた。
けれど――どこにも答えはなかった。
二匹の猫を使い魔にする方法どころか、そんな魔女の話すら存在しない。
唯一見つけたのは、誰もいなくなった世界を、二匹の使い魔の猫たちと旅をする魔女の少女が描かれた一冊の絵本だけ。
それでも、私は諦めなかった。
きっと、多くの少女たちが探し求め、けれど見つけられなかった答えを、私は追い続けた。
そして――私は、これならいけるかもしれない、という方法をひらめいた。
もしかしたら、それは誰にもできなくて、私にしかできないことかもしれない。それでも私は、その可能性にかけていた。




