城南事件帳 2
刑事訴訟法218条1項の通り、令状による捜索が開始された。
「ブリーフ、脱いでください」
羽生が谷渕に命じた。NTRも楽しめず、おまけに、警察に踏み込まれてせっかくのお楽しみが二重に台無しにされて、完全にふてくされたテイの谷渕は、
「はあ、なんでブリーフ脱ぐんだよ」腕組みをしつつ、床のカーペットの上にぺたんとお尻をつけて、胡坐を掻き、無駄な抵抗をしてみせる。
「まったく、世話のやける野郎だな」説得を続ける羽生の後ろから梅宮があきれた顔をのぞかせて、「脱ぐんだよ、こういう時は。いさぎよくさあ」
「なんでだよ」
「いいから。警察の指示通り、脱いでください」
「いやだ」
「それじゃあ、仕方ないですね。実力行使ってことになりますけど」
さすがに、そればっかりは気持ちが進まなかったのだろう。下着を脱がしたことはあっても、脱がされるのは堪えられなかったってことだろうか? いやいや、発想の転換くらい、あったっていいじゃないか。今様に、NTR(寝取り、または、寝取られ)プレーを楽しむくらいの心の余裕のある現代人なんだから、逆に警察から脱がされるっていう新境地を開拓してやろうとまでは頭が回らなかったのだろうか? その辺りは、谷渕ご本人に直接たずねてみないと、本当の心のうちはわからない。
「待てよ」舌打ちをしつつも、仕方ねえなぁと己に言い聞かせるようにほざいては、それでもまだ未練があるのか、
「だけど、教えてくれ。なんで、下着までおろさなきゃならないのかを」
これには羽生刑事が、刑事らしく実直に回答した。
「下着のなかに隠し持っていた事件があったんですよ、昔。大麻とコカインをね。1990年の話なんですけど。某有名人で、ハワイの空港で現行犯逮捕されたことがあったんです」
それを聞いた谷渕は、当時のことを知っていたのかいないのか、それゆえふざけているのかそれとも元々根が不真面目なほうだから某有名人と気質的に似通っているのか、
「ろくなことしねえ奴がいたもんだなあ。誰だ、まったく」己の先達と勘違いされた腹いせに悪態をつき、なおかつ一言「ちきしょう・・こんなんじゃ、穿くんじゃなかった。もう、金輪際、パンツなんか穿かない」




