城南事件帳 2
「あっ、いらっしゃい」
「どうも」
そう挨拶するのは、勝手知ったる五反田書店のおやじと梅宮刑事。年の瀬も年の瀬、もうクリスマスも間近な週末は、場末の五反田もそわそわしている。
「いい人見つかった?」
引き戸を開けて畳部屋から姿を現したおやじは、店の古本棚の間に立って、寒さでかじかむ両手に「ハァ~」と息を吹きかけては即席に暖をとる刑事に期待を込めてたずねた。
「うん」今にも吹き出しそうな顔で頷いた梅宮刑事。
「だれ?」
聞いても答えなかった。ははあ、するってえと、また、自前だな、と察したおやじは、
「いいの?」
「いいんだよ。どうせ、毎晩、世間様が寝静まった後で、ネットをさんざん渉猟しては、自分のお好みの無料エロ動画ばっかり見てるんだから。自室で。それだったら、本物のオンナ、世話してやった方がいいだろう。これこそ、趣味と実益を兼ねてっていう理想形の仕事だよ。奴さんにとっては」
「まあ、梅さんがそれでいいっていうんだったら、オレはなんにも言わないけどね」ととりあえず、オヤジはスペア男が見つかった事実に安堵しつつも、「でもさ、警察官だよね。副業って、許されてるの? こういうのって?」
「だって、利益発生しないんでしょ。本人には。ただ働きなんだから。いや、逆だよ。むしろ、タダでやらせていただけるっていうんだから、奴は、お金を貰うどころか、お代を差し上げないと」
「まあ、たしかに、そうだね」
二人はともに、「わっはっはっ」と大きな声を上げ、すぐにやってくるであろう結果に対して、オヤジが煎れた一番出しの知覧茶で前祝いをした。




