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城南事件帳 2

「ヤダッ! やっぱりやりたくない」

 案の定、鈴村まながダダをこね始めた。

「さっきまで、ヤルって言ってたじゃない」

 なだめすかしにかかる助監督。

「お金も契約通り、百万円払われるんだから、やってよ、まなちゃん」

「イヤだ! もっと若いイケメンじゃなきゃ、やだ!」

 なんだ、そっちか? てっきりAVそのものがイヤなのかと思った。 仕方ない。

「 お気に入りのエロメンいるの?」

「クータンがいい」

「クータンかあ。人気高いからなあ」

「だめ!  クータンじゃなきゃ、絶対やだァ―っ」

 クータンとは 今をときめく AV 男優 通称「エロメン」の中でも五本の指に入る人気者である。 当然 わがままの女の子たちからも指名が多い。クータンとやりたい、と。 しかし クータンもスーパーマンじゃない。 生身の人間だ。 そうそうご指名が入ったからと言って「はいはい」と受けるほど暇な体じゃない。 それに、最近、体の調子が おかしくなってきていた。 喉の調子が、である。

  新宿の高層ホテルで、『濃厚もの』の作品を撮り終えたクータンは翌日、中目黒の自宅マンションで 朝目覚めると、なんだか喉の感じがしっくりこない。 昨日、 帰りがけ、 セブンで買った牛丼をレンジでチンして食べると、なんだかおかしい。 いつもと違う。 さすがにこの仕事を続けて十年以上になるから、 人並み以上には病気のことを分かっているつもりだった。 当たり前のように オーラル〇ックスを 繰り返し、「見せる」 いや「魅せる」 性行為を心がけてきた。 その心がけたるや、 プロなるかなと普通なら 喝采を浴びて しかるべきなのだろう。が、 実際にはそうも言ってられない。なにせ、 性に関わる産業に従事している人々は 一般のそうでない人々より、はるかに 性感染 リスクが高い。 厚労省の統計でも明らかな話だ。 日本はその点、 不思議と オブラートに包むことばかりのたまってきた。

 芸能人で声帯を切除した人、 舌切り雀になった人、 喉や大腸などに大きなポリープを授かった人、 皆、誰一人として うんともすんとも言わない。周りからすれば、過去のご乱行などを聞き及ぶにつれ、 さもありなんとお腹の中で せせら笑われているにもかかわらず、誰一人オレは 私は悪いことをしすぎて、性病にかかってしまいました、と潔く 白状などしない。

「 喉を酷使しすぎて」だの、「歯医者が見逃した」だの、挙句の果てには、「空気感染で」とまで言い出す始末。いねぇよ、そんな奴。どこの世界で、空気感染するんだ?HPVが。聞いて呆れるぜ。金払って、もう一度、 しっかりした医者に聞いてみろよ! 一体、この私の体調の不調は何ですかって。 そしたら、きっと先生は医師としての義務を全うすべく、親切丁寧に優しく、こう教えてくれるだろうよ。

 

<おまえ、馬鹿か? いままでさんざん、てめぇたちだけで特権階級ぶりやがって適当にイイ事ばっかしやがって。そのツケを払う段になって、「ワタシ、なんにも知りません」だと? そんなもんで、世間様が通るわけねえだろうが。勝手にのたうち回って、のたうち回って、のたうち回った挙句に、死んでろ! この恥知らずが。ちょっとは、世間に優しいことしたのか? せめてもの償いで、 有り金全部、国庫に返せよ。しっかり税金払って、あの世に行けよ。さもないと、三途の川、渡してくれないぞ。ほんとに、あの世でも、地獄行きになるぞ。注意しろよ!>


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