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城南事件帳 2
般若のようなお面をして、 手下のものどもに当たり散らした。
「ふざけんな! なんだこの、ガウンは。いかにもAV撮影してます、これからおっぱじめます感アリアリじゃねえかっ」
「なんだこのスリッパは。安っぽい、合成皮革バリバリの。どうせ百均あたりで仕入れてきたんだろ」
「おまえら、もっとさあ、観客がこの作品ならいくらお金出してもかまわねえ、っていうような、高級感を醸し出すもの作れよ。極上感のあるやつをよォ」
スタッフたちは社長にキレられて、撮影準備もそのままに、ただただ俯いて反省と恭順の姿勢を示している。しかし、なんのことはないのだ。彼らはみななにもかもわかっていた。ガウンも、スリッパも、女優の下着類もスキンもローションもいっさいがっさい、須藤が率先して同町会のドンキ五反田店にまとめ買いしに行ったことを。
「あ~~あぁ。ホント、どいつも、こいつも、使えねェ奴らばっかだよなあ」
ただブー垂れるだけでは気持ちが収まらないのか、まるでイヤイヤをする駄々っ子のように、そのままバタンとベットの上に大の字で横になってしまった。
仕方なく、命令された助監督はメイクルームとして取ってある隣の部屋のドアを叩いた。しかし、返事がない。




