城南事件帳 2
取り調べが進むにつれて、マッコイの本性が明らかになってきた。この男、自国にて、すでに薬物で逮捕された履歴があったのだ。大学3年の頃から手を出し、マリファナとヘロインを常習するようになり、大学を卒業したと同時にお縄になった。お前はまだ、世の中に出るには早い、とでも説教されているようだった。2000年だった。
カナダはそのころ、ドラッグコートという薬物の裁判所が設置され、起訴のかわりに矯正プログラムを受ければ刑務所行きが免除されるようになった。マッコイも学校を出て、いきなり前科者ではさすがにシャレにならない、と改心し、まじめに薬物から足を洗おうとつとめたのだ。そのうちに、出版社の職が見つかった。ただ、その職も刺激がなく、長くは続かなかった。そののち、2006年にJETで初来日することになるのだが、思えば、薬物をやめたため、余計に日々の退屈さに耐えられなかったのかもしれない。
マッコイも他のガイジンと同じく、週末はよく六本木に集まった。集まってはいろんな情報交換をした。今住んでるアパートはどうだ? 仕事の給料はどうだ? どこに行ったらタダでヤラせてくれる日本人女が見つかるか? どうしたら日本人にただ飯をおごらせることができるのか? 日本語を話せないフリをしたら無賃乗車できるのか? とかなんとか。
そんななか、インターナショナルスクールの校長をやっているとかいう白人男から、「クスリいるか?」と持ちかけられた。これが運のつき、といってもよかったかもしれない。6年前にトロントの矯正機関で「もう、やりません」と誓ったのに、アルコールが体中にまわっていたせいだったろう。ちょうど、英語の練習のつもりなのか、白人好きなのか、日本人女から逆ナンされ、一杯おごってもらって、楽しんでいた矢先ということもあっただろう。同じガイジンでも、女を連れているのは、店の中でオレしかいないようだという優越感も多分に味方した。だから、その白人校長の誘いに乗ってしまった。
「ものは何?」
「マリファナ。上物だよ」
「へえ」
「アンタの連れの女くらいにね、へへへ」
売人の笑い声はじつに下卑た感じだった。




