城南事件帳 2
「ガイジンさん、パトロール隊に突っかかっちゃだめですよ。暴力はいけませんよ。この方々もやさしい言い方でお願いしてるでしょ。路上飲みをしないでくださいって」
やさしい表情をした若い男女ペアの警察官が駆けつけては、先ほどと同じようにエディングに身振り手振りで説明した。
しかし、かなり酔いが回ってしまった白人女にいくら説いて聞かせても、すでに抑制効果はないらしかった。警察側もたかだか酒くらいで、しょっぴきたくもなかったのだが、自分よりも小柄で甘いと見て取ったのか、女性警察官を突き飛ばしたのを契機に、身柄を確保し、交番まで連れていくことになってしまった。英語の得意な警官が質問を開始する。
「なんでわざわざ渋谷に路上飲みにやってきたんですか?」
「さびしかったから」
そう、うつむき加減につぶやいた矢先、今度は、
「わぁ~わぁ~、う~、う~」
大声で急に泣き崩れてしまった。内側と外側とを隔てる白いカウンターの上に突っ伏して。にぎやかなこと、この上ない。ただでさえ、なりがデカくて、エネルギーもありあまっているから、交番内で泣き声が反響するのなんのって。ギャーギャーやり始めたから、さすがの警官たちも、苦笑いするしかなかった。なかには、大音量に耐え切れず、手で耳をふさぐ警官もいた。かと、思えば、ぱたっ、と静かになり、
「イライラしていたんです」と吐露した。
「だから、酒をあおった?」
「そうです」
「原因は?」
「S〇X!」
「S〇X?!」
「S〇Xしたかったの!」
「・・・」
ガイジンはずいぶんあけすけなんだなと、みな鼻白んだ。
「彼氏はいるの?」
「いる」
「じゃ、会えばいいじゃん。ヤラせてって」
「ちょっと、その言い方は控えた方がいいんじゃ」
すかさず、女性警官が制止に入るも、
「いいんだよ、この際。はっきりしておかないと」そう、通訳兼の男性警官がきっぱりはねつけた。
「いるけど、いない・・」
「どういう意味?」
「だから、いるけど、できないっていうことです」
「イン〇?」
「イン〇じゃない」
「さんぽ?」
「ノーッ!」
「じゃ、なに?」
「タイホ」
「逮捕?!」交番中が一斉に突っ込んだ。




