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城南事件帳 2

 警視庁の取調室では、刑事が通訳を介し、マッコイに尋問中であった。

「結城真由子と有働明子の二人とは、面識あるんだよな」

「ワカラナイ。シラナイ」

「おい、いつまでも、ふざけた態度とってんじゃねえぞ。ガイジン、とくに、カナダのトロントだかなんだか知らねえが、先進国から英語教えに来た白人だと思って高を括ってると痛い目に遭うぞ、この野郎。なにかってえと、ニホンゴ・ワカラナイ、シラナイ、などとおぼこぶってりゃあ、日本人が白人に甘いからって、許してもらえるとでも思ってたら、警察通らねえんだよ」

 肝心なことになると、ヒツジのような涙目になって、カタコトの日本語で許しを請うカナダ人のジョン・マッコイ。日本に暮らして早17年目。まったく、日本語のテキストすら開こうとせずにここまでやってきたのだから、ワカラナイ・シラナイしか言わないのも、あながち間違ってはいないのかもしれない。が、大概の、日本暮らしの長さに比べて日本語能力がまったく比例していないガイジン、とくに、白人どもは、まあ、みな質が悪いと断定して間違いない。

 かつての80年90年代、アメリカ人プロゴルファーで年中、週末になるってえと民放のゴルフツアーで活躍している選手がいた。が、この男も、かなり長いのに、日本語を一切話さない、とアナウンサーだかが紹介していた。その当時は、観ているこちらも、白人崇拝・白人至上主義的な心根が当たり前だったせいか、なんとも感じなかった。それがどうした、くらいのものだった。が、よくよく、いま、振り返ってみると、ずいぶんとおかしなことを言っているのだ。だって、日本で何年もツアーを毎週のように回って、賞金争いを繰り広げ、とくに、バブル景気に浮かれ始めようという前夜あたりからバブル崩壊後にかけて、いうなれば、日本が一番景気がよかった、円も強かった時代に、さんざん大会を荒らしていたわけだから、それでも、日本語を一切学ばずに、英語で通したというのだから、やっぱり、白人の傲慢でなくてなんであろうか? おれたち白人発祥のゴルフを猿真似のちんちくりんの極東のサルがやっている。それに箔づけのために、白人様のおれが参加してやってるんだから、有難く思え、くらいの腹だったのだろう。日本もNHK9時のニュースの4代目キャスター木村太郎に代表されたように、英語ペラペラになることが国際人としてのステータス、という風潮だったから、英語を母国語としている人種でなおかつ白人というだけで、下へも置かない日本人の卑屈ともいえるもてなしに、きっと、このプロゴルファーは、ある意味、心地よく、時に、舞い上がるほどの高揚感を覚えつつも、通底するのは、日本人への差別意識だったに違いない。



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